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2021年2月の記事一覧

「もっと、もっと」ではなく「ちょうどよさ」の時代へ

「僕は『エレガンス』という言葉を "人に迷惑がかからない範囲の『ちょうどよさ』"と解釈している」。 この定義を聞いたとき、これまでエルメスに感じてきた心地よさの一端が理解できたような気がした。エルメスのアイテムは、主張しすぎることなく持ち主に寄り添う。声高にブランドを叫ぶことなく、モノの上質さによって見る側の心を爽やかにさせる。 中原淳一は、装いの意味は他人への配慮が大前提だと言った。 「身だしなみの本当の意味は、自分の醜い所を補って、自分の姿がいつも他の人々に快く感じ

耕すデザイン

長い歴史のある企業やBtoBビジネスで基盤をつくってきた企業にとって、「新規事業」や「社内改革」は、一筋縄にはいかないものです。 自社ブランドや新サービスを立ち上げたい。でも、人材も資金もない。 今回お話を伺ったのは、佐賀県有田町で1956年に創業した貼箱メーカー一新堂の三代目社長・本土大智さんです。本土さんも数年前、同じ悩みを抱えていました。 ラグジュアリーブランドも含めた、様々な会社のパッケージを受託生産してきた一新堂。ですが、三代目として家業を継いだ本土さんは、価

アートするデザイン

歴史ある企業にとって「事業承継」は常に悩みの種です。 これまでの伝統のどこを守り、どこを変えていくのか? 伝統をチャンスと捉え、新たな価値を創り出すためには? KESIKIと経済産業省特許庁が共催する「DESIGN-DRIVEN MANAGEMENT SEMINAR」の第二回では、秋田県で1867年から続くヤマモ味噌醤油醸造元の髙橋 泰さんをゲストにお迎えし、「事業継承」にも深く関連する「企業の人格や文化の形成」についてお伺いしました。 髙橋さんは同社の7代目として、自

それでも、朝は来る

「なかったことにしないで」──。 ぼんやりと浮き上がる文字列を見た瞬間、これは私の言葉だと思った。 *** 映画「朝が来る」を見た。特別養子縁組や未成年の妊娠が題材になっているためこのテーマに関連した感想が多いが、私は「どうしようもない悲しみを、もう一度抱え込めるようになるまで」の話として鑑賞した。 なるべくなら、悲しいことや辛いことは避けて通りたい。ほとんどの人はそう考えているはずだ。だから自分だけでなく他人に対しても、なるべく悲しみを思い出させないように、「ふつう