村山亮

アルバイトをしながら小説を書き続けています。あるいは小説を書き続けながらアルバイトをし…

村山亮

アルバイトをしながら小説を書き続けています。あるいは小説を書き続けながらアルバイトをしています。どっちなんだろう…? いずれにせよ頑張ります。皆さんも頑張ってくださいね。何を、かは分かりませんが、とにかく…。 ブログ(https://beginnerslife.com

マガジン

  • 蛇人間、生まれる【長編小説】

    蛇人間が見た、流動的な世界のあらまし。長編小説。

    • 蛇人間、生まれる【長編小説】

最近の記事

ルーティーンについて

 日曜日の午前中を有効に活用しようと思って、通例その時間帯に行っていた11.5kmのランニングを、土曜の夜に行った。実は朝にも4.5km走っているから、合わせて16km走ったことになる。もちろんお昼から夕方にかけてはアルバイトに行く。生活のために。  長く続けてきたルーティーンを変えると、ちょっと新鮮な気分になる。いつもは午前中の太陽の下で見ている川沿いの道が、夜の道に変わる。遠くのマンションが、気象塔が、ホテルが・・・輝いている。風が冷たい(そのせいでお腹を壊してしまった

    • お彼岸2023

       お彼岸を過ぎて、ようやく秋の風が吹いてきました。ご無沙汰しておりました。皆様はお元気でしょうか?  いやあ今年の夏は暑かったですね。そしていつ終わるのかもよく分からなかった。いろんな事情があって(というか主に経済的な事情なのですが)、ほとんどエアコンを使わないで暮らしていたので、あの蒸し暑さは身に堪えました。どこにも逃げ場がないというような感じでしたね。  それでもようやく涼しくなってくれて、近くの田んぼでは稲刈りも始まりました。東京にいるときにはこの匂いを嗅ぐことはで

      • 風の休憩所

         一羽の鳥が、風の休憩所と呼ばれる場所で、くつろいでいました。  風の休憩所とは、風たちがたくさん集まる場所でして、そこでは一切風が吹いていませんでした。  そこには気持ちの良い雲が浮かんでいて、鳥は、その上に寝転んで、ゆったり、時を過ごしていたのです。  鳥は初めてここにやって来たのですが、あまりにも気持ちが良いので、これから何度もやって来たいな、とぼんやり考えていました。  そのとき、西の方からやって来た風が言いました。「いやはや、この間のあれは大変だったね」と。

        • 選挙 【短編小説】

           この間選挙があって、いささか変わった候補者を見た。  彼は腹の出ている55歳の男で、現在は無職だ、ということだった。市議会議員選挙に立候補したきっかけは・・・お金が欲しいから。とにかくお金が足りない、というのが彼の主張だった。だからまあ街頭演説にも一人で、しかもマイクも持たずに、やって来たのだと思う。彼は自転車で移動していた。ひどく錆びていて、ものすごくキーキーとうるさい自転車だった。ランニングシャツ一枚で、下はハーフパンツ(というかおそらくはパジャマ)、そしてビーチサン

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        • 蛇人間、生まれる【長編小説】
          村山亮

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          新しい生活

          と、いうことで新しい生活です。僕は今年で32歳になりますが——秋まで生きていたら、ということですが、もちろん——いまだにアルバイト生活を続けています。しかしまあ、今までとは場所が変わっている。生まれ故郷に近い、仙台に帰って来たのです。 自転車で帰ってきた件はまあそちらの記事でお読み頂くとして(『東京から仙台まで、ママチャリで帰る』)とりあえずそれ以降のことを語りたいと思います。個人的なものごと。 だからまあ、大して重要なことが書かれているわけでもないです。この記事は。一種

          新しい生活

          東京から仙台まで、ママチャリで帰る

          2023年5月20日、土曜日。僕は八王子の自宅マンションの駐輪場にいた。実のところこの日までに退去を済ませ、仙台の新しいマンションに移動する予定だったのだ。最初のうちは僕ももちろん車で移動するものと考えていた。というかまあそれが普通だろう。新幹線か車、あるいは高速バスとか・・・。 僕の場合両親が宮城県の実家から(仙台市ではないが)引っ越しの手伝いに来てくれていたので、当然そのままそのワゴン車に乗っていけば何の問題もないはずだったのだ。しかし自転車が残る。これが大きな懸案事項

          東京から仙台まで、ママチャリで帰る

          故郷への帰還、そして再出発(続き)

          故郷への帰還、そして再出発の続き 2023年1月23日、月曜日。午前中に前日までの気持ちを文章にして認め、お昼過ぎから走ることにする。昼食は食べていない。実家のある宮城県は東京よりだいぶ寒い。しかもこの冬一番の最強寒波が近付いているというではないか! ちょっとずつ降り始めた雪は――今年初めて見る雪だと思うのだけれど――うっすらと地面を覆っていった。僕はランニングウェアに着替え、持ってきたランシューを履いて(もうかなり底が擦り減っているのだけれど)、外に出る。寒い・・・けれど

          故郷への帰還、そして再出発(続き)

          故郷への帰還、そして再出発

          注:この記事は自分のブログで1月の末に書いたものである。僕は2016年の4月、24歳のときに(その年の10月に25になるのですが)、一応「小説家」を目指す、という名目で東京に出てきた。東京の西の外れである。大学を卒業後、自分がいったい何のために生きているのか分からない、という状態に陥り(実は今でもほとんど状況は一緒なのだが)、就職活動すらせずに、実家にいさせてもらって、図書館で本を読んだり、家事をしたり、ランニングをしたりして日々を(ダラダラと)過ごさせてもらっていた。しかし

          故郷への帰還、そして再出発

          あなたの靴のサイズは誰も知らない 【詩】

          あなたの靴のサイズは誰も知らない ただ一人、あなたを除いて あなたの服のサイズも誰も知らない ただ一人、あなたを除いて あなたの心の穴を、誰も見ていない ただ一つ、あなたの心を除いて 夢を見ているときにいる場所は いったいどこなんだろう? あなたには分かるだろうか? 空白とは何であるのか? あなたの食べ物の好み、誰も知らない ただ一人、あなたを除いて あなたの好きな人、誰も知らない ただ一人、あなたを除いて あなたの意識の穴を、誰も見ていない ただ一つ、あなたの

          あなたの靴のサイズは誰も知らない 【詩】

          ジーコ商会

          ジーコ商会:「ジーコ商会! ジーコ商会だよう! みんな大好きジーコ商会! ジーコ商会だよう!」 子供たち:「あ! ジーコ商会だ! 最近見なかったからブラジルに帰っちゃったのかと思っていたよ。ねえ! ジーコ商会さん! ジーコ商会さんったら!」 ジーコ商会:「やあ、子供たち。昼間っから何をしているんだい? この公園で。みんなで学校をサボって反乱軍でも組織するつもりなのかい?」 子供たち:「いやだなあジーコ商会さん。今日は祝日じゃないか? だから学校は休みなんだよ。はあ・・・

          ジーコ商会

          火星人

          火星人1:「しかし地球人はさ、あまりにも視野が狭過ぎないか? 本当に目に見えるものだけを見ているんだから」 火星人2:「まあ仕方ないさ。それがホモ・サピエンスだもの。昔からそんな風にできていたんだよ。嫌なら火星に帰ればいい」 火星人1:「でももう寒過ぎるしなあ。昔はそうでもなかったんだが」 火星人2:「そう。昔はね。でも今は違う」 火星人1:「あ、地球人がやって来た。すごく焦って、すごく急いでいるように見える。ねえ、どうしたんですか? あなた?」 地球人:「いやまあ

          夢 【短編小説】

          夢を見た。こんな夢だった。私はたった一人で森の中を歩いている。深い深い森だ。木々がぎっしりと、僅かな隙間だけを残して生えていて、私はその「僅かな隙間」を縫うように進んでいく。キノコが生えている。攻撃的な棘を持った草が生えている。鳥が鳴く。このような深い森の中にしか住まない鳥だ。キィィィッコウ! キィィィッコウ! とそれは鳴いている。私はその声を聞きながらひたすら前へと進んでいく・・・。 何かを求めているのは分かる。それはひどく具体的なものだったのだが、起きた瞬間に忘れてしま

          夢 【短編小説】

          生きる

          「生きる」という行為は単なる状態ではない、と私は常々思ってきた。それは本来もっと主体的な、どこか目的と結び付いた、神聖な行為なのではないか、と。神聖。うん。しかし実際にはそうなっていない。私自身もそうだし、おそらくはほかの大勢の人たちもまた似たような状態に置かれているのだと思う。要するに「生きる」という行為が、自明の状態と化してしまっているのだ。まったく・・・。 自明性を覆すためには我々は死を見つめなくてはならない。少なくとも私はそう信じて疑わない。なぜなら死だけが意識に有

          変わる 【詩】

          僕は変わる 毎日変わる どんどん変わる 一秒ごとに変わる 一秒の半分ごとに変わる そしてその半分ごとにまた・・・ あなたも変わる 毎日変わる どんどん変わる 息を吸って 吐いた その瞬間に 全然別の生き物に 変わっている 僕はそれを知っている ちゃんと、ね 世界は変わる どんどん変わる 生きている限り変わる 死んだって変わる なにもかも変わる どれ一つとして 一箇所に留まっているものはない 君はそれを知っている おそらくは、ね 宇宙は変わる 常に変わる 重力も変わる 無

          変わる 【詩】

          新しい世界 【詩】

          僕は新しい世界に生きている 新しい世界にはルールがない 新しい世界には人がいない 新しい世界には風が吹いている 新しい風が 新しい世界には孤独がない 新しい世界には言葉がない 新しい世界には死がある しかしそれは絶望ではない 新しい世界には海がある でもそれは目に見えない海で 音も立てない しかし確実に存在している 新しい人間にだけそれが見える 海の底には魚たちがいる 海の底には死者たちがいる イソギンチャクもいる クジラもいる 象もいる

          新しい世界 【詩】

          意識を自由にすること

          意識を自由にしたいと思う。これはもう十年くらいの間ずっと思い続けていたことだ。しかしいまだに——十分には——達成されていない。僕は31歳になってまだアルバイトを続けている。職業的小説家になれるのにはまだもう少し時間がかかるのかもしれない。でもそんなことは関係ない、と僕は思う。なぜなら時間は今流れているからだ。今ここに僕は生きているからだ。そしてその状態はおそらくはもっと歳を取ったときでもさほど変わらないのだろう、という気がしている。これは本能的なものだ。 要するに我々は何歳

          意識を自由にすること