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1-6.ポルトガルの冒険

アフリカ大陸西岸を南下

当時はアフリカ西岸のボジャドール岬(現モーリタニアと西サハラの境界に位置する)は航海の限界とされており、その先は真っ暗な海とか、なだれ落ちる海といった伝承が恐怖となっていました。この岬を越えることができたのは1434年、最初の南下の航海から14年も経ったあとでした。伝承が単なる迷信であることが判明し、以後南下の航海は盛んに続けられるようになります。航海を続けながら、「金」と商品としての「人間=奴隷」を獲得していったのです。

分捕りのお墨付き

航海にあたり、ポルトガルはローマ教皇からキリスト教布教を大義名分として、すでに「発見」され、さらに将来「発見」される非キリスト教世界における征服と貿易の独占権を得ており、隣のカスティーリャ王国とその境界線に関する条約を締結して合意を得ていました。この、いわばローマ教皇のお墨付きは、後のトルデリシャス条約(1494)、並びにサラゴサ条約(1529)につながっていきます。これは、いわば世界の境界線を地図に引いて、こっちはポルトガル、こっちはスペインと勝手に決めたもので、このうち前者の条約によって、ブラジルは南米にあって唯一ポルトガルの領有が認められるようになります(南米で唯一ポルトガル語)。後者は、マゼラン艦隊(スペイン)の世界一周(1523)により、地球が丸いことが正式に認められ、一つの線では境界を決められないことに気づき、新たに引かれた線です。そこに住んでいる人びとからすれば、とんでもない身勝手なことですが、ローマ教皇をはじめキリスト教諸国は、それを布教のための正統、かつ崇高なものと考えていたのですから、今から考えれば恐ろしいことです。

航海は続く

ポルトガルの航海は続きます。ギニア湾岸にサン・ジョルジェ・ミナ商館(現ガーナ)を1471年に建設し、ここを拠点として奴隷、胡椒、象牙などの交易が発展するようになります。ここでの「金」の流入は年間800キロに及びました(出所:「スペイン・ポルトガル史/立石博高編」P251)。1482年にはコンゴ川河口(現コンゴ民主共和国)までに到達し、アフリカ大陸の赤道の北、西の半分までを航海したことになります。彼らがここにいたことの爪痕は、象牙海岸(現コートジボワール)、黄金海岸(現ガーナ)、さらには奴隷海岸(現トーゴ、ベナン、ナイジェリア)などと名付けられた地名に残されています。

「面」ではなく「点」

ただ、彼らは海岸域に拠点を築いたにすぎず、決して奥地へは踏みこませんでした。奥地の現地の王国(ペニン王国やコンゴ王国)とは、対等な外交関係を結びました。両王国の首都は、ポルトガル人がこれまでみたこともないような威容を備えており、無法な振る舞いなどできなかったからだと思います。ポルトガル人は、決してその王国と事を構えようとは考えていなかったのです。奴隷も、当初こそポルトガル人自らが海岸域の集落を襲って獲得したこともありますが、時を経るにつれ、現地の王国がまとめてさらってきた奴隷を、小麦や、衣類、金属製品などと交換するようになります。正当な商行為だったわけです。そのための拠点を海岸域に築いたに過ぎません。

時はやや下りますが、16世紀中頃にはリスボンの人口10万人のうち、約1割を奴隷が占めていたようです(出所:「新書アフリカ史改訂新版/宮本正興+松田素二編」P282)。もちろん、奴隷は本国だけでなく、ジブラルタル海峡を抜けて地中海へ運ばれ、アフリカ北部のイスラム王朝や、さらにその東方の王朝にまで多く送られました。

70年かかって喜望岬到達

ポルトガルの南下の航海の終着点は、1487年のアフリカ大陸最南端の喜望峰(現南アフリカ共和国)でした。彼らが航海してきた海(大西洋)とインド洋が実はつながっていることがわかったのです。未知の航海への船出から約70年経過していました。しかし、ポルトガルはすぐには動き出しませんでした。ヴァスコ・ダ・ガマが喜望岬をまわってインドへ到達したのは、それより10年もあとのことです。インドへ行けることがわかっても、すぐに動き出さなかったことが、ポルトガルの目的地がインド(アジア)ではなかったことの証左ではないでしょうか。さらにいえば、それまでの航海は香辛料獲得を目的としていなかったこともわかるような気もします。確かなことはわかりません。わたしの推測です。

続く

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