6月定例会での一般質問について・後編

公表されていなかった第5次総合計画の実施計画書について、
一般質問後に公開の運びとなりました。

ページ下部の「年次点検について」からご覧いただけます。
私が一般質問で参照したのは「令和5年度実施計画」の方です。
https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/material/files/group/28/r5keikakusyo.pdf
ここからは内容や複雑な書式の解説もしていきますので、
実施計画と併せてみていただけるとわかりやすいかもです。

また、多様な事業について詳細が記載されています。
教育分野や、福祉支援など、皆さんの気になる分野や事業がどうなっているのか、ぜひ一度ご覧ください。

一般質問で何を問い質したか

一般質問では単純に
・役場職員、町民、議員に対しどう活用してほしいのか
・この実施計画書はどのように事業の評価が下されるのか
・運用上の課題について
を取り上げました。

当初思っていた質問の行き着く先

一般質問に取り上げたきっかけは前回書いた通り「総合計画で決まっているから」ということをきっかけに、町がビジョン通り動いているか、というところを図るために実施計画書を取り上げた、と書きました。
加えて、一般質問を行うことで何を改善できるか、
何を提案出来るかということについての軸は別にありました。

ちょっと前の話。
去年の9月の一般質問で真鶴町役場の業務逼迫をテーマにしました。
その中で、ひとつの主張としてマンパワーを図る人数以外の指標や
誰がどの業務にどれくらいの時間を割いているか、
その数値がないことを指摘しました。
つまり本当にヘビーな稼働がどこにあるのかが計りかねる。
「定性的」って言葉があります。
見る人の感覚で「あの人大変そうだな」と思うような感想的なものです。

反して「定量的」という言葉があります。
誰が見ても同じ評価ができることです。
定量的な情報を見れば、
大変そうに見える人よりも涼しい顔してる人の方が、
実は業務量が多いなんてことがわかったりします。
多くは数値データです。
まさに真鶴町の業務においては定性的な評価で見る角度、人により評価が変わってしまう状況です。

そこについては町役場も問題意識を持っていただいていると認識しています。
が、しかしそれから半年以上役場の状況を見てきてゼロベースで新しい指標や数値取得を行うことはそれこそ業務量的に厳しいと言わざるを得ません。
現在あるものでなんとかするしかない。

であれば、この「総合計画実施計画書」は記載されている事業の幅や数値データも、現存するドキュメントの中で最も「定量的」であり、
求めるものに一番近いのです。

なので、私のしたかった提案のゴールは
「この計画書をこうすれば、役場に足りない定量的データを取ることに役立てられます」というところです。
そのために、「本当はどうしたいか、どうあるべきと考えているのか」、
同じことを思っているのか、そうでなければプラスアルファとして私の考えを提案します。
そして一番は「運用上の問題」、これはあるべき姿に対して何が問題で現実と理想の剥離が起こっているか、それをどう改善するかを詰めていくためです。
なので、先ほど書いた三点を問いただす形となりました。

実施計画書の実情

私は対象を分け、「町民、議員、職員」に対し、それぞれどのように
この実施計画書を活用して欲しいのか、をまず問いました。
町の答弁を要約したそれぞれに対する回答と、
現状でそこに潜む弊害は次の通りです。

町民、議員に対して

役場側からの答弁は町民と議員に対しては同じく
「町が行う事業の方向性の判断材料として客観的に見てもらいながら、
実際に事業の対象になる町民をはじめとする関係者に事業の成果を実感していただく」ための計画書としています。

議員がこれに対して客観的な評価を下せているか。
この計画書は事業ごとに1ページ、301事業が掲載されています。
4月に配られたケースでは、委員会で議題とされた日に配布され、
計画書を作成した課からの概要説明があり、その場で意見を求められます。
はっきり言って、それでは細かい部分まで確認もできませんし、
事業を主管する課の職員も不在ですので、細かい内容は聞くことができません。
例えば予算の場合は委員会を9時から5時で2〜3日開きます。
それと同じ、とは言いませんが通常の委員会でのいち議題よりも
時間をかけるべきであること、深い議論を求めるのであればある程度前もって配布するなど、やり方を考え直す必要があると指摘しました。

議員以上に問題なのが町民に対してです。
前述の回答から町民に見ていただくことが前提に作られています。
すでに昨年4月にも議員向けには配布されています。
「この計画書、町民はどのように閲覧が出来るのか」と問うたところ
「現在公表ができていない」という回答でした。
(※その後一般質問から一週間程度で公開されました)
これでは町民に対しては望んだ活用が目に触れないのだから全く出来ていないことになります。
前町長時代の第4次総合計画では各評価のタイミングにおいて公表がされていました。
担当課としては「第5次総合計画実施計画では予算と結びつけるなど新たな試みをしており、どこまで公表するかという問題もある」と回答がありました。
しかし、2年間公表がなされていない。
この2年って、町長の任期で言えば半分です。
その間に町政の進みを客観的に評価する材料が、申し訳ないけれど
"たったそれだけの理由"で公開されず放置されていたとなると
「町民に町政を客観的に評価して欲しい」と願っていることに疑問符がつきました。

職員に対して

職員に対しては「運用を通して課題解決能力を高めること、意識変革を期待している」としています。
評価運用は「一次評価を担当課で、二次評価を政策推進課と町長によるヒアリングで、重点評価事業を5つを総合計画審議委員に諮問している」ということでした。
研修などについては「毎年入力の時期に説明会や新人向け研修を行っている」とのことでした。
つまり、課題解決能力を高めたり意識変革を促すにはこの評価の中か、
研修の中でフィードバックが必須になります。

研修についてはあくまでシステムへの入力の仕方がメインです。
では二次評価の方はどうなのか。
しかし蓋を開けてみたらここがもっとも課題が多いように思えました。

初歩的な課題

私が感じた評価における初歩的な課題は次の通りです。
・過年度の目標や数値設定が残ってしまっている
・目標数値の的確さにバラツキがある
・同条件の事業において各欄の入力量に大きな差がある

過年度の目標や数値設定が残ってしまっている

まずこれはだいぶ初歩的な問題に思えます。

https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/material/files/group/28/r5keikakusyo.pdf

もしよければ上のリンクから実際の実施計画書をご覧ください。

ページの上半分にある「令和3年度事業の現況評価結果」、
「事業の状況・課題・提案・方針」は令和3年度の実績・実際の状況が入ります。
つまりこれまでのことが記載されます。
(本当は赤ペン入れてここに記載したかったのですが、二次利用や加工に当たってしまう可能性があるのでご了承ください)

ページの下側にある「事業の指標」、「令和5年度の取組内容・方針」は令和5年度、「これから」のことが記載されるのが本来のあるべき姿です。

ですが、この「これから」が入るはずの二つのブロックに、
事業の中身を知っていると明らかに過去年度の内容が入っているものがあります。
ものによっては「令和3年中に〜」などと目標が書かれているものもあります。

一般質問ではこの部分の指摘に対し、「その部分についても担当課に修正をお願いしているがこれからも注視していく」との担当課からの答弁がありました。

計画書を書く担当が入力する際、
システムの仕様上、前年度入力が引き継がれた状態で表示されると担当者から説明を受けました。
確かに「事業概要」や「根拠法・計画等」など事業をスタート時点から終結まで必ずしも変わると限らないものもあります。
入力を改めるものとそのままで良いものが混在していることとなります。

この事業計画書の様式はかなり難解です。
私も担当者に一つ一つの入力欄の意味や、入力されるタイミングなど
説明を受けることで認識が間違っていたと感じることが多々ありました。

裏を返せば、それは入力する担当者や評価を行う上長にも同じく難解です。
完成品を見た議員、審議委員、またこれから見るであろう町民も同じです。

恐らく研修でこういった内容も取り扱っているはずですが、
この手の帳面の作成は一旦習って終わりではなく
実際に作ってみてから成果物が達成したい目的のために正しいものかを判断する必要があります。
んで、適宜「ここはこうしてほしい」といった指導が必要です。

入力する情報が本来の想定・ルールと違う年度であるならば、
ここは違うよと一次評価の段階で修正が図られるべきです。

それでも二次評価に上がってきてしまうのであれば、
このタイミングで一次評価を行う人間と担当者併せ
本来のルール、入力の意図をリマインドすべきです。

目標数値の的確さにバラツキがある

この計画書では目標達成を客観的に評価できるように
「目標指標」と「目標指標の算出根拠」が記載されています。
数値情報を自分で設定し、客観的評価ができるのはいいことですが、
実際に設定された数値の質にかなりのばらつきがあります。

一般質問の中で取り上げた例をいえば
「広報魅力化推進事業」では「SNSでの広報発信の回数を月10回」としています。
広報が魅力的かどうかは受け手、つまり町民の感想に依るものです。
回数というのはその前段のように思えます。
この事業に投じられた予算が、発信の回数をクリアしたから問題なしとはなり得ません。

一番驚いたものでいえば、目標指標の算出根拠に「数を追わず」と書いているものがあり、目標指標には「年1件」となる事業があったことです。
なぜそもそも計画書の意義自体を否定するような言葉が、記載を許されているのか。
これこそ一次評価ないし二次評価で是正できなければおかしいし、
日々の業務の進捗に活かせる目標指標の設定方法やそもそも設定する意図を共有できないと厳しいのです。

同条件の事業において各欄の入力量に大きな差がある

事業のなかに「二次評価対象外事由」というものがあります。
代表例を言うと
「国や県など上位からの委託や法令で定められて決定権がないもの」など、二次評価を必要なしとしているものです。
わかりやすい例では選挙や戸籍関連など業務の手順レベルで決まっているものが多いです。
こういった事業では、結果的に同じ理由で二次評価対象外となっていながら、
空欄だらけのものもあれば、しっかり埋めるべき箇所を埋めているものもあります。
ルールがあってもその運用を徹底できていないから起こることです。

簡単にいえば、計画書の運用に対する職員の理解度と熱意の差が
記入の充実度に表れてしまっています。

「大変なことになる」といった理由

私は一般質問の最後に、計画書における港湾事業の記入を引き合いに出し、「このレベルのものを町民に見せたら大変なことになりますよ」と言いました。
港湾事業は県から委託を受けているもので、
人員不足による業務負担を理由に一度辞退を申し入れ、
再度辞退を撤回したい意思を伝えているものです。
それが、一次評価では「業務は負担ではあるが事業継続」をいう評価がされています。
この評価は実際に人員不足での事態を考え始める前のものであり、
筋は通っています。

しかし、二次評価では「業務は負担になっていないが改善・見直し」となっています。
実際に見つけた時は全く意味が分かりませんでした。
一般質問の答弁でも、ここがなぜこういった評価になったかは回答が曖昧でわからない部分ではありました。
ただ一つ言えることは、二次評価は「入力のミスを見逃す」というところではなく、
こういった注目度が高い事業に対してすら、
下す評価自体にも課題があるということです。

仮に町民が公開されたこの事業のシートを見たら、
恐らく担当課であるまちづくり課が責められることになってしまいます。

誤解を生み、過度な不安を与えかねない。
そしてその解消を現場に降りかかる。
そういった意味での「大変なことになりますよ」

二次評価が機能していないことで、現場が苦労を負うことは
現在の真鶴町の労務状況であってはならないことだと私は考えています。

問題点に共通する原因

この三つの問題点に対し、共通するのは「入力→一次評価→二次評価→完成」という流れの中で、
内容的に問題があっても発見できない、もしくは発見しても指摘や振り返りをする仕組みがないことです。

町として、職員に対し「スキルアップ」を望むと答弁していましたが、
今の状態ではスキルの差がただ出力されるだけで、
アップの機会がない状態です。
例えれば、採点のないテストを延々解いている状態です。
間違えを振り返れないといつまでも間違いは間違いのままです。

審議委員の指摘

有識者と町民の委員により構成された審議委員からも、
下記のような提言書が出されています。https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/material/files/group/28/r5teigen.pdf

本来、このような提言書を出すことは審議委員としてマストではありません。
しかし、審議委員の方達も、現運用に問題意識を持ってこのような書面で町に投げかけを行っています。

じゃあどうすればいいのか

二次評価を下す側、計画書の大枠を作る側もまだ運用面では慣れておらず、
知識の深掘りもできていない状況に感じました。
一般質問は時間切れになりましたので、その後直接担当課と話し合いました。
私はそれこそ、研修のあり方を考え直していただく提案をしました。
計画書の運用担当はこういったフレームワークの外部研修を受けて、
各課に推進担当を決めてそこに重点的な研修を行うことです。
最終的には入力や一次評価の都度、
不安や疑問があれば各課内にきちんと理解した人がいて
聞くことができる状態です。

そうでもしないと、悪戯に全員参加研修の回数を重ねればそれこそが
一向に改善しない上に負担を増やすだけになります。

この計画書は未来に対し必要なもの

計画書の大枠を考え作成した担当課に話を聞いた感想は、
「その通りに行けばこれは非常にいいものである」と言うところです。
ここまで書いたような問題は何も真鶴町だけが悪いのではなく、
また役所の体質だからと言うわけでもありません。
民間でも見たことがある問題です。

実際私も若い頃はその口でした。
なんでやるかもわからない面倒くさい帳面つけるくらいなら
お客さんの対応や作業に時間を割きたいよとよく思っていました。

しかし、実際に必要性を理解して使っていくと
自分自身の仕事の客観的な振り返り、成長に繋がるものになります。
また、各自がきちんとその帳面を作成することで、
組織として解決すべき課題や現状がわかりやすくなるわけです。

まして、自治体のように町民に対して説明義務の生じる組織であれば、
その意義は民間よりも大きくなります。

業務逼迫の解消にも一役買う、
町政が正しく着実に進んでいるか感情ではなく客観でわかる。
本来の姿で計画書が作成されれば、
町にとって大変有益なものになるのです。
私にはこの計画書はとっても夢や可能性があるものに思えます。

この計画書は一般質問をきっかけに公開がなされました。
これから多くの目に晒され、指摘を受け、運用面でも良い方向へ変わっていくと思います。

まずは、ぜひみなさんにこの計画書、興味ある事業だけでもご覧いただければと思います。

大変長くなりました、お読みいただきありがとうございました。

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