ロマン・ヘリンスキ

オランダ·リンブルグ州出身、イタリア移住中、(翻訳者ではなく著者本人の情報)

ロマン・ヘリンスキ

オランダ·リンブルグ州出身、イタリア移住中、(翻訳者ではなく著者本人の情報)

最近の記事

デ・ワッフェルファブリーク 出版社募集

ここまでワッフェルファブリークをお読み下さった方々がいらっしゃいましたら、まず謝らなければなりません。ごめんなさい。デ・ワッフェルファブリークのnoteへの掲載はここで一旦中断します。De Wafelfabriekの冒頭部をnoteへ掲載した目的は、この作品を日本で出版してくださる出版社を見つけるため、ということにありました。出版社、編集者の方々への公開プレゼンテーションとでも言えばよろしいでしょうか。 翻訳者の一ノ瀬りょうと申します。ちなみにデ・ワッフェルファブリークの翻

    • デ・ワッフェルファブリーク  4

       オーブンは焼き、ベルトは回り、切断機は切断する。半時間ごとにブザーが鳴ると、女たちは、場所をずらして新しい作業に移る。交代制はかなり昔から導入されている。半時間も経つと、多くの女たちは変化を望むようになっているから、ずらし合っての交代を嫌がる者などはいない。ベルトの上で身を屈めていることだってきつい仕事なのだ。工場には、全部で四つの生産ベルトがある。1番ベルトから4番ベルト。この上をワッフル達が踊りながら次々と通り過ぎる。正しくは、ワッフルは真っ直ぐに位置していなければなら

      • デ・ワッフェルファブリーク 3

         オーブンマイスターのワネスは60代半ばに見えるが、まだ50を越えたばかりだ。顔には深い皺があり、目の下は窪んでいる。  元はといえば、彼はワッフル工場の良心であり、モラルの守護人だった。いつも朝一に出てきて、最後に帰って行った。女たちの誰かのお喋りが過ぎたら、彼が人差し指を一本掲げるだけで、お騒がせ者に「黙らないといけない」と悟らせた。そういうこともやりながら、ワネスは、オーブンを司るという自分の本職にも優れていた。だが、長い時の流れと共に、彼はだんだんと無頓着になり、無口

        • デ・ワッフェルファブリーク 2

           そして、工場にて、人生は続く。いつだったか、山積みにされた粉ミルクと粉砂糖のキロ袋たちのはざ間で、赤ちゃんの産声が上がったことがある。赤ちゃんの泣き声は、梱包機のガシャンという音や、パレット同士のきしむ音を超えて響いた。毎日の仕事を、ずっと黙ったままでは、とてもやってられない女たちは、いつも機械の上に交互に頭を出して声を張る。赤ちゃんの声は、その大きな彼女たちの話し声をも超えて、響いた。話していれば、時間が速く過ぎて、退屈な繰り返し作業が少し楽になるからみんないつもおしゃべ

        デ・ワッフェルファブリーク 出版社募集

          デ・ワッフェルファブリーク 1

           ここの仕事は、何かの刑でも受けさせられてる、ということなのだろうか。毎日毎日、ワッフル工場の女たちは、ベルトコンベアを流れて来るワッフルたちを検品する。厚すぎるワッフルと薄すぎるワッフルを見つける。焼き色が濃すぎるワッフルと薄すぎるワッフルを見つける。良いワッフルは、ガチャンという大きな音とともに一個づつに裁断されて、それから焼き印を押される。梱包機がワッフルのパックたちを、半開きの紙箱の中に一段づつ吐き出す。パックたちが端まで達したら、箱を持ち上げて、パレットの上に重ねて

          デ・ワッフェルファブリーク 1

          デ・ワッフェルファブリーク 0 プロローグ

          母へ プロローグ  そしてアルカ・ナロフスキは皆に言う。「水曜日の午後、シフトが終わったら、空を見上げて」と。一度や二度でなく、十回も、二十回も言う。朝、皆が通勤して来る時に、駐車場で言う。ロッカーのある廊下で、すれ違いざまに言う。ランチの時の休憩室でも言う。ワッフル工場の女たちが、休み時間にタバコを吸いに外に出て、そんな時には、あのいやなワッフルたちのことは、しばし忘れてよくて、そうやっている時にも、アルカは窓から首を出して、また繰り返して言う。  「どうして空を見上げ

          デ・ワッフェルファブリーク 0 プロローグ