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Fractal Audio Systems Axe-FX III Firmware 22.00 アップデート 概要紹介&レビュー

Fractal Audio Systems Axe-FX IIIのファームウェアバージョン22.00のアップデートが公開されました。

アップデート内容についての翻訳

今回のアップデート内容は以下の通りです。

  • ”Dyna-Cab”キャビネットモデリングの実装。

  • Ampブロックに”Auto Dyna-Cab Impedance”が追加。

  • USA IIC+モデルのToneページに“Treble Shift”コントロールが追加

  • Input 1の入力信号がクリップした際にミニチューナーにクリッピング警告が表示されるように変更

  • I/Oメニューの”Input”ページにメーターが追加。Input 1メーターはクリッピング発生時に赤く表示。

  • スピーカーインピーダンスカーブに“2x12 Class-A 30W Silver”、“2x10 Heart Key”、“4x12 1960BV”、が追加。.

  • Graphic EQブロックに“4 Band JMPRE-1”が追加。

  • Ampブロックに“Revv Gen”モデル6種が追加。

  • Ampブロック内のチャンネル切り替え速度の向上。

  • Gateブロックのサイドチェインフィルター機能の修正。

  • Wahブロックのフィルターが初期化されないことがある不具合の修正。

  • その他、ちょっとした不具合の修正および機能改善。


Dyna-Cabの正式実装

今回のアップデートの目玉はなんといっても”Dyna-Cab”キャビネットモデリングの実装でしょう。

これまでのAxe-FX IIIでも、Cabブロックには大量のキャビネットIRがファクトリープリセットとして収録されており、音作りの幅や選択肢については不満を抱くことはありませんでした。
ただ、従来のCabブロックでは「1x12 IIC+ 57 A」のようにスピーカータイプやIR収録に用いられたマイクの種類は判別できましたが、マイクのポジションについては「A」「B」などの表記だったため具体的な配置や距離などは分からず、音色から類推するのが基本でした。
IRによっては「Cone」や「Off-Axis」「Rear」「OH」といったセッティングがファイル名に記載されている場合もありましたが、全てのスピーカータイプやマイクに共通して用意されていたわけではありませんでした。

Legacyモード時のファクトリーIRセレクションの一例。
音質は文句なしで選択肢がたくさんあるのは嬉しいのですが…

僕はこれまでRedwirezというサードパーティのIRデータをメインで使用してきたのですが、Redwirezの製品を選んだ理由には実機のセットアップで好んで使用してきたMesa BoogieのEV12L Blackshadowを収録したIRデータがあったことと、マイクの種類が多く、マイクのポジショニングについてもファイルごとに明確に表記されていたことがありました。

マイクの位置も距離も把握できてサウンドがイメージしやすいRedwirezのIRパック。
ただしマイク1種類につき概ね56個程度のwavファイルになり、18種類のマイクで収録されたデータが入っているので全部で1000を超えるファイル数に…さすがに管理が大変です。

実際にギターの音作りセッティングを詰めていく中で、現実ならマイクの配置を少し動かすだけで片づく微妙な要素を「今の音に概ね近いけどほんのちょっとだけ違うもの」を求めて膨大なIRファイルから探し出さなければならないというのは結構な手間でしたし、そういった微妙な違いのIRが用意されていることは稀でした。

数だけを見れば一見少なく感じるかもしれませんが、
実用面では全く不足ないラインナップです。

"Dyna-Cab"では、39種類のキャビネットモデルが用意され、マイクタイプはCondenser、Ribbon、Dynamic1/2の4種類から選べます。
マイクのポジショニングはスピーカーコーンの中心からエッジに至る横方向の"Position"と、スピーカーコーンからの距離にあたる縦方向の"Distance"で操作できるようになりました。
Positionの最低値はCap、最高値はEdgeとなり、Distanceの最低値は0.00cm、最高値は24.00cmとなっています。

マイクがどう配置されているか、を確認するには充分なシンプルなGUIです。
本体側のディスプレイでは縦方向に向きが変わります。
カラーリングのせいかちょっと可愛い感じもしますね。

GUIの表示も追加され、本体では縦方向、Axe-Editでは横方向から見たスピーカーのグラフィックにマイク位置が点で表示されます。
もう少しだけスピーカーエッジ寄りに動かしてみようとか、今よりも1インチ近づけてみようとか、より現実での経験則を活かしやすくなったのは非常に恩恵が大きいと思います。


新規追加アンプモデル"Revv Gen"について

Generator 120はSmashing PumpkinsのJeff Schroederや、
セッションギタリストのShawn Tubbsも使用しているREVVのフラッグシップ多機能モデルです。

Ampブロックに追加された"Revv Gen"についても簡単な紹介とレビューを。
カナダのアンプメーカー、Revv Amplificationの4chチューブアンプ・Generator 120のPurpleチャンネルとRedチャンネルをモデリングしており、アンプ実機の"Aggression"スイッチを動かした時のサウンドの変化も、それぞれのチャンネルごとにPurple 1-3、Red 1-3という形で再現されています。
基本的にはMesa Boogie RectifierやEVH 5150III、ENGL Powerball、Bogner Uberschallと同じカテゴリーに入る6L6搭載のハイゲインアンプです。
ミドルの掛かり方が特徴的で、2.00を上回るとモリモリ増強され、8.00を上回るとほとんど変化がなくなりますが、アンプ自体に偏ったクセは少なく、すっきりまとまった目の細かい歪みの得られる上等なハイゲインアンプといった印象です。

 
まだカルく触った程度ですがPurpleなら2、Redなら1が僕の好みには合っていると感じました。
Cabブロックの後段にEQを入れてミドルを落とすとさらに自分好みに仕上がりました。

個人的にはミドルの張り出し方がVHT Pittbull Ultraleadに似ているかなとも思いましたが、遠い記憶の中の実機の思い出との比較なので、実際にどうかはわかりません。
Revvのアンプはサイズが大きいものはそれなりに高価ですが、ランチボックスサイズの小型チューブアンプやペダルプリアンプも販売されており、ここまで整ったトーンのハイゲインディストーションが得られるなら手に入れてみるのもアリかなと思いました。
モデリングで試したものの印象が良すぎて、実機にもつい手を出したくなってしまうのがAxe-FXの危険なところです。


今後のアップデートでさらにDyna-Cab対応キャビネットの種類が増えたり、最新のアンプやエフェクターのモデリングが増えていくのを期待しながら、まずは自分にあったDyna-Cabのセッティングを出していこうと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ご自身の音楽の役に立つ内容や、機材に対しての興味を持っていただける要素が何かしらあったなら幸いです。

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