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短歌で小説作ってみた

短歌名「観覧車 回れよ回れ 想ひ出は 君には一日 我には一生」

主人公:葵(20歳女子大学生)
=田舎町に暮らす、ごく普通の女子大学生。
19歳の春、同じ大学に進学する翼と付き合い始め、素敵なキャンパスライフを過ごしていた。ただ、 
その一年後、脳に腫瘍が見つかる。無事手術は
成功するも、そのまた一年後癌が再発し、さらに
余命宣告を受ける。切なくも淡い、男女の愛を描いた
田舎町のある物語。

第7話【黒歴史ゲーム】

「黒歴史ゲーム?何それ、聞いたことない」

〜過去と未来の黒歴史ゲーム〜

1組のトランプを使用する。参加人数は3〜4人程度ですることが多い。ルールは非常にシンプルである。

①1人親を決める
②山札を真ん中に置き、親以外それぞれ1枚ずつ引く
※その際、何のカードか親にバレてはいけない
③親が赤・黒のどちらかを宣言する
④カードを一斉に開示する
⑤親が宣言した色を引いた人が黒歴史を暴露する
(赤の場合=未来の黒歴史、黒の場合=過去の黒歴史)
※未来の黒歴史は、これからする事で黒歴史になるで
あろうものを暴露する(〜くんに告白するなど)
⑥もし、親の宣言した色を引いた人がいなかった場合は親が負けとなり、宣言した色の黒歴史を暴露する
⑦親の宣言した色が2人以上いた場合は、最も数字の少ない者が対象となる
⑧親は1ターンごとに交代する

「何それ、おもしろそう」

「さっき、病院の先生から聞いたんだ。面白そうだよね!」

「やろやろ!」

千春の提案により、急遽病室でトランプゲームが始まった。

3人で親決めのじゃんけんをする。勝ったのは千春だった。

「じゃあ、私からね。親は時計回りに交代ね」

千春がトランプをシャッフルし、机の真ん中に山札を置く。

華恋がカードを引き、確認した後裏向きにしてテーブルに置く。つられて私もカードを引く。

引いたカードはクローバーの9だった。

「よし、宣言するね。どっちにしようかな。んー、赤で!」

千春の宣言と共に、私と華恋は一斉にカードをオープンした。華恋のカードはハートの7だった。

「良かったー。はい、華恋の負け(笑)」

「黒引いてて良かった。未来の黒歴史だっけ?」

「もう最悪。絶対誰にも言わないでね?
明日、人生初のお家デートします!」

「良かったじゃん!やっと華恋もチェリーガール卒業じゃん(笑)」

「まだわかんないって!」

華恋は、親が学校の先生でとても厳しかった。門限は19時で、彼氏はもちろん、親友の私でさえも家に泊まったことがなかった。

「やっとお父さんが許してくれたんだ。説得するの大変だったんだから」

「あのお父さんを説得するのは凄い。黒歴史にならないように頑張って」

「1言余計だって。もう1回しよ!次の親は葵か」

ゲームは和やかに進行していった。特に、千春の高校時代に漏らした話は傑作だった。

3回目の親が私に回ってきた。

「じゃあ、黒!」

千春と華恋が引いたカ ードを一斉にひっくり返す。

「どっちも赤!はい、葵の負けー」

「葵が負けるの初めてじゃない?黒だから、過去の黒歴史ね」

「そういえば、葵の黒歴史とか聞いた事ないかも」

千春のカードはダイヤの2。華恋はハートの4だった。

「黒歴史かー。何かあるかな?」

「逃げるのは無しだからね」

10秒ほど考えるふりをして、私は口を開いた。

「1個だけあった!皆んなの黒歴史に比べたらしょぼいかも」

「いいからいいから」

「昔ね、1回だけ親に嘘ついたことがあって。高校ぐらいの時だったかな?親に聞かれたんだ。学校楽しい?って。その時うんって答えたんだ」

千春と華恋が顔を見合わせる。互いに困惑した表情を浮かべていた。

私は、込み上げてくる笑いの感情を必死で抑えながら話を続けた。

「実はいじめられてたの。同じクラスにいた綾香って覚えてる?学級委員長で超美人。おまけに皆んなに優しくて、男子からも女子からもモテモテだったあの綾香」

「う、うん、覚えてるよ」

千春が戸惑いながらも答えた。

「それって、表の顔だったんだ。その綾香にずっといじめられてた。綾香、翼のことが好きだったんだ。

それで2年生の時に文化祭で告白して、翼はフった。私のことが好きだからごめんって言って。

その日からかな。いじめが始まったのは」

「どんなことされたの?」

「シューズの中に画鋲入れられたり、カバンの中に草つめられたり。ドラマでよくあるようなやつばっかりだったよ。ほんと、笑っちゃうよね。高校生にもなって」

また病室が静まり返る。華恋は今にも泣き出しそうな表情で下を向いていた。

重い雰囲気の中、口を開いたのはまた千春だった。

「な、なんで私たちに相談しなかったの?何も知らなかった、、、、、、」

「できるわけないじゃん(笑)そんなことしたら翼に気付かれるかもしれないし。翼って何でも重く受け止めるから絶対責任感じちゃう。それだけは避けたかった。だから、誰にも言えなかった」

「それはそうだけど、、、」



時刻は丁度7時だった。静寂に包まれた病室に、廊下を誰かが走る音が聞こえてくる。

恵は扉を開けるや否や

「ごめん!!遅れた!バイトの上司まじでウザい!」

と叫んだ。華恋は慌てて溢れそうな涙を両手で拭う。

「遅すぎ。1時間遅刻だから、ジュース奢りね」

千春も気付かれないように振る舞う。

「ほんとごめん!ジュースはきちんと奢らせていただきます。え、トランプやってたの?私もやりたい!」

「もう帰らなきゃ。華恋の門限過ぎてるから。華恋のお父さんにまた怒られる」

「やっば。もうそんな時間か。葵、ごめんね。今度ジュース持ってくるね」

「全然大丈夫。ちょっと会えただけでも元気もらえた。カルピスにしてよ」

「わかってるって。じゃあ、またね!」

そう言って、3人は病室を後にした。

3人の姿が見えなくなったのを確認した後、必死に堪えていた笑いの感情を爆発させた。

自分の計画通りに物事が進むと誰でも自然と笑みが溢れるだろう。まさに今が、その瞬間だった。

私は、今日恵がバイトだと言うことも知っていた。恵がバイトをサボる時、必ず生理を使う。

恵は真面目な性格で、どんな事でも、直接会って話さないと気が済まないらしい。そのため、1時間ほど遅れてバイト先に行き、様子を見たがキツすぎる、と店長に伝えバイトをサボる。いつもの流れだ。

当然、千春と華恋よりも1時間以上遅れて病院に来ることになる。

今日の計画は

【千春と華恋に過去のいじめを暴露すること】

これだった。トランプゲームは予想外だったが、結果オーライだ。

「私、千春と華恋がいじめのこと見知らぬふりしてたの気付いてたんだ。

綾香に嫌われたら自分がターゲットになっちゃうもんね。駿君も華恋の彼氏も綾香と仲良かったし。

あの時は仕方ないって我慢してたけど、今は違う。

これからだよ、華恋。千春」

窓の外に見える3人の背中に、誰にも聞こえないような声で呟いた。

窓を閉め、枕に顔をうずめる。もちろん、笑い声を殺すためだ。

そんな時、携帯の通知が鳴った。

「空気読めないなー。誰だろ」

苛立ちながら携帯を開く。メッセージは恵からだった。

メッセージの設定でロック解除しないと内容が見られないようにしていたため、仕方なくロックを解除する。

メッセージの件数は1件で、文章はとても短かった。

ただ、私は恵のメッセージを全く理解できなかった。

その時は。

「私が守る」

恵から送られてきたのは、この4文字だった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「私が守る」
恵から送られてきた謎のメッセージ。葵はその言葉の意味を理解することができなかった。4人の関係はこれからどのように変化していくのだろうか。恵のメッセージにはどんな意味が。

第8話に続く
12/12投稿予定

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