大学院博士課程に進学するべきか?

大学院博士課程に進学するべきか?

今回の記事は、現在、大学院修士課程に在籍されていて、博士課程に進学するべきか迷っている方に向けて書いています。また、そのような人が家族、友人など周りにいる人にも読んでほしいと思います。

 簡単に私の自己紹介をしますと、私は国立理系大学を卒業後、同大学院修士課程を修了し、現在博士課程の3年生です。

 今回、大学院博士課程に進学するメリットとデメリット、そしてどういう人が進学した方がいいかを私の経験に基づいて書いていきます。迷っている人へのヒントになれば幸いです。

まず、博士課程に進学するメリットは7点あります。

1.大学教員になるためには基本的に必須。これはメリットというより事実です。JREC-IN Portalという研究者向けの求人サイトを見ると、教員公募の応募資格の一つ目に「博士の学位を有していること」とあります。大学教員になりたい人は、基本的には博士号取得を目指してください。
2.いっぱい研究できる。研究活動に向き合える時間が修士課程のころに比べると増えます。修士課程は2年制なのに対し、博士課程は基本的に3年制です。また、ほとんど授業(講義)がありません。私の大学では、博士論文研究に関係する論文をまとめて発表する授業だけです。
3.英語力が高まる。こちらに関しては、文系は多少事情が異なるかもしれません。英語力が向上する理由は2つあります。1点目は、理系は文献調査するとき、基本的に英語の学術論文を読むからです。英語が読めないと話にならないのです。また、研究成果を原著論文として発表する場合も、英語の学術雑誌への投稿を目指します。世界共通語の英語であれば、世界中の研究者と論文の内容を共有できるからです。2点目は、研究留学できるチャンスがあるからです。こちらは所属している研究室や大学によりますが、私は大学のインターンシップ海外派遣制度を利用して、マレーシア工科大学に3ヶ月研究留学しました。留学費用は、大学から渡航費や滞在費を経費として受給しました。外国に行くと当然英語を使う機会が増えます。特に、スピーキングや生のリスニングができるのは大きいです。3か月程度でも英語に対する恐怖感みたいなのものは消えます。
4.学振に採用されると、研究面と生活面で金銭的にゆとりができる。ここでいう学振とは、日本学術振興会 特別研究員のことです。文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会の書類選考が通過して採用されると、年次によって1-3年分の研究費(約100万円/年)と研究奨励金(給料のようなもの。自由に使える。20万円/月)が受給できます。例えば、修士課程2年次に申請して採用されると、博士課程の3年間で合計約1000万円の研究費と給料が受給できます。私も博士課程2年次に学振に採用されて、金銭的な不安はかなり軽減されました。
5.就活を先延ばしにできる。良し悪しは別として、修士課程で就職活動が思うようにうまくいかなかったとしても、博士課程に進学すれば再チャレンジできる、という考え方もあります。
6.自由な時間が確保できる。2.で述べたいっぱい研究できると関連しますが、これも大きなメリットです。企業に就職して社会人として働く場合、一般的に平日は7時間以上企業の利潤のために動くことになります。この時間を研究や自分の好きなことのために使えるのです。
7.指導教官といっぱい議論できる。こちらも研究室に大きく依存しますが、私の場合は修士課程のころと比べると指導教官と研究に関してよりディスカッションするようになりました。大学教員は専門的知識、高い論理的思考力、頭の回転の速さ、柔軟な発想力などを持ち合わせています。そのような研究のエキスパートとの議論は、普通に生きていたらなかなか経験できません。一方で、指導教官と考え方が合わずに衝突して退学した人もいると聞きます。指導教官と馬が合わないとしんどいです。

ここまで、博士課程に進学するメリットを書いてきました。次にデメリットを4点挙げます。
1.企業への就職が遅れる。こちらは企業に就職する人向けです。一般的に、社会人一年目の大卒なら23歳、修士卒なら25歳ですが、博士卒の場合28歳になります。私は会社で正社員として働いたことがないので、この年齢差がどれほどの意味をもつのかはわかりません。しかし、仮に私が社長で新卒採用の権利を持っていて、採用候補として年齢以外それほど能力差がない2人がいた場合、若い人を採用します。能力差がない場合、というのがポイントです。博士の就職活動に関してはまた別の機会に書こうと思います。
2.孤独。これも研究室によります。孤独じゃない博士課程の学生も大勢いると思います。しかし、多くの人が修士課程を修了したら企業に就職します。これは事実です。つまり、同学年の友人はほとんどみんな大学から去っていく、ということです。これは私にとっては結構辛かったです。逆に言えば、一人でいるのが苦にならない人、黙々と作業できる人は研究者に向いてると思います。
3.金銭面。メリットで、学振に採用されると金銭的にゆとりができる、と書きました。しかし、全ての博士課程の学生が学振に採用されるわけではありません。2020年度の学振の採用率は約19%であり、年々減少傾向にあります。過度な期待はできません。学振不採用だった場合、多くの人は別の機関に給付型奨学金などを申請することになります。

4.病む。これも人によります。私は、期間内に研究成果が出ないと修了できないというプレッシャー、強い孤独感、就職活動がうまくいかないことなどで精神的に結構つらい時期がありました。


最後に、メリットとデメリットを踏まえて、どういう人が博士課程に進学するべきかについて書きます。以下の項目にすべて当てはまるのであれば、進学を勧めます。逆に、一つでも当てはまらない項目があれば、再考する余地があります。

1.進学したいという強い思いがある
2.将来、大学教員、研究機関や民間企業の研究員など、博士号を活かせる職に就こうと思っている
3.研究が好き
4.金銭的余裕がある、あるいは奨学金を返済できる自信がある
5.指導教官の考え方に賛同している
6.一人でいるのが苦にならない
7.心身、特に精神的に健康である

終わりに
 ここまで、大学院博士課程に進学するべきか?という問いについて考えてきました。この記事を参考に、迷って悩んで考えてみてください!

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