千代
狗尾草の小路
白塗料の剥げた柵
乾いた風になびく秋桜
あの日の君の残像
ねぇ、千代
総てを知っても君は
此処で笑ってくれたね
飼い殺してしまうのが怖くて
手放す勇気もなくて
茶褐色の足踏みを
繰り返していた僕は
自己防衛の塊だった
秋桜が揺れて
栗色の髪が揺れて
君の横顔に
初めて見た、哀しみ
僕は君を飼っていたんじゃない
君が僕の籠に
入ってくれていたんだ
ねぇ、千代
総てを知っても君は
此処で笑ってくれたね
気づかぬ振りをした僕にさえ
気づかぬ振りをして
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