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tanka

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短歌。 詠むたびに自分を少しだけ好きになれる 尊いもの。
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2022年2月の記事一覧

短歌「余寒のころ、君肌恋し」

短歌「余寒のころ、君肌恋し」

偽者と
知りつつ視線
外せない
笑った顔が
あまりにも似て

肩すぼめ
梅の蕾の
膨らみに
祈りを込める
一目逢いたい 

短歌「精神安定剤」

短歌「精神安定剤」

尾がキレて
我忘れそうに
なる夜に
飛び出した家
片手の煙草

静寂と
暗闇の中
追う人無し
くゆらす煙は
裏切りなるか

「ごめんね」と
届かぬ人に
乞う許し
どうか責めずに
ギリギリでした

短歌「醒める」

短歌「醒める」

目が覚めて
気づく 枕が
濡れている
夢だと知りて
また涙する

会いたいと
願えば夢で
また会える
触れる直前
消えた微笑み

まどろみで
微かに残った
きみ笑顔
哀しいほどに
優しい余韻

短歌「喪失の春」

短歌「喪失の春」

遠方を
 眺めし君の
 瞳(メ)の奥に
 煌めき有れど
 我見当たらず

風に髪
絡ませ行くは
別の道
溶けぬ春雪
この胸に似て