TEAM SHACHI10周年記念公演2Daysの感想

2022年4月9日(土)10(日)に日本特殊陶業市民会館ビレッジホールで「TOUR2022~猪突!猛進!猛進!猛進!猛進!~」名古屋公演が行われた。

本公演は改名前のグループ「チームしゃちほこ」が路上デビューして10周年を記念した特別公演と位置付けられている。10周年にふさわしい、セットリスト・演出・パフォーマンスとなったライブの感想を書いていく。

10年を振り返るセットリスト

コンセプトは2012年4月7日の路上デビュー〜現在までの歴史をエポック的な曲を通じて振り返るというものだった。ステージ上のライブパフォーマンスが観客それぞれが持つTEAM SHACHI(チームしゃちほこ)の記憶と交差することによって感情が揺さぶられる。そんなセットリストだった。

基本的には時系列をたどるのだが、必ずしもリリース順というわけではなく、ところどころ時系列を崩してあり、歴史を辿るというコンセプトと、次に何の曲が来るかというドキドキ感がうまく両立されていた。

ちなみに僕は『Rocekt Queen』でTEAM SHACHIを知り、2021年2月の豊洲公演が初ライブだった。そのため直接の思い出は最近のライブに限られている。

セットリスト
00. 出囃子(初期)
01. ごぶれい!しゃちほこでらックス
02. トリプルセブン / そこそこプレミアム
03. ピザです! / いただきニッポン!〜おみそれしましたなごやめし〜
04. 尾張の華 / もーちょっと走れ!!!
05. 首都移転計画〜愛の地球祭〜いいくらし(メドレー)
06. レディオにおねがい / 秘密のセレナーデ
07. Cherie / シャンプーハット
(ブラス民登場)
08. 乙女受験戦争 / 抱きしめてアンセム
09. JUMP MAN
(バンド民登場)
10. ういろう・ザ・チャンピオン
11. ちぐはぐ・ランナーズ・ハイ / ザ・スターダストボーリング
12. ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL
13. パレードは夜空を翔ける
14. colors
(バンド・ブラスセッション)
15. 恋人はスナイパー
16. DREAMER / ROSE FIGHTERS
17. START
18. 番狂わせてGODDESS
19. HORIZON
20. プロフェッショナル思春期
21. Rainbow
22. ダイビング / 最強パレパレード
23. マジ感謝 / でらディスコ
※(Day1 / Day2)

Song2〜出囃子

TEAM SHACHIのライブ開始の合図といえばThe hivesの『Tick Tick Boom』がお決まり。しかし、今回は初期からライブ開始の合図に使用されていたBlurの『Song2』が流れる。懐かしい曲に早くも客席からは、声にならない声が漏れる。

ところで、なぜチームしゃちほこのライブに『Song 2』が使われていたのだろうか。そう思って調べてみると実は『Song 2』は1997年4月7日にリリースされていることを知った。『Song 2』はデビュー日の4月7日にあわせてセレクトされていたのかもしれない。(なお本ライブの数日前には『Song 2』リリース25周年を記念した未公開ver.が公開されている。)

そして、ライブ開始前SEが『Song2』なのであればと期待した通り、続いてチームしゃちほこ時代の出囃子が始まった。

「人間50年、アイドル5年〜」の出囃子は映像で見たことがあったが、生でみるのは初めてだ。これがあの出囃子かと感慨深い気持ちになるとともに、メロディーにのせて振られるペンライトがめちゃくちゃ綺麗で、(ペンライトを持たない僕だが)このときばかりはペンライトを持ちたいと思った。

初めましての曲がたくさんの前半パート

今と昔が交錯した「ごぶれい!しゃちほこでらックス」

出囃子でタイムスリップしたかのような感覚の中、新しい衣装を身に纏った秋本帆華・咲良菜緒・大黒柚姫・坂本遥奈の4人のメンバーが登場して一曲目『ごぶれいしゃちほこデラックス』が始まった。

色鮮やかなメンバーカラーの衣装にお祝い感のある白いジャケットを羽織った姿は、フォーマルな祝典の雰囲気を出しながらも、ジャケットからスカートの装飾のラインが法被(はっぴ)のようにも見える。「そういえば過去映像で法被の衣装見たことあったような。ひょっとしてオマージュかな〜。」などと思いながら見ていた。

ライブ後のツイートを見ると、今回の衣装は人によって過去の異なる衣装が想起されたようだ。ひょとしたら過去の様々な衣装の要素がデザインに取り入れられているのかもしれない。いつか衣装制作裏話のようなものを聞けたら嬉しい。

改名後のファンである自分は、ごぶれいの振りコピなど当然できず、ただ踊っている4人を見ていた。まるでタイムスリップして「チームしゃちほこ」の初ライブ見ているような感激。一方で目の前のTEAM SAHCHIメンバーはデビュー時から大きな成長をとげ、余裕すら感じられるパフォーマンスを見せている。今と昔が交錯する空間で、これまで見てきたTEAM SHACHIと少し違うものを見ているよな不思議な感覚を味わった。

個人的にシャチZEROや初ライブがバンド編成だったこともあり、TEAM SHACHIはロック的な魅力が強いグループだと思っている。だけど「ごぶれい」のパフォーマンスはそうではない魅力に満ちたものだった。アウトロで全身を大きく使って踊る姿が、ただただキラキラとして美しく、ずっと「ごぶれい」のアウトロ見ていたいなと思った。

初期曲を連発

続いてDay1は『トリプルセブン』『ピザです!』『尾張の華』、Day2は『そこそこプレミアム』『いただきニッポン!〜おみそれしましたなごやめし〜』『もーちょっと走れ!!!』が披露された。

昔からのファンの方にとっては思い入れのある曲が多かったようで、イントロが鳴ると声にならない熱気のようなものが漏れ、フロアが沸き立つのがわかった。とくに『トリプルセブン』『ピザです!』『そこそこプレミアム』はすごかった。

僕にとっては初めてや2回目の曲が多く「あー、チームしゃちほこのライブってこんな感じだったのかな。」と思いながら新鮮な気持ちで観ることができた。『トリプルセブン』は2回目だったので座る振りがあることが頭では分かっていたのだけれども、体は追いつかず、2021年の東名阪ツアー新木場公演と同じように取り残されることとなった。

続いて『首都移転計画』『愛の地球祭』『いいくらし』のshort ver.メドレー。以前から「ヘンテコ3部曲」と言われている3曲だが、最近はブラスアレンジも入り実はカッコ良い曲として紹介されることも多い。

個人的には『いいくらし』はゾワっと感があるとても好きな曲。2021年の東名阪ツアー新木場公演以来に聴けて嬉しかった。(『もーちょっと走れ!!!』も同様にぞわっと感があって好き。)

レアなユニット曲

続いて、Day1は大黒柚姫と坂本遥奈による『レディオにお願い』、Day2は秋本帆華と咲良菜緒による『秘密のセレナーデ』が披露された。確か両曲とも2017年3月のガイシホールのライブで披露されている。

個人的には2021年9月の有料配信ライブSPOTで初めて聴いてから気に入っていた『レディオにお願い』を初めて生で観れたのが嬉しい。(ピアノ入ってるとすぐ好きになる単純な人。)

『秘密のセレナーデ』は生サックス演奏が加わり贅沢なバージョン。そして何といってもラストの秋本帆華と咲良菜緒が手を繋いで階段を登るシーンなのだがそれについてはまた後ほど。

なお、秋本帆華と咲良菜緒のユニット名「Red Hono Blue Nappies」は「Red Hot Chili Peppers」をもじっている。

ファイヤースターターとしての『乙女受験戦争 / 抱きしめてアンセム』

続いてDay1は『乙女受験戦争』Day2は『抱きしめてアンセム』。ここからブラス民が登場する。『乙女受験戦争』は改名前後しばらく披露されていなかったが、最近は良く披露されるようになった。『抱きしめてアンセム』は昔から今までずっとライブの定番としてグループを支えてきた曲だ。

個人的にも両曲とも馴染みのあるファイヤースターターみたいな曲。ここまでは「チームしゃちほこ」のライブをちょっぴり引いたところから観ているような気分だったが、この曲からはいつものライブに没頭する感覚が戻ってきて体が自然と動くようになった。

幸福感MAXの「JUMP MAN」

続いて『JUMP MAN』。フロアをハッピーな空間に変えるこの曲は、ただただ楽しい。

率直に言って、音源だとあまり好きになれなかった曲だけど、かなたツアーの映像を見て「これ、ライブだったら絶対楽しいやつやん!」ということは確信していた。初ライブの2021年の豊洲PITで『JUMP MAN』の楽しさを体感してからはライブでやってほしい曲の一つになっていた。

初期の人気曲に負けずイントロが鳴った時の客席の反応が大きかったのも印象的だ。リリース当時のことについては明るくないが、動員面で苦しんでいた時期にこんなにもハッピーな曲を届けて、今でもたくさんの人の心に刺さっていることは本当に凄いことだと思う。

ここまでで9曲、時間にして1時間近くだったろうか。バンド民参加と聞いていたライブに一向にバンド民が登場しない。バンドセットがどこにも見えず、本当にバンド民出てくるの?と若干不安になっていたがその不安はすぐに払拭されることになる。

ロックなTEAM SHACHIを魅せる後半パート

メンバー4人がはけると、ステージの後方の幕が開きそこから、大きなお立ち台のようなステージに立ったギター芳賀義彦・ベースMIYA・ドラムTatsuya(Crossfaith)が『ういろう・ザ・チャンピオン』を演奏しながら登場する。(手動でバンド民のステージを動かしながら出てきたのはちょっとじわった。)

バンド編成で聴きたかった2曲

『ういろう・ザ・チャンピオン』に合わせてメンバーが再び登場するとDay1は『ちぐはぐ・ランナーズ・ハイ』が披露された。しゃちほこ曲で一番好きな曲、生バンドでのパフォーマンスをずっと待っていた。

2021年9月のライブDINER ShachiのDay2のアンコールで、パシフィコ横浜公演に向けて披露された『ちぐはぐ・ランナーズ・ハイ』を思い出す。その時は感極まってしまい、まともにパフォーマンスを味わえていなかったが、2回目の生ちぐはぐはしっかり演奏と歌声を味わい、歌詞を噛み締めることができた。

間奏ではTatsuyaがスティックを天井まで投げる気?というほど高くスティックを投げていたのが印象的だった。かつて「いつもより多く回ります。」と10回連続側転を決めた秋本帆華のように、「いつもより高く投げます。」といってTatsuyaが10周年をお祝いしてくれているように感じられて嬉しかった。(側転のエピソードは映像で見たことがあるだけですが。)

Day2は『ザ・スターダストボーリング』。初期曲の中で最も生バンドで聴きたかった曲。ベースが本当にかっこいい!

間奏で芳賀義彦とMIYAがアイコンタクトしながら向き合ってプレイするシーンは演奏の素晴らしさはもちろん、二人の発する熱気のようなものをビシビシと感じてこちらもブチ上がった。

ここが今回のライブで一番目が足りないと思った瞬間だった。TEAM SHACHIのライブはメンバー4人見ようとするだけも目が足りないのに、ブラス民がいてバンド民がいるライブでは目がいくつあっても足りない。

会場を一体にする最強上げ曲

一気にロックなライブへと雰囲気を変えたところで『ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL』とたたみかける。イントロからヘドバンをキメてステージと会場が一体に。

全体的にヘヴィなサウンドの曲だが、サビではヴォーカルに呼応するように奏でられるブラスが、なんともいえない哀愁を加味してエモーショナルな雰囲気も作り出す。

個人的には最後のヘドバン前、咲良菜緒が「気持ちを1つにして…」と横を向いてクールな表情で歌った後、正面に向き直してヘドバンに入る前のギラッ、ニヤッとした表情が好き。(2021年の映像だが以下参照。)

TEAM SHACHI⇄チームしゃちほこ

『パレードは夜空を翔ける』はサックスのイントロから始まった。ブラス民が初めてライブに登場した2018年の改名後初公演を想起させるとともに、ライブに勢い一辺倒でない緩急をつくる。『パレードは夜空を翔ける』といえば2016年の横浜アリーナ公演の方を思い出した人の方も多かったかもしれない。(僕は両公演とも去年映像で見た。)

続く『colors』はアカペラで始まる2016年の武道館公演が再現された演出だった。こちらも映像でしか見たことがなかったので、「これがあの叛逆のcolorsね…!」と伝説を目にした気分に。

Day1とDay2で若干キーが異なっていて、Day1は2016年武道館公演と同じく最後のフレーズでキーを下げていたように感じた。これが偶然なのか、それとも演出なのかはわからない。

ラストはメンバー4人が4色のライトで照らされた。改名後のライブアルバム『全速前進 聖なる本編』のジャケットが思い出される。『パレードは夜空を翔ける』で「TEAM SHACHI」から「チームしゃちほこ」へ、『colors』で「チームしゃちほこ」から「TEAM SHACHI」へ、時間軸を行き来きし、別れと新たな挑戦を表現しているような2曲だった。

『colors』では芳賀義彦のカッティングが心地よく、曲に合わせて色々なギターの表情を見せてくれるプロの技術に感服させられた。

サプライズのデビューシングル『恋人はスナイパー』

一旦メンバーがはけて、バンド・ブラスセッションを挟む。ということはここから改名後の曲が始まるのかと思っていたら、始まったのは1stシングル『恋人はスナイパー』!

『恋人はスナイパー』は2021年9月に浅野EPでリアレンジver.がリリースされてから1回も披露されていなかったので、どこかでやると思っていたがまさかここでくるとは。何と言ったらいいのかわからないがとにかくすごい曲。歌謡・アイドル・ロックの要素を全部ごちゃ混ぜにしたよう。

TEAM SHACHI曲のブロック

いよいよTEAM SHACHI曲のブロックへ。

Day1はTEAM SHACHI始まりの曲『DREAMER』。この曲は僕が『Rocket Queen』でTEAM SHACHIを知ってから次に好きになった曲だ。『Rocket Queen』はロックマン要素があってこそ興味を持ったから、純粋にTEAM SHACHIの曲で好きになった初めての曲は『DREAMER』ともいえる。改名時の心境を綴った歌詞は、今日も心にズンズン響いてくる。

Day2はTEAM SHACHI始まりのもう一つの曲とも言える『ROSE FIGHTERS』。元々好きな曲だが、2021年の配信ライブ「シャチZERO」で披露されて以来、Tatsuya生ドラムver.を見るのをずっと心待ちにしていた。だから、この曲だけはずっとTatsuyaのドラムを見ていた。

『ROSE FIGHTERS』はサビの振りが印象的で、何回かライブでも見ているので、ずっとドラムを見ていてもサビの振りコピは自然にできるようになっていた。そう考えると僕も随分と成長したものだ。

より前向きな『START』

続いてギターイントロともに『START』が始まる。『START』は2017年リリースの曲ながら、すっかりTEAM SHACHIの曲としても定番となっている。

無心でヘドバンする『ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL』に対して、感情を溜めて爆発させるように拳を振る『START』はフロアにまた違った一体感をつくる。

特に落ちサビ「あの日の別れあの日の悔しさ〜僕らの物語は終わらない」のパートはメンバーも観客も過去を思い浮かべ、悔しさをエネルギーに変えるように歌うパートだ。

だけど、個人的には今回の『START』の落ちサビは過去への想いをのせて歌いつつも、よりポジティブにより明るく歌っていたような気がして前向きな涙が出た。

それにしてもライブが始まって2時間近くになるのに中々「これが最後の曲になります」と言わない、一体いつまで続くのか。

ライブアンセムに育ってきた『番狂わせてGODDESS』

続いて「まだまだ行ける?」という煽りともに『番狂わせてGODDESS』が始まる。みんなで踊ってバカになれる通称「ばんくる」は最高に楽しい曲だ!

リリース当初から新しいライブアンセムに育てたい曲と言われてきたが、今ツアーを通じて、早くも実現し始めているのではないだろうか。

落ちサビは「もう大丈夫、積み上げた過去ガソリンに変えたら〜」と咲良菜緒と大黒柚姫が歌う。ここまで、10年間の様々な曲をやった後にこの歌詞を聴くと、その通り過ぎて「まさに、今、目の前でガソリンに変わっとるよ〜!!」と泣き笑いながで踊り狂うほかない。

間髪いれず『HORIZON』へ。曲繋ぎがとてもクール!

クライマックスに向かう『プロフェッショナル思春期』

『HORIZON』の後、一呼吸置いて始まったのは『プロフェッショナル思春期』。これもまたずっと聴きたかった曲の一つだ。組曲のような曲構成的にバンド編成での披露はないと思っていたからまさかのサプライズ!興奮のあまり曲が始まった時、変な動きをしてしまった。

多くの人にとっては2017年ガイシホールの印象が強い曲なんだろうけど、僕にとっては2020年の夏〜秋にかけてYou Tubeで延々見ていた「かなたツアー」のクライマックスという印象が強い。今回もここまでで一つのクライマックスを迎えた。

メッセージムービーと『Rainbow』

一旦メンバーがはけると、スクリーンが降りて映像が流れる。それぞれのメンバーによる10年間を振り返った手書きのメッセージ映像は、これまでの10年を振り返る涙を誘う内容ながらも、11年目に向けた明るさのある内容だった。

特に咲良菜緒の「10年を迎えた私たちはどこに向かうのか本人の私もわかっていませんけど、やりきれるところまでやってみましょう!」の言葉は、偶然始まったグループを続けてきたTEAM SHACHIらしい前向きで爽やかな宣言だと感じた。

秋本帆華の「11年目もタフなソウルをフロム名古屋で届けていきます。」という言葉とともに『Rainbow』が始まる。

実は『Rainbow』は初めて聴いたとき、曲調も歌詞もあまりピンときていなかった。ところが、しばらくしてから、歌詞を「あり得たかもしれない解散のときに最後にファンの人に届けるメッセージ」として聴いてみたら、「I'll be there for you 」は「活動が終わっても、あなたの心の中にずっといるよ。」という意味に思えてきて急に泣けてきてしまった。

では今回はどうだったかというと、11年目も前向きに進んでいくというメッセージ映像の後だったから「I'll be there for you 」が咲良菜緒の「やりきれるところまでやってみましょう!」というメッセージと重なって聴こえてきて、ああ良かった、ありがとうという気持ちでいっぱいになっていた。

アンコール

1曲目はDay1もDay2もよく知らない曲。振り付けが若い。

2曲目はDay1は『マジ感謝 』Day2は『でらディスコ』。ともに改名前のライブのラストの定番だった曲だ。

初めて生で聴いた『マジ感謝』は、韻を踏んでいたりサビが『マジ感謝』だけだったりとヒップホップみたい。間奏の「みんなで写真撮るよ〜」の流れは、You Tubeにも公開されているガイシのアンコールの映像を彷彿とさせた。

『でらディスコ』は改名前にアンコールのラストに使われていたと聞くが、個人的には2021年のDINER SHACHI2日目を思い出す。このライブ、質素な演出ながら本当に楽しかった。たくさんジャンプして最後まで楽しいままライブ終了。

ライブ全体を振り返って

ここまでは曲順にライブ中に感じたことを振り返ってきた。最後にライブが終わってから感じたことを書く。

パシフィコとの比較

2021年10月のパシフィコ横浜のライブと10周年記念ライブはどちらもめちゃくちゃ楽しかったが、ライブ全体の雰囲気は少し違ったように思える。

パシフィコはライブショーと打ち出していたこともあり、演出やセットリストもTEAM SHACHIの様々な要素を全て盛り込んだような構成だった。ティザー映像の「このままじゃ、このままじゃ止まれない」「負けられない公演がある」といったメッセージに代表されるように、公演までのストーリーも「覚悟」を強調するものだった。だからこそ、成功した時には大きなカタルシスがもたらされた。

一方、10周年記念公演は、演出はシンプル、セットリストは改名前の10年間のキャリアのなかで、エポックメイキングで「強い」曲を集めたものだった。そして、これまでの歴史を全て肯定し、しかも明るい未来を見せてくれる、笑顔に満ちたものだった。

柚姫の部屋で「TEAM SHACHIさんは笑いながら泣かせやがる」という感想が紹介されていたが、まさにそういうポジティブさに溢れたライブだった。さすがポジティブグループを謳うだけある。

アーカイブの重要さ

今回のライブはコンセプト的に、これまでのグループ歴やエピソードを知っているかどうかで感じ方が大きく違ったはずだ。良くも悪くも文脈重視のライブ。

そんなライブだったが、ファン歴が1.5年ほどの僕でも、過去のエポックな出来事を思い浮かべながら共感し楽しむことができた。

それが可能だったのは、過去のライブドキュメントやインタビューなどがアーカイブとしてたくさん残っていたからだ。アーカイブはめちゃくちゃ重要。というわけで、ぜひ今回のライブ映像化してくれないかな…。

11年目のその先へ

個人的に、今回のライブで最も嬉しかったのは「TEAM SHACHIというグループが今後も続いていくということが繰り返し伝えられた。」ということだ。メンバーからのメッセージ映像に加え、ライブの雰囲気、次のライブの発表など、11年目以降の明るさを予感させるものだった。

それを最も象徴的な形で表現されたのが『秘密のセレナーデ』のラスト、秋本帆華と咲良菜緒が手を繋いで階段を登るシーンだ。

2013年の愛知県体育館のライブドキュメンタリーに咲良菜緒と秋本帆華が次のような会話をするシーンがある。

咲良「道連れだよ。菜緒がやめたら、帆華もやめるけど、菜緒がやめないから帆華もやめない。あはははは!」
秋本「そんなこと考えないで、普通にね…。」

個人的な感想に過ぎないが、当時活動をやめるかどうかの瀬戸際だった咲良菜緒が秋本帆華と交わしたこの言葉こそ、これまでの数多の分岐点において「続ける」という選択を取ることができたルーツなのだと思う。

その二人が、今度は手を携えて階段を登っていく。しっかりと握った手で、あの約束がより強固になったことを確かめるかのように、11年目そしてその先へと進もうとしているー。

プラットフォームかロックバンドか

先にも述べたように僕はTEAM SHACHIにロック的な魅力を感じている。それは音楽性の面もあるのだが、それだけではない。

ここ一年くらい他のアイドルの情報も耳にするようになって知ったのは、アイドルグループはプロスポーツチームのように、加入・脱退を繰り返しながらプラットフォームとしての成功を目指すというのが一つの理想形だということだ。確かに、宝塚歌劇団のように長く続くグループをつくりたいのであればプラットフォームを目指すほかない。

一方で、TEAM SHACHIは10年間メンバーを増やさずにやってきた。オリジナルメンバーでできなくなったら解散するのだろう。

これ、ロックバンドのようではないか。いや、もちろんメンバーが増えないアイドルもいるし(同事務所のももいろクローバーZなんかはその代表だろう)、バンドもメンバーの入れ替わりは数多くある。

けれどもロックバンドは普通、オリジナルなものを維持しようとする。プラットフォームは目指さない。

『DREAMER』の歌詞にあるように、TEAM SHACHIはオリジナルなTEAM SHACHIの命を全うしようとしてきたし、これからもそうなのだろう。

いっそ、燃え尽きるまでこのままで

『DREAMER』より

今回のライブでは、これまで所属していたワーナーミュージックを離れ、自主レーベルを立ち上げることが発表された。11年目のTEAM SHACHIはどんな展開を見せてくれるのか、楽しみは募るばかりだ。

https://teamshachi.nagoya/

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