見出し画像

財布を拾う率と人身事故に遭遇する率が高い人間 2

「ただいま、○○線××駅構内にて発生いたしました人身事故の影響により、運転を見合わせております。お急ぎのお客様にはご迷惑を―――」
電光掲示板に延々と流れ続ける案内文、響き渡る淡々としたアナウンス、情報を拾おうとスマホを確認し、駅員に話しかけ、誰かに連絡を入れる人々。
私はよく、人身事故、線路上の安全確認などで足止めを喰らう。乗っている最中に遭遇することもあれば、駅に着いた際にはすでに人だかりができ始め、嫌な予感を抱きつつ案内板を見に行くと遅延、運転見合わせの案内が出ている。車を持たず移動手段のほとんどが電車である私にとって、乗っている回数から遭遇する率がおのずと高くなることもある程度納得はできる。しかし、日本の時刻に正確な運行に慣れてしまっている身では、数分の遅れももどかしい。しかし、そこで駅員に詰め寄ったりしても仕方がないことであり、イライラしても電車が動くわけではないので静かに待ち続ける、もしくは別の手段を取るしかない。
無事に電車に乗ることができ、帰路につく中ふと、遅延や運転見合わせの原因に思いを馳せる。

私はこの目で電車の遅れの原因となる現場を見たことはないのだけれど、乗っている電車がまさに人身事故を起こしたらしいという場に遭遇したことはある。
あれは長男がまだ小学校の低学年、次男がまだ赤ん坊の時のことで、主人の実家であったかただのお出かけだったかは忘れてしまったのだけれど、電車などを含めて移動に40分以上ほどかかるところに遊びに行った帰りだったと思う。
終電で自宅の最寄り駅へ向かう途中、あと一駅通過すれば到着というところで突然電車の警笛が鳴り響き、車掌がアナウンスを行った。
「緊急停止します。つり革手すりなどをしっかりとお持ちください」
その声に重なるように、女性の機械音が「緊急停止します。緊急停止します」と繰り返される。長男と夫は座っていたが私は次男の乗ったベビーカーに手をかけ立っている状態だったのですぐさまベビーカーの持ち手とそばにあるポール状の手すりを力いっぱい掴み足を踏ん張った。その瞬間、体験したことのないほどの揺れと共に金属の擦れあう嫌な音をさせながら電車は停止した。特急電車で通過する駅がもう目の前というところだったのもあり、停まる際にも反動が来るほどだった。踏ん張っていなければ確実にベビーカーと共に転んでいただろう。
車掌による状況確認に数分から十数分、さらに詳細な情報確認と車掌による内容の確認などにさらに数十分の時間を要し、その間に消防車や救急車、パトカーなどの緊急車両のサイレンがけたたましく響き渡る中乗客たちもなんだなんだとそわそわしだした。私は座っている主人と長男のそばに寄り、どうしたんだろうねと話をした。
結果としては、自転車か何かと人を巻き込んだ人身事故であったようで、そのことについては次の日のネットニュースで知った。
車掌のアナウンスはあくまで「人身事故」という単語に留まり、最終的に2時間ほどその場から動くことはできなかったが、逆に言えば2時間で事故現場の検証、電車の車両や線路の確認、関係者の対応、電車の今後の動きについてなどがたった2時間程で決まり走り出したということなのだから、本当に鉄道会社と警察消防などは凄いと思い知らされた。その後はきっとほぼ夜通しで確認作業などをしたのだろうと思うと大変な業務である。
ガシャンという文字だけでは表すことのできないようなあの独特な金属音、あれば自転車がぶつかった音なのだと考えるとぞっとした。今は引っ越しその路線は通らないのだが、電車が遅延などするとその時のことを一番最初に思い出さずにはいられない。
ほかにも体験があるが、それはまた機会があれば思い出しつつ別の記事にしたいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?