生き方は人それぞれ。【だから旅は、やめられない。#23】
チエ(会社員)
生き方は人それぞれ。
頭ではわかっていても、自分のこととなると話は違うようです。
自分の生き方を”受け入れる”ということが簡単にできなかった私には、旅が必要でした。自分の選択を後悔したくなくて、正解の理由を得るために、旅に出ていました。
▼ランタン祭り(ベトナム)
自分を受け入れるために始めた「旅」
私が旅に行くようになったのは、自分の生き方を変えた時でした。
母親がアルツハイマー病による軽度認知障害と診断され、認知症の発症の可能性を知らされました。東京で働いていた私は、実家がある関西に戻り、母親と過ごす時間ができるよう、定時に帰る仕事に転職しました。
それ以前の私は、人生の目標=仕事の目標、でした。
好きなことを仕事にしたからだと思います。テレビ関連の仕事で、仕事をバリバリするタイプでは決してないのですが、残業も多く、自分の時間は少なかったかもしれません。
でも、そこに不満を感じることもなく、目の前の仕事に夢中でした。
そんな私が、突然の予測不可能な理由で、自分の生き方を変えなければなりませんでした。
失うものが大きかった私は、好きな仕事をやめる代わりに、それまで時間が取れなくてできなかったことをリストにして、順番に体験していくことを決めました。
その中の一つに、"旅を始めるきっかけ"となる旅があったのです。
SNSで偶然見かけた、一枚の写真
夜空に無数のランタンが飛び立つ傍に、僧侶の姿―――。
SNSで偶然見かけた、神聖な雰囲気の一枚の写真。それは、タイのコムローイ祭りの写真でした。それに惹かれて、私はタイまで見に行くことを決めました。
実際に見た景色は、私が見た中で一番美しく、幻想的でした。
あの写真は、ほんの一部で、写真に収まりきれない数のランタンが空に舞い、一瞬ではなく、ずっと続くのです。規模は、想像以上。予習のために観たディズニー映画「塔の上のラプンツェル」の世界に入り込んだよう。
そこで飛んでいく無数のランタンを眺めながら、ふと思ったのです。
「自分がいたスタジオや作業室の空間が、これまでは人生の全てだったのに、いま見上げている夜空は、どこまでも無限に広がっている!」
これからは、籠っていないで、見に行きたい景色を見に行こう、あの空間ではできなかったことを、自分の肌で感じ体験しに外に出て行こう、と決めました。
これからの生き方に不安を感じる中、夜空を見上げながら、自分の選択の正解を見つけた気持ちになりました。
生き方は人それぞれ
母の症状が進行すると、簡単に旅に行けなくなるため、タイムリミットがあります。先延ばしはできません。それからの私は、頻繁にはいけませんが、心を動かされた場所が見つかれば、あの時に感じた感動を求めて旅に出るようになりました。
▼マスジェデ・ナスィーロル・モルク(イラン)
また、楽しい旅の思い出や経験が増えてくると、今の環境をありがたく感じるようになります。
旅の間、母の面倒を見てくれている姉、旅好きであることをわかってくれて長期の休みを取ることに理解を示してくれる職場。とても恵まれています。
そして、旅を通して豊かな時間を過ごし、いろんな経験ができる生き方も楽しいかもしれないと思えるようになってきました。
”受け入れる”と楽になる、という話はよく聞きます。
頭でわかりながらも、それを本当に理解して自分を納得させるまでは時間がかかります。私は4年もかかってしまいました。そのもがく過程で、旅は大きな助けでした。現実逃避であり、自分へのチャレンジでもあり、ご褒美でした。
自分の生き方を受けいれられるようになった今は、自分の選択を後悔しないため、ではなく、自分の選択を満喫するため、に変わりました。
▼死者の日(メキシコ)
生き方は人それぞれ。
好きなことを仕事にできなくても幸せ。趣味を生きがいに生きることも幸せです。
タイムリミットが来るまで、人生を十分に満喫したいと思います。
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