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いつか私も、誰かのヒーローになれるように【旅が僕らに教えてくれたこと#9】

岡 春菜子(貿易商社)

旅が教えてくれること…?

旅はいつも私に何を教えてくれているのだろう。
このテーマを聞いてから、すごく長い時間、考えていた。

終始、電波もないような過酷な場所に行ったこともなければ、海外旅行によくあるハプニングの旅も経験したことがない。

いつも誰かと一緒に旅をするので、ディープな宿泊施設で現地の方々と、朝まで語り明かすような経験もない。

私が、旅で得たものとは―――。

答えが、すぐに出てこなかった。

あまりにもエピソードがなさすぎて、周りには「旅行好き!」と言いながら、「私は、こんなにも薄っぺらな旅ばかりをしてきたのか…」と、落ち込んだ。

人の温かさは世界共通

でも、きっと『何か』があるから、私は旅に出たくなって、そして『何か』でエナジーチャージできるから、何度でも旅に出ているのだと思う。

旅の中で嬉しかったこと、鮮明に記憶に残っていることを思い返すと、旅をする私の周りにはいつも、『人の温かさ』があった。

Episode 1 韓国

大学生の時に韓国に行った時のこと。

到着するとすぐに行動したい派の私は、スーツケースを預ける為に、この時も一番にコインロッカーを探した。

地下鉄の改札を抜けて空きを見つけたのは、硬貨のみしか使用できないタイプのロッカー…。紙幣は持っていたが硬貨はなく、しかも両替機も近くに見当たらない…

さて、どうしようか…としばらくロッカーの前で考えていると、同じ年くらいの女性が、「どうしたの?」と声をかけてくれた。

事情を話すと、彼女は躊躇うことなく、「5,000ウォンくらい、私が出してあげるよ!」「韓国に遊びに来てくれてありがとう!」と。

有難さももちろん感じたが、正直、それ以上にとても驚いた。

ここが日本で、私が彼女と同じ立場だったら同じことができていただろうか?

困っている人に声をかけるような優しい気持ちや余裕は、日本にいる私にはなかったかもしれない…と、その時、ハッとさせられた。

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Episode 2 台湾

ふとした時に突然行きたくなる場所、何度も訪れたいと思う台湾。

そう思うようになったのは、きっと、初めての台湾で出会ったおじいちゃんのおかげだ。

2泊3日の旅の中で、少し遠出をして、カラフルな村「彩虹眷村」がある台中へ。

単なるインスタ映えスポット!と気軽な気持ちで行ったのだが、想像以上に迫力のある村で、とても元気になれるパワースポットだった。

この村中に絵を描き続けてきた黄おじいちゃんは、当時90歳を超えていたのだが、笑顔が素敵なとても元気のいい方で、売店に入るとにこやかに出迎えてくれたことを、今でも忘れられない。

カタコトの台湾語で、「とても元気になりました、ありがとう」と伝えると、「趣味で始めたことが、こんなにもたくさんの人に喜ばれる場所になって嬉しい。みんなが喜んでくれるし、そしてハッピーで帰ってくれるから。それが僕の一番の幸せだ」と話してくれた。

まだ出会ったことのない誰かに思いを馳せ、その誰かが元気に、笑顔になってくれることを祈りながら絵を描き続けること。

おじいちゃんの優しい気持ちがなければ、あんな超大作はできない。自分のことだけでなく、誰かのために一生懸命になれる人がいる国。
そのお話を聞くだけで心が温まり、以来、この国が大好きになった。

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Episode 3 ロサンゼルス

ロサンゼルスでBroadway ‘Frozen’(アナと雪の女王)を鑑賞した時のこと。

直前に観に行くことを決めたので、友人とは離れた席のチケットしか取れず、残念に思いながら自分の席についた。

私が席に着くやいなや「すごく楽しみだね!一人で来たの?」と、隣に座っていた家族連れの少女が話しかけてきた。あまりにも突然のことにびっくりしたが、日本のこと、彼女の家族のこと、ディズニーのこと、ロサンゼルスのおすすめの場所のこと…開演前30分の間に、本当にたくさんのことを話した。

「Hanaはもう家族だから一緒に観よう♪」と言ってくれたことが本当に嬉しかったし、お別れの時は、彼女が買ったばかりのFrozen公式ガイドブックまでプレゼントしてくれた。

今でも連絡を取り合う仲だが、「あの時なぜ声をかけてくれたの?」と聞くと、いつも照れ隠しで「なんとなく~」とはぐらかしてくるが、あれも「一人で不安かな?仲良くなって一緒に観たいな」という、彼女の心の温かさがなせた行動だと思っている。

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Episode 4 カナダ

最後のエピソードは、カナダに留学していた時のこと。日本への帰国直前に、実家にいた愛犬がガンで亡くなった。

小学生からのほとんどの時間を一緒に過ごしてきたから、最後を看取れなかったこと、このタイミングで海外にいること。どうすることもできない状況が歯がゆくて、とても辛かった。

落ち込んでいる私を元気づけようと、気晴らしにホストマザーが連れて行ってくれた郊外へのショートトリップの道中で立ち寄った小さなチョコレートショップ。

ショーケースの中の可愛いショコラを見ていたら、店員さんに「Are you OK?」と話しかけられた。「いらっしゃいませ」の言葉にしては、やけに軽い言葉だなと思いながら顔を上げると、「You look so sad, what‘s happen?」とかなり心配した表情をしていた。

そんなに悲しい表情をしていたのか、と思いながら愛犬のことを話すと、彼女はレジから出てきて何も言わずにギューッと抱きしめてくれた。

出会ってたったの10分。赤の他人のはずなのに、ここまで人の心に寄り添える人がいるのだな~と、大号泣しながらも心はとても温かかった。

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       〈お土産屋さんで出会ったわんこも慰めてくれた〉 

これは本当に小さいエピソード達かもしれない。
でも私にとって、『人の優しさ』は、旅の記憶に残る大切な思い出で、
旅が私に教えてくれること。

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優しさの輪

私の旅はいつも誰かの優しさと、たくさんの『ありがとう』で溢れている。

私の旅が平凡なわけでも、薄っぺらいわけでもなく、どこに行っても、誰かが私に手を差し伸べてくれていたからこそ、とんでもないハプニングに巻き込まれたり、つまらなかったなと思ったり、怖い経験をしたことがなかったんだと思える。

彼らが声をかけてくれたのは、私が観光客だったからかもしれない。それが仕事だからかもしれない。お喋り好きな性格だったからかもしれない。世話を焼くのが好きな外国人だっただけかもしれない。

それでも、周囲に気を配り、優しい気持ちを持って、誰かに手を差し伸べる。こんな人々が、私の旅の中にはたくさんいる。旅は、私に、人の温かさと『ありがとう』の気持ちを再認識させてくれる。日本にいる、日常で生きている私は、どれくらい周りに目を向けられているだろう。

『優しい気持ちを持って、誰にでも手を差し伸べられる人になること』

これまでの旅が教えてくれて見つけた、私がなりたい人物像。

いつか私も、誰かのヒーローになれるように、『優しさ』を大切に過ごしていく。


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