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自分の決断と向き合える 【だから旅は、やめられない。#21】

中村 隆広(会社員)

旅は万事塞翁が馬

〜塞翁が馬〜
正しいと思った出来事がトラブルを呼び、間違った選択が思いがけない幸運を呼ぶこともある。どんな出来事もそれがどう転ぶかは表面的にはわからない。

CASE① インドでの塞翁が馬 1

インド・デリーへのエコノミークラスの航空券が埋まっていたため、カップ麺がいつでも頼めるJALプレミアムエコノミーで予約。

旅行当日、プレミアムエコノミーが用意できないということで、ビジネスクラスへ無料アップグレード!

機内食

デリー到着後、パハールガンジ(世界中から旅人が集まるエリア)で予約していた宿に行くも、「予約されていない」と主張され「警察呼ぶぞ」と逆ギレされて追い出される。ビジネスクラスからの宿無し。

屋台

客引きと交渉し、なんとか宿を確保。結果、予約していたより安い宿に泊まれた。ついでに、同じ宿で一目惚れのストールも見つけて、安く買うことに成功。


CASE② インドでの塞翁が馬2

デリーでリキシャの運転手に日本語が話せる有名ホステルのオーナーの元へ連れていかれて、麦酒をご馳走になり、高レートで両替を達成。

帰り道、そのリキシャの運転手と喧嘩をして、途中下車。宿へ向かうのを諦め、空港前の建物の床で寝る。

翌朝、デリーからラダックのレー空港(海抜3,256mにある世界で23番目に高い場所にある空港)に到着。しかし、前日のビールによる水分不足と床で寝た疲労から10分で高山病に。小用を足そうと力んだ瞬間に、頭がふらつき膝から崩れ落ちて、ズボンが大洪水に。

▼宿の屋上からの最高の洗濯

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しかし、高山病は簡単には治らない。とはいえ限られた時間の旅を楽しむために、翌日のトレッキングツアーを予約し、街を散策していたた。するとツアー会社のオヤジに『なんでまだ歩いてんだ!』と怒られる。予約時に『重症に見えるから早く寝ろ』と言ってもらっていたので心配してくれたんだと思う。

食欲もないのに、強制的にモモとラグマンを半泣きになりながら食べさせられる。最後はチャイ1ℓと薬をねじ込まれる

翌日。オヤジのおかげか、奇跡の回復。

トレッキングツアーに参加。軽めのコースだよと言われていたのに、山頂5,000mまでの、2泊3日の過酷なトレッキングが始まる……。


旅で起こった事はすぐには良い/悪いは分からない。

何が幸運をもたらしてくれるか分からないからおもしろい。


CASE③ ポーランドでの塞翁が馬

旅の出来事は刺激的で、1日の間に、躁鬱のごとく「嬉しい」と「悲しい」を繰り返す。

初めての海外1人旅はポーランド。クラクフからワルシャワへの列車に乗車。しかし、ポーランド語のアナウンスで、どこで降りればいいか全くわからない。ドキドキ、ソワソワ。

前の席のおばあちゃんが「Don’t Worry」といって、チョコレートをくれて落ち着く。

その数分後、無事、ワルシャワに着いたが、おばあちゃんと別れて不安になり、泣きそうになる。

早速、駅で迷っていると、シャラポワ似の美人に声をかけられ、道を教えてもらう。ドキドキ再び。

(……と、細かく書き起こしてみたが、完全に情緒不安定な人である。分かっているのに詐欺の被害に遭う旅人が多いのも、私にはわかる)

元来、人見知りで外部の刺激に弱い体質のせいか、感情変化の耐性値は低く疲れやすい。ショートした頭を空っぽにしなければいけない。

そんな時には、私はカフェではなく、霊園を訪れる。

▼『人は死んだら森に還る』スウェーデンの死生観を現したスコーグスシュルコゴーデン

広場

なぜ、霊園だったのかって?

気づいたそうなっていた……というのが実のところだが、シンプルな装飾や遮る物がない風景が自分にマッチしているからだとしておこう。静寂なのに、誰かの存在を感じさせる雰囲気。その雰囲気に身を任せる散歩しながら、「ありがとう」とつぶやき、頭のリセット完了。  

▼第二次世界大戦のワルシャワ蜂起の戦士を弔った『無名戦士の墓』

銅像


自分の決断と向き合う

旅は万事塞翁が馬。

自分がどれだけ準備をして臨んでも、その結末は分からない。良いことも理不尽なことも、自分だけで受け入れないといけない。でもそれは、社会人にはとても贅沢なことじゃないか。

サラリーマンの日常は……

企画書を書いたのは自分
企画書を修正させたのは上司
企画書を絶賛して承認したのは上司の上司
企画書をボツしたのは取引先

結局誰の何が良くて、何がダメだったのか分からないまま、煮え切らない思いが残ることも少なくない。

しかし、旅は違う。旅に出てしまえば、誰のせいにもしなくていい。

プレミアムエコノミーのチケットを選んだのは自分
予約されていない宿をとったのは自分
客引きと交渉してついていくことを決めたのは自分
いい場所を案内してくれたけどケンカになるようなリキシャ運転手を選んだのは自分

結局あの時どうすべきだったか決められるのは、自分だけ。

自分で出した決断に、自分だけが向き合える。良いことも悪いことも自分のもの。ぼられても損しても、澄み渡る納得感が残る。


贅沢でわかりやすい。

だから旅は、やめられない。

まっすぐな道







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