夏休み

一気に夏のにおいがしはじめてきた。
最近たまたまYouTubeで流れてきたLOVE LOVEあいしてるで、メンバーが順繰りと吉田拓郎の「夏休み」を歌うのを観てから、心を打たれてずっと聞いている。

「先生、ねえさんもういない。綺麗な先生もういない」こんな簡単な詩で、哀愁が溢れるんだからすばらしい曲なこった。それに2000年辺りからの吉田拓郎の声が渋すぎて、今更ながら抜けられなくなった。

それはそれとて、わたしには夏休みはもう無縁になったもんだと思ってたけど、ふいに「夏休み休暇を取って旅行しませんか」というような連絡がきた。

その人は、もうわたしの世界からは居なくなったもんだと思っていたので、突然そんな誘いがきて驚いた。一層のこと誰かと早く結婚でもしてくれと心のどこかで思っていたりしていた。

そこから夜を明かすまで電話をした。誰かと長電話をするのなんて一体いつぶりか。話し始めると夢中で時間が過ぎてしまっている。

翌日、滑りこみで休暇をとった。
来月、鎌倉のあたりに行くことになった。

「もういいんだ」と思い、誰かを好きになろうとしてきたが、いつも何か質量のないものを押しているような力みが自分を疲弊させていた。そして時々、その人から連絡が来ると、わたしは束の間、日常が変わってしまうことを喜びと苦しみを持って過ごしてきた。

もうわたしは彼女から何も期待したくないのである。だけど、彼女の求めることには、無条件に応えられずにはいられない。わたしの「夏休み」への期待は、相応の代償をまた請求されるのだろうか。

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