【3/2改稿】【レビュー】 VITURE One と Rokid Max を実機でガチ比較した。
ARグラスとかサングラス型ディスプレイとか言われている商品群のうち、昨年末に日本国内で正式販売を開始した下記の2機種を実機で比較しました。
VITURE One https://landing.viture.jp
Rokid Max https://jp.rokid.com/pages/rokid-max
このうち、VITURE One については以前より所有しており、noteにも書いておりました。
一方のRokid については、旧モデルである Rokid Air しか使ったことはなかったんですけれども、どうやら Rokid Max の方は画質が非常にいいらしい・・・と聞き及びまして。
VITURE One に十分満足している私としては Rokid Max がどれほどのものか非常に気になるところだったのですが、検索しても「この2機種を直接比較している記事・ビデオがほぼ見当たらない」という有様。
「だったら!」ということで、この度 Rokid さんから Rokid Max と Rokid Station をお借りしまして、私自身で比較してみることにした次第です。
ちなみに Rokid さんからは「レビュー等に関しては感じられたままの内容で記載いただけますと幸いです」とのお言葉をいただいていますし、VITURE の方は元々自腹で買ったものなので、どちらの会社にも気兼ねなく「気になるところを感じたまま」比較し、ド直球レビューを書かせていただきます!
それでは、まずは実機を見ていきましょう。
ディスプレイ部分であるメガネ部と、それぞれの純正メディアプレーヤー部に分けて見ていきますね。
メガネ部の比較
外観
デザインとしては、まぁ 好みの問題ではありますが、試しに家人の意見を聞いてみると「VITURE One の方が普通のサングラスっぽくて違和感がない」とのことでした。
私もこの2機種に触れるまでは「VITURE One の方がいわゆるWAYFARER ぽくて好ましい」と思っていたのですが、一方で、この手のARグラス系は普通のメガネと異なり少し浮かせた着用スタイルになるので、なまじサングラスっぽいデザインだと着用した時の見た目が逆に違和感出てくる可能性もあります。
ハーフミラー部
一方で、そんなデザインの関係上 メガネレンズ部の「縦幅」の違いに起因して、両機種で「周囲の見える範囲」が異なっています。
VITURE One は WAYFARER 型であるため 実際に映像が投影されるハーフミラー部分よりもメガネレンズ部の縦幅が大きくなっており、対して Rokid Max はハーフミラー部分とメガネレンズ部が一体化しているので全体的な縦幅が狭くなっています。
この違いにより、Rokid Max は着用時でもメガネの下から周囲や手元を直視することができますが、VITURE One だとメガネフレーム部分の底部が視界の邪魔になりやすく、着用時のスマホやノートPCの利用に影響があるので注意が必要です。
また、ハーフミラー部、メガネレンズ部を通して周囲を見た時の透明度も、両機種で微妙に異なっています。
Rokid Max は前述の通りハーフミラー部とメガネレンズ部が一体となっており、透明度が全体的に均一なので、比較的見えやすい印象です。
VITURE One の場合はハーフミラー部とメガネレンズ部が独立しており、ハーフミラー部を通して見ると Rokid Max よりも更に透明度が下がります。
一方でハーフミラー部を通さずにメガネレンズ部のみで見ると Rokid Max よりもやや明るく見えます。
掛け方にもよりますが、ハーフミラー部とメガネレンズ部の透明度の違いがある関係で、着用したままだと周囲はRokid Max より見えづらくなる印象です。
調光機能
VITURE One がなぜハーフミラー部とメガネレンズ部で分かれているかというと、メガネレンズ部に調光機能が搭載されているからです。
これは、映像視聴時の外光取り込み具合を本体のみで調整することができる VITURE One の特長の一つです。
この機能は想像以上に有用で、フレーム側のボタンを一度押すだけでオンオフできるので、動画をよりよく見たい時や周囲を確認しながら視聴したい時など利用シーンに合わせて即座に変更することができて便利です。
なお、Rokid Max の場合は標準で遮光カバーが付属しています。
遮光カバーは VITURE One の調光機能オン時よりも確実に遮光できるので、より映像に没頭したい場合には有用ですが、一方で 持ち運び/取り外し等、本体とは別に管理しておく必要があるのが面倒ではあります。
ディスプレイユニット部
VITURE One も Rokid Max も、内蔵されている有機ELディスプレイの映像をハーフミラーで反射させることで着用者の目に映し出す仕組みは共通となっており、本体の下方から見てみるとディスプレイユニット部が確認できます。
こうして比較すると、Rokid Max の方がユニットサイズが大きいことがわかります。
両機種とも基本的には片眼あたり1920x1080画素(*Rokid Max はPC接続時に1920x1200を選択可能)なので、相対的に1画素あたりの大きさはRokid Max の方が大きいと考えられ、これが映像の明るさにも影響していると思われます(後述)。
視度調整機能
冒頭にも書きましたが、両機種ともに「視度調整機能」が搭載されています。
これにより、軽度の近視であれば追加専用レンズを入れなくても本体のみでピントが合った「クッキリはっきり映像」を楽しむことができます。
私がARグラスを愛用しているのは、この視度調整機能があるから、といっても過言ではありません。
どちらの機種も、両眼それぞれのダイヤルを回してピントを調整する仕組みになっています。
調整の幅は VITURE One で 0.0D 〜 -5.0D、Rokid Max で 0.0D 〜 -6.0D となっており、Rokid Max の方がより視度調整幅があります。
一方で、この調整機能を使っても画面中央と周辺部のピント差を完全に無くすことはできず、より画面が広い Rokid Max の方が周囲とのピント差を顕著に感じました(後述)。
それにしても、その日の体調に合わせてダイヤルで視度を微妙に調整できるというのは大きなメリットですね。
コネクタ
VITURE One も Rokid Max もメガネ部単体では使えず、何らかの機器を接続する必要があります。
接続コネクタは両機種で異なっており、Rokid Max が USB-C端子、VITURE One が専用マグネット端子を採用しています。
「メーカー独自の専用規格」というのは汎用性がなく互換品の入手が困難であるため嫌われる傾向にありますが、VITURE One のマグネット端子については私は下記の理由で非常に気に入っています。
USB-Cの場合、端子に対し真っ直ぐケーブルを抜き差しする際の「力のかけ具合」に気をつける必要がある(本体 or ケーブルの破損が気になってしまう)
ケーブルが引っ掛かっててしまった際に、マグネット端子だと機器に負担をかけずに外れてくれる。(そうで無い時は外れない程度には磁力の強さがある)
一方で、ケーブルは純正品を使うしかないのでその点注意が必要です。
サウンド
両機種ともに、それなりに迫力のある音を出してくれます。
サウンドについてはあまり不満は無く、割愛します。
装着感
実は意外と驚いたのが装着感でして、個人的には Rokid Max の方が装着感が良かったのです。
VITURE One については標準で付属する3種類のノーズパッドを全て試し、今でもたまに交換してみたりして常にベストポジションを探っています。
一方、Rokid Max については、箱から出してそのまま着用してジャストフィットだったんですよね・・・装着しながら色々家事をしていてもあまりズレない。これはおそらくヒンジの幅が Rokid Max の方がやや広いことが幸いしていると思います。
メディアプレーヤー部の比較
メガネ部はこれぐらいにして、純正メディアプレーヤーについても比較しますよ。
VITURE One ネックバンド https://store.viture.jp/products/viture-one-neckband
Rokid Station https://jp.rokid.com/pages/rokid-station
それぞれ、過去にレビューを書いてますので、そちらも参照ください。
外観
両社の専用メディアプレーヤーは、そのコンセプトが大きく異なっていると感じます。
VITURE One ネックバンドは、VITURE One メガネ部に搭載されている「3DoFセンサー」や「調光機能」「3D表示機能」を活かすための「VITURE One 専用のプロセッシングユニット」という位置付け。
対して、Rokid Station はまさに「持ち運べるAndroid TVデバイス」。
そのコンセプトを反映してか、それぞれのフォームファクターは違うものが採用されています。
VITURE One ネックバンドはその名の通り「首にかけるタイプ」で、メガネ部とは短めのマグネットケーブルで接続します。そのため、基本的に首から上で完結し、煩わしいケーブルを気にする必要が無くなります。
また、ネックバンド左側には操作ボタンが集中しており、しばらく使っていると慣れてしまうため、すっと首筋に手をやるだけで操作を行うことができます。
ネックバンド右側についているUSB-C端子は充電だけではなくUSBメモリにも対応しているので、ファイル転送も可能となっています。
一方、この右側部にはファンが内蔵されておりファンノイズがするのですが、私の場合は購入時から静音モード(ファンの回転数を下げるモード)をオンにしており、これまでのところ動画視聴時に特段気になったことはありませんでした。
他方、Rokid Station は一昔前のiPodを彷彿させるようなデザインのポケッタブルなデバイスです。
利用時は Rokid Station 側の micro HDMI 端子と Rokid Max 側のUSB-C端子を専用ケーブルで接続します。micro HDMI も USB-C も汎用規格なのですが、ケーブル途中にある楕円形の部分で変換を行っているようで、ケーブルは専用のもののみ利用可能となっているようです。
また、Rokid Max 装着時は Rokid Station はポケットに入れることになりますが、頭から腰にかけて長いケーブルが繋がることになるので何かの拍子に引っ掛けてしまいやすい印象です。機器やケーブルの破損に気をつける必要があります。
なお、Rokid Station には USB-C端子も搭載されていますが こちらは充電専用の為、Rokid Max への映像出力用途やUSBメモリでのファイル転送用途には使えません。
一方、内蔵バッテリーについては VITURE One ネックバンドが 3,280mAh(駆動時間は2~3時間)なのに対し、Rokid Station は 5,000mAh(駆動時間は5時間)となっており、より長時間利用できます。
ソフトウェア
Rokid Station は Google認定の「ほぼ素の」Android TVデバイスです。Google の Chromecast を使ったことがある人は、それを思い浮かべていただければわかっていただけると思います。
逆に、Rokid Max に特化した機能は搭載されていないようです。USB-Cでの接続ではなく micro HDMI 接続ということもあり、Rokid Max 側のセンサーを活かした 3DoF表示や、Rokid Maxのファームウェア更新なども行えず、この点は非常に残念に感じます。
一方の VITURE One ネックバンドは Android 11 ベースの Neckband OS で動作します。
アプリの追加は 専用のVITURE App Store を利用する等の違いはありますが、基本的にはこちらも Android TV のような使用感で利用できます。
Rokid Station と異なり、VITURE One ネックバンドは VITURE One を活かすための機能拡張が行われており、主に下記のことができるようになっています。
アンビエントモード:見ている映像を隅の方に縮小させ、同時に調光機能をオフにして周囲を見えやすくする
ピンモード:見ている映像を固定する、いわゆる3DoF機能
3Dプレーヤー:3D SBS映像を検出したら3Dモードに切り替えて再生
VITURE One ネックバンドには今後も更なる機能拡張が予定されているようです。
以上で、実機の比較を終わります。
表示サイズ・画質の比較
ここまでで、ずいぶん文字数をかけてしまいました・・・
ここからは、いよいよ VITURE One と Rokid Max の表示サイズと画質の差について触れていきます。
表示サイズ
VITURE One は「120インチ相当(が3m先に映し出されたような大きさ)」、Rokid Max は「215インチ相当(が6m先に映し出されたような大きさ)」とそれぞれ公式サイトで謳っていますが、実際のところはどれぐらい違うのでしょうか?
スペック上は、両機種のFOV(Field of View、視野角)は以下のように記載されています。
VITURE One:43度
Rokid Max:50度
この数値から考えると、明らかにRokid Max の方が広く大きく映像が表示されるようです。
ということで、実際に調べてみました。
測定方法は 1920x1080ピクセルのコンテンツを再生した状態で両製品を着用し、同じ場所から壁を見たときに「どのぐらいの大きさになるのか」を、壁に貼ったテープを基準にして記録します。
図にするとこんな感じとなりました。
緑色の四角が VITURE One、それを上回るオレンジ色の四角が Rokid Max での表示サイズになります。
実際に Rokid Maxを着用して映像を見ると「ああ、ちょっと大きめだな」という実感もあるので、上記の図の差は納得するところです。
一方で、Rokid Max ではハーフミラーの表示範囲ギリギリまで表示している関係で、特に四隅のいずれかがややと見えづらい状態となりがちです。また、前述の視度調整のところでも触れましたが、中央部でピントを合わせても周辺部が少しボケている状況になりやすいと感じました。
同様のことは VITURE One でもゼロではないのですが、表示サイズが一回り小さいことが幸いしてか、全体が見やすくピントも合いやすい印象です。
映画や動画の場合は周辺部が少々甘くてもあまり気にならないのですが、PCのデスクトップを表示していると「タスクバーやメニューバーの文字が見えづらい」状況になりやすく、注意が必要だと感じました。
なお、ディスプレイユニット部のところでも書きましたが、両機種とも基本的に片眼 1920x1080ピクセルで共通の為、表示サイズに関わらず情報量は同じです。
画質
そして、画質です。
画質については、それぞれのハーフミラーを直接カメラで撮影してもうまく伝わらないので、文章での説明となることをご了承ください。
画質については、明らかに Rokid Max が綺麗です。
想像していただきやすいのは、VITURE One の映像は標準(SDR)ビデオだとすると、Rokid Max の映像はHDRビデオのようなものです。
画質比較の為、YouTube の HDR 動画や、ちょうど先日プレミア公開された「ゼルダの伝説 オーケストラコンサート」を両機種で見てみましたが、Rokid Max は全体的に輝度が高く、眩しい部分を眩しく表示するため、相対的に黒も沈んで見えるように感じました。
VITURE One も黒はちゃんと黒く表示されるのですが全体的な輝度が Rokid Max よりも劣るため、比較してしまうとメリハリに欠ける印象を受けます。
一方、色味については Rokid Max はやや赤が強めに出ており、その点では VITURE One の方が自然な色味となっていました。
あと、気になった点として、Rokid Max では白い文字や細い横線でなぜかドットを感じます(VITURE One では感じられない)。詳細は不明ですが、採用しているOLEDパネルがペンタイル配列だったりするんでしょうか・・・。
まとめ
まずは、今回 Rokid Max & Rokid Station を貸し出してくれた Rokid さんに感謝申し上げます。今回の比較は、店頭で試用しただけではここまで掘り下げることはできませんでした。ありがとうございました。
そして確かに、Rokid Max は画質に優れ、表示サイズも大きく、私にとっては装着感も優れた製品でした。もし私があの時 VITURE One を購入せず Rokid Max を選んでいたら、Rokid シンパになっていたと思います。
Rokid Max は「所有するテレビ/ディスプレイの中で一番高画質」になり得るクオリティだと感じました。
一方、これまで高画質だ!と満足していた VITURE One でしたが、特に明るさが足りていなかったということに今回気付かされました。
両社が掲載しているスペック表では「VITURE One:1800nits」「Rokid Max:最大600Nitsの知覚輝度」とありますが、この数字を見ただけでは実際の違いを理解できないでしょう。実機から受ける印象は全くの正反対です。
・・・いや、まだ終わらない
確かに画質では Rokid Max が優れていたのですが、実はここまでで比較していない重要な項目があります。
それは「今後の機能追加」です。
なんと、Rokid Max には現時点で「対応スマホアプリ」「ファームウェアアップデート」が無いという状況になっています。
また、箱に記載されているQRコードからAPKダウンロードページに飛ぶと、下記の日本語文言が記載されたページが表示されます。
「アプリケーションの使用は必須ではない」「アプリケーションによるアップデートはない」と明記されていますね・・・
一方で、VITURE One の価値は「機能拡張」にあります。
ブラウザからファームウェアアップデートが可能(更新履歴)
iPhoneでマルチモニタ対応デスクトップ環境を実現するアプリ「SpaceWalker」をリリース(詳細ページ)
そのSpaceWalkerのAndroid版、macOS版のベータテストを開始(Reddit)
ネックバンドにゲーム攻略特化型AIチャット「VITURE Vizard」の搭載(Reddit)
上記は一部ですが、この様に VITURE は関連ソフトウェアの開発に注力しており、ユーザーがそれを享受できるコミュニティが出来上がっています。
発展途上のカテゴリの製品において、こういったコミュニティは非常に有益なものであり、この点で VITURE は Rokid に大きく差をつけていると感じます。
ここまでの結論
最後まで読み進めていただけた方、ありがとうございました。
ここまでを踏まえ、本記事では下記の様に結論づけたいと思います。
映画の視聴が重要な方
→ 大きな画面で高輝度高画質の Rokid Max をお勧めします。迫力が違います!家事をしながらYouTubeを見たい方
→ ネックバンドとのセット利用前提で VITURE One をお勧めします。ケーブルを引っ掛けることが無いですし、調光機能やアンビエントモードを利用すれば、手元を見ながらの動画視聴を両立できます。iPhone 15シリーズを使っている方
→ VITURE One をお勧めします。iPhone用マルチデスクトップ環境「SpaceWalker」がフル対応しており、空間ビデオの再生機能も楽しめます。ノートPCに繋いだ利用を考えている方
→ 特別なマルチモニタ・デスクトップ環境に興味がなければ現時点では Rokid Max の方がいいかも。上下の目線の移動は Rokid Max の方が見やすかったです。但しタスクバーやメニューバーの隅が見づらい際は都度調整が必要かも
→ MacBookを利用している場合は SpaceWalker のリリースが近いので VITURE One もアリです。なお、Windows版SpaceWalkerも開発中とのこと。今後のアップデートも含めて楽しみたい方
→ VITURE One をお勧めします。一緒に今後のアップデートを追いかけていきましょう!
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