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東急バス×神奈川大学×RYDE若年層の利用向上に向けた新たな挑戦

 2022年夏より、季節毎の企画乗車券におけるデジタルチケットの発売を始めた東急バス。コロナ禍での業務効率化を目的にデジタル化を推進され、その中でデータ取得によるマーケティングへの活用など、新たな取り組みにも着手されつつあります。
そして、迎えた2023年夏。夏休みの企画乗車券販売にあたり、課題の一つであった若年層へのアプローチに向けた新たな視点を取り入れるべく、東急バス、RYDE、神奈川大学国際日本学部 国際文化交流学科 髙井ゼミのメンバーがタッグを組み、企画券販売に向けたプロモーションを考えるプロジェクトを始動させました。その取り組みを経て、どんな発見や効果があったのか?メンバーで振り返りを行った様子をご紹介します。


プロジェクトメンバー

ーー東急バスでは若年層の利用は以前より課題の一つだったということですが、その背景や打ち手として取り組んできたことがあれば教えてください

石さん:実は、バスの利用という面で若い世代の方にもっと乗ってもらおうと本格的に動き出したのは最近なんです。人口減少が急速に進む日本において、若年層もきちんと顧客として取り込むという観点では、幼少期からバスに乗る習慣をつけてもらわないといけません。
小さい頃から乗り慣れてないと、大人になっても交通手段の選択肢にすら入ってこないんです。
今は小学生とかにバスの乗り方の講座を開いたりもしています。

大関さん:一方、学生や若い人は徒歩や自転車で自分で移動できるので、その中でバスを選んでもらう工夫が必要だと考えています。
例えば、企画乗車券などは、“夏の移動には涼しくて良い”と想起してもらえるよう、学生向けのプロモーションにも力を入れ始めています。
去年、横浜市立大学ともコラボレーションをさせてもらい、ラッピングバスのデザインプロジェクトも実施しました。
接点を持つことで、バスに関心を持ってもらうことが大事ですね。

ーー若年層向けにSNSなどの施策にも積極的に取り組まれているのでしょうか?

正地さん:SNSを本格的に稼働させ始めたのは最近です。
Instagramは去年、X(旧:twitter)は以前から開設はしていたものの手付かずな状況でした。
私自身が担当になり、Instagramについては引き継いでから70人くらいフォロワーが増えましたが、まだ1000人もいない。どうすればファンを増やせるのか日々勉強しています。
当社のフォロワーは70%が男性の方です。できれば、企画券の利用も多い女性向けにも刺さる内容を発信していきたいのですが、まだファンを増やしきれていない状況です。
今回の取り組みで、SNSなどを日常的に使っている若年層ならではの視点もいただけることを、とても期待しています。

東急バス公式Instagram

ーー今回のプロジェクトの内容を教えてください

原田:昨年の夏より、企画券のデジタル化を進めていたので、どんなユーザーがどのように利用しているのか?ユーザーの利用実態はすでに掴めていた状況でした。
そのデータをもとに仮説を立てるようにしているのですが、ユーザーの生の声を聞いた方がより良い施策を考えられるだろうと思い、東急バスさんと若年層ターゲットのペルソナに近い神奈川大学の学生を引き合わせました。
神奈川大学の髙井ゼミは観光学のゼミで、観光を文化とビジネスの両輪から研究しているため観光に興味のある学生が多いことから、一緒に企画を考えるところからプロジェクトを始動しました。
ただ、そのタイミングですでに夏の企画券の内容は決まっていたので、販売促進の施策を考えることにしました。ちょうど正地さんが担当されているSNSの存在を知り、これなら学生からのアイデアを仰ぎながら、新しい挑戦ができそうだと思いました。
数回のワークショップを通してSNS投稿内容の企画、改善に取り組むとともに、企画券の告知の重要な施策の一つである、ポスター制作にも携わらせていただきました。
同じクリエイティブを継続することは、固定のファンからすると分かりやすくていい側面、目新しさはありません。今回SNSの投稿内容と合わせて、思い切って訴求内容を変えてみることにしたんです。ご快諾いただいた東急バスさんにも感謝ですね!

ーーポスターをはじめ、従来の訴求内容を変更することに不安はなかったのでしょうか?

石さん:より若年層の利用を伸ばしたい、変えていきたいという思いが強かったので、躊躇はなかったです。
せっかく一緒に取り組みをさせてもらうのだから、些細なことでも良いから、若い世代の感覚を躊躇なくぶつけていただきたい、どんなものでも受け入れてやっていこうと思ってましたね。
結果として、しっかりとした中身のものをつくっていただいて感謝しています。当社でも若手社員はいますが、比率としては多くはありません。
若手を巻き込んだプロジェクトもありますが、それぞれ持ち場で仕事をしていることもあり、日々の施策に意見を反映する機会がこれまでなかったんです。社内のメンバーでアイデアを出しても、結局凝り固まってしまっている。バスのことをよく知っているからこそ、こういうものだと先入観を持ってしまうんですよね。
マーケティングの観点では、利用者目線の視点が欲しかったので、こういった機会はありがたくご縁に感謝してます。

原田:RYDEがこういった形で学生とワークショップを実施したのは初めてだったのですが、当社にとっても目から鱗な情報がたくさんありました。
例えば、学生の皆さんから「切符って言葉がピンときません」と言われた時はハッとしました。
これまで当たり前のように切符という言葉を使っていましたが、そもそも今の20代は物心ついた頃からICカードを利用しています。
一見、些細なことのように思われますが、ポスターなどの制作物を作るにしても、そもそも切符というキーワードがあるだけで、20代の人にとっては関心のない情報になってしまいます。このような気づきは、ターゲットの生の声を聞けたからこそ得られたものですね。

ーーワークショップ等を通じて、顧客視点の重要性も改めて認識されたのですね。今回施策を打った中で、効果を実感できたものはありますか

原田:ポスターやSNSの訴求のみの直接の効果という訳ではないですが、過去実績と比較して販売数が増加しました。
今回、3種類の企画券を販売しましたが、相互利用が発生していて順を追って段階的に利用が伸びています。これにより固定ファンがつき始めているというのは明らかで、非常に嬉しいことですね。
お客様自身が、自分で利用シーンに合わせて券を使い分けされている。そこまで使い方が浸透しているのは非常に良い傾向だと思います。

石さん:販売数の増加が嬉しいのはもちろん、今回学生の皆さんとアクションを起こさせていただく中で、思っている以上に機会損失がまだまだあるなと気づけたことも、取り組みの効果として感じています。
企画券が販売されていることを知ってますか?という問いに、それって何ですか?というリアクションが返ってくるのが今の現状。若年層の方に情報を届けるにはどうすれば良いのかということに真剣に向き合わないと、この先どんなに良い商品を作っても意味がなくなってしまいます。
失敗を恐れずにどんどん新しいことに取り組んでいく必要がありますね。

ーー学生の皆さんは、どんな気づきがありましたか?

藤田さん:小さいころからバスに乗る習慣がなかったのですが、子供のころから乗っておけば抵抗感がなかっただろうなと思いました。
ただ、今回のような機会で、フリーパスとか意外とお得なんだと知り、バスに乗ってみようと思いました。
今後、選択肢の一つになったのでバスの移動も増えていきそうです。

柴田さん:普段は正直歩くことが多いので、バスに乗ることが少なかったんです。電動キックボードなど新しい交通手段が増えていく中、バスの価値を改めて考える機会になりました。
小さい頃バスによく乗ってた時は、地元の人とお話したり人との繋がりを持てた場所という記憶があります。
今回の機会を通して、絶やしてはいけない交通手段だなと思い、同世代に向けての周知をもっとしていこうと思いました。

奥村さん:プロジェクトの内容とは異なりますが、自身の記憶の中のバスよりも進化していることを知り、いかに自分の中でバスのイメージが止まってしまっているのか気づくことができました。
新しいお店ができると行ってみたくなるのと同じで、進化した最新のバスに乗ってみようかなという気持ちになりました。

春田さん:交通機関が抱えている課題に直に触れることができました。人口が減っていく中で、これまで以上にユーザーに情報を届けることが重要だと思います。
今後は、これまでは告知しなくても乗車してくれた人に対しても、バス会社側から積極的に売り出さないといけないので、情報発信の大切さを感じました。

神奈川大学 髙井ゼミのみなさま

ーー今回の取り組みを経て、今後どのようなことに挑戦していきたいですか?

石さん:企画乗車券や定期券のデジタル化を行って1年経過しました。
今後もRYDEのような便利なアプリを積極的に活用することで、会社のコスト削減や効率化を進めていきたいですし、ユーザーのみならず私たち提供側のオペレーションも慣れていかないといけないと改めて感じています。
また、今まで取り組んでないようなプロジェクトやアイデアをいただくことを通して、他社との差別化、常に新しい取り組みを積極的に行っていることをアピールして、挑戦を続ける会社としてファンを増やしていきたいです。
話題性も大切にしているので、今回のような若年層の皆さんとの取り組みも色々な形で継続し、発信もしていきたいと考えています。

東急バス、RYDE、神奈川大学 髙井ゼミの皆さん

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