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2つの「インターネット」とその壁。PIVOTチーフ・グローバルエディターとして力を入れたいこと

3月15日に始動した経済コンテンツアプリ「PIVOT」

創業したばかりのスタートアップです。

私はチーフ・グローバルエディターという肩書きを名乗っています。

なんだか偉そうですが、20年以上前の1998年ごろ、私が感じていた「ある違和感」が原点となっています。

■ 1998年に世界はつながったのか

1998年、それは私が大学に入学した年でした。

ウィンドウズ95が発売された後ということもあり、ある授業で大学の先生がやや興奮気味に話していたことを覚えています。

「これからインターネットが広まって、みなさんは世界とつながることになる」

本当かな、と私は思っていました。

この20年間でその違和感を自分なりに言語化してきたつもりなのですが、その前に少し統計をみてみましょう。

ドイツの市場・消費者分析企業の「Statista」によると、現在、世界のインターネット利用者の25.9%が英語を使っています。世界のネット利用者49億人のうち、最も使用されている言語であり、かなり大きな数字だということが分かります。

一方、日本語利用者はネットではわずか2.6%にすぎません。

大きな「英語のインターネット」と、さらに小さい「日本語のインターネット」の両者が別々に存在しているかのようです。

英語がトップの25.9%。日本の2.6%となっている(Statista)

■日本語と英語のネットをつなげる

日本で「ネットを使う」と言った場合、それは「日本語のインターネット」を意味することが多いです。そして日本語の使い手と、つながり過ぎるぐらいつながることになります。

私もそうですが、日本語のTwitterを追いかけて、日本語のFacebookで友人の近況報告を知り、ヤフー「ジャパン」で時事問題に触れることは毎日のルーティンです。

こうしたなか、私はPIVOTのチーフ・グローバルエディターとして、日本語のインターネットの壁を超えて、英語のインターネットと日本語のネットの2つを何とかつなげられないか、と思って仕事をしています。

2つのポイントを挙げてみます。

① 「翻訳文化」のDXをしたい


日本は翻訳大国だと言われています。

マイケル・サンデル氏やマルクス・ガブリエル氏、欧米の起業家など海外の有識者の本はいち早く翻訳されます。

ただそこには一定のタイムラグがありますし、何より、紙の本という形だけではなく、ネット上で英語でやりとりされている会話を見逃してしまうこともあります。

海外の起業家や学者は、紙の本の出版と並行して、デジタルコンテンツをどんどん出していきます。

Photo by Austin Distel on Unsplash

TwitterやTikTok、LinkedinなどSNSで発信したり、ポッドキャストを作ったり、ニューズレターで自分の考えを伝えたり。私も洋書を読むときは、著者のYouTubeを検索して動画を見ながら読書をします。そのほうが立体的に理解できるからです。

ここをうまくキャッチして、出版社の編集者の方とも連携しながら、PIVOTのユーザーにお伝えしたいと頑張っていきたいと思います。私が特に関心があるSDGsについても、世界の潮流を深く掘っていくつもりです。

今日(4月12日)始めた特集「世界の論点」では、世界の知性8人に話を聞いて、世界秩序の変化から、欧州や日本の防衛、ジェンダー平等と政治などについて、コンテンツ化しました。日本でまだ翻訳されていない本についても触れています。

② 日本から世界につながる

「ネットによって世界とつながる」と私に伝えた20年前の大学の先生は、半分は正しかったと思います。

世界で最も話されている言語は中国語の12.9億人ですが、英語を第二言語としている国を含めると、英語の話者は15億人になり、中国語を超えて実質1位になります。

そうした背景もあって、ネットの公用語は英語になっているのでしょう。

その膨大な情報がクリック一つで手に入るようになりました。

ただ、それは私たち日本語の使い手が、一方的に「英語のインターネット」につながっているだけに過ぎません。

逆に「英語のネットの住人」たちが、日本語のインターネットを訪ねて来ることは少ない。

英語で発信しないと、英語の「大きなインターネット」と本当の意味で接続できないかもしれません。

そうした問題意識もあり、PIVOTでは、本田圭佑さんと一緒にリアル投資ドキュメンタリー「ANGELS グローバルエディション」を製作しました。

日本の起業家が英語でプレゼンをして、本田さんを含む海外投資家の支援を受ける番組です。

本田さんとご一緒して、「英語ができないと世界で戦えない」という強い思いも感じましたし、日本のビジネスが世界に向けて飛び立つことができる、と確信しました。

(PIVOT武田雲撮影)

4月21日に第2弾を収録しますが、こうした番組は1つでも多く作っていきたいと思います。

その他にも、短い動画を作ってわかりやすく「世界の論点」を発信できないか、さまざまな実験を行っている最中なので、アイデアがあればぜひ教えてください。

■2100年のアフラシア

ところで、峯陽一『2100年の世界地図』(岩波新書)によると、2100年には、世界の人口の4割ずつが、アジアとアフリカで暮らす「アフラシア」の時代がやってくるそうです。

その時は欧米諸国が世界のリーダーではなくなっているのか。英語はどうなっているのか。

翻訳ツール「DeepL」の100倍すごいものが出てきているのでしょうか。

 Photo by James Wiseman on Unsplash

2100年のネットの環境は、1998年当時がそうであったように、私自身も正確に予測することは当然できません。

しかしながら、ロシアのウクライナ侵攻によって、窮地に追い込まれたゼレンスキー大統領が、自撮り動画をSNSで発信し、インターネットを通して国際世論の結束を高めたように、「大きなインターネット」はますます重要になってくるでしょう。

その膨大な海の中を動き回り、PIVOTのユーザーや、これからの世界を生きる世代にお役に立てるコンテンツを探っていきたいと思います。

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