資本から社会的共通資本へ変換するOS

請負業から生まれる新しい流れ

最近の気になるプロジェクトの中に前田建設工業が取り組んでいるICIという事業がある。それはいわゆる前田建設工業の技術研究所であるのだが、他のゼネコンと少し違った点としてICIの一部はまちに開かれ近隣の芸術家や美術系大学、地元自治体との連携や地域住民を取り込んでいくプログラムが企画されている。

このプログラムの興味深い点は、ICIの中の甚吉邸・W ANNEXの運営を前田建設工業の中から運営部隊を立ち上げ自社で実際に運営しているという点にある。

これが何を意味しているかというとゼネコン(建設請負業)という職種が、今日まで蓄積してきた資本の一部を社会や地域に対して開くことによって、この土地の価値向上を図っているということである。

ゼネコンという業種は本来、お施主さんから預かった資金(資本)から建物(資本)をつくりだし、またそれらが運営されることによって新たな資本を呼び込むというものだ。資本主義の流れの中では当然の流れであり、ここに疑いの目を向けることは今までなかったが、この前田建設工業の取り組みはゼネコンの活動に可能性を感じさせる。

今日の建築家教育の中にはポスト資本主義的な設計者の立ち振る舞いを模索する態度が確実に存在しており、それは消費の海の中で建物(建築ではない)をつくるゼネコンの仕事というものは含まれない。

一方で建築学生の就職活動の多くはゼネコンや組織設計事務所といった安定的とされる会社への流出が無意識的に行われ、建築家教育の現場とはかけ離れた実態がある。

例に漏れず私もその一部であるのだが、実際には資本主義の終焉を予感しながら、このような組織の中で働くことを選択していくのである。

このような実態の中でどのように建築を考えていくべきか。前田建設工業のプロジェクトから一つの可能性を考えてみる。

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