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(説明多めの)定植作業をした話

こんにちは。トクイテンの豊吉です。9月6日にミニトマトの苗の定植作業をしたのですが、定植作業を知らない方に説明多めで紹介します。

定植準備のできた農場、畝が立てられ、マルチング(ビニール)が貼られている

まず苗がセルトレイという容器で育った状態からスタートします。定植に適した苗の大きさ、季節があり、定植する日に人も集めておかないといけないので準備がまず結構大変です。今回も苗の成長具合を見ながら候補日を絞っていき1週間ぐらい前に確定をさせました。

苗以外にも土づくりを1ヶ月かけて行い土壌の良い微生物を増やしておき、畝を立てて、防草シートやマルチング(ビニール)を被せます。これらの被覆資材が白いのはかっこいいからではなく地面からの光を反射させ光合成を増やすためです。

黒い容器がセルトレイ。卵の容器のような感じ

そもそもですが定植とは何か説明します。定植は何度かやることのある植え替え作業のうち、収穫まで育てる最後の植え替えのことを言います。

しかし種を直接畑に植えても栽培はできます。ではなぜ手間をかけて別の容器で発芽させて、植え替えをするのかというと次のような理由があります

  1. 発芽率の向上:セルトレイやポットでの育苗は、発芽環境を一定に保つことができるため、発芽率が向上します。直播の場合、土の状態や天候によって発芽率が不安定になることがあります。鳥などに種を食べられる場合もあります。

  2. 病害虫のリスク低減:育苗期間中に病害虫から苗を守ることが容易です。特に、害虫の多い場所や病気の発生が心配される場合、セルトレイやポットでの育苗が有効です。

  3. 生育の均一性:セルトレイやポットで均一に育てられた苗は、生育が均一になり、収穫時期や品質も均一になります。

こういった理由によりわざわざ別の容器で栽培した方が効率が良いのです。他にも水やりや管理が簡単ということもありますし、冬場であれば加温室に入れたりすることもあります。

特に大事なのは生育の均一性です。均一でないと苗が育ったあと「今日はこの列の作業を終わらせよう」というような作業ができなくなり栽培管理の効率が下がります。

定植作業の様子

定植作業はセルトレイから苗をつまみ出して、土(畑の畝)に植え変えるだけの単純な作業です。しかし、注意すべき点がいくつもあります。一番大事なのは苗を活着させることです。活着というのは苗が畝の土にちゃんと根を張ることをいいます。これを甘くみていた昨年夏はかなりの苗を無駄にしてしまいました。上からの押さえが足りずにセルトレイの土と苗の土の間に隙間が出来ていたのです。きちんと活着させるには強すぎず弱すぎない力でセルトレイの土と畝の土を密着させる必要があります。密着しないと苗が土中の水を吸えずにそのまま枯れてしまいます。

さらに活着をうまくさせるには、定植前に畝の水分を乾きすぎず、濡れすぎてない状態にしておくという芸も必要です。乾きすぎていると後から水をやってもうまく水が簡単には全体に広がりません。逆に濡れすぎていると作業がとてもやりにくいです。

ちょうどよい水分になるように前日から調整する

この辺りの水分調整は経験ある栽培メンバーが微調整しながら行います。また、水分調整はセルトレイの土でも行っています。これも乾きすぎ、濡れすぎだとうまく苗が取り出せず、根を傷つけたりするからです。

そして定植では苗を選別することも同時にやります。セルトレイから苗を取り出して土に植えていきますが、この時あまり良くない苗は使わないようにします。今後成長する見込みがないもの(折れてる・成長点がない)や、極端に成長が悪いものなどです。

また今回は苗の子葉(双葉)の向きを揃えるというということも試しました。これによって将来のトマトの向きなどもある程度揃えられるという仮説です。芽が出た後、自由気ままな方向に育っているわけではないのですね。

他にも植える深さ、角度などもいろんな流派があります。例えば苗を寝かせて植えて、茎をかなり土に埋める人もいます。そうするとトマトは埋まった茎から根を出すので、初期の根張りが良くなるということです。

定植が終わったらたっぷりと水をやり、翌日からは枯れてる苗や定植後に虫に喰われた苗がないかチェックし、必要に応じて予備の苗と入れ替えます。

なお今回の苗は育苗(いくびょう)業者に依頼をして育ててもらいました。そんな業者があるのかと思われるかもしれませんが、こういう業者は自動種まき機、無菌室、加温室を持っていたり、接木の機械や技術を持っています。プロなので指定した日に指定した健康な苗を指定した大きさで育ててくれますが、天候に左右される部分もあり、納品前はこまめに連絡を取り合って納品日を調整します。前回は輸送中に苗がひっくり返り、迅速に予備苗を送っていただくということもありました。ちなみに我々は有機JASの基準に沿って栽培をしていますので、苗も有機JAS対応のところに依頼をしています。

昨日の定植では前作でもたくさん作ったサンタスティの他に、数種類の新しい品種を植えました。また企業との研究案件のような実験苗もあったりします。また栽培方法もロボットに合わせて変えたものも始めました。

収穫は11月ごろから始まる予定です。楽しみです。

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