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日のすきま セレクト集(2001年3月~2002年4月)■ 阿武隈以前(船橋時代)■
2001/03/05(月) ヒカルと古事記
宇多田の新曲を仕事中のカーラジオで聴いてなぜだか古事記のことを思い感極まっちまった。よくよく感じてみたらみんな近代的閉塞じゃねえか。売れないことがなぜ悪い。無関係でいることの凶暴さ。春だというのに自由な呼気吐気できない。もっと客観的にみる訓練を。生活の実用をやるにつけ言葉のメタメタ度合いが減ってきちまった。いちどおれのなかの絡み枝を全部抜き取り、
日のすきま セレクト集(2002年5月~2003年10月)
2002/05/15 (水) 高原の鯉
阿武隈と東京湾岸を何度か往復するうちに、春起こしされた田んぼに水が張られ、苗が植えられ、細い茎葉が風に揺れるようになった。
しかしここ、標高700mの開拓村は、まだこれから水を張るところだ。
13日、湾岸のアパートを引き払い、漸(ようや)くこの高原の借家に居を据えた。
三年間人が棲んでいなかったので、床板と畳は腐っていた。
壁には黴がはびこって
日のすきまセレクト集(2006年8月~2007年8月)
2006年 08月 23日
■ いつか
医院の芝刈をしていると、吉増剛造に似た院長に、ノラ猫の屍体を埋めてくれと頼まれた。
行ってみるとサザンカの生垣の下に、黒白の大きな猫が横たわっていた。
この間までこの辺りを睥睨していたボス猫だ。
目の辺りに蟻がたかっていた。
持ち上げるとまだ死後硬直している。
庭の片隅に穴を掘って埋めた。
見開いた目は閉じることもなく土をかけられた。
猫
日のすきま セレクト集(2007年12月~2008年10月)
2007年 12月 15日
■ 異様なもの
高台の庭。
松から降りて一服すると、遠く海が見えた。
海に陽があたり、冬田にも陽が降りていた。
大きな鳥がゆっくり横切ってゆく。
錆た身を立てて、また脚立に乗る。
松葉に風が鳴る。
夜、犬といつものグランドを走ると星が異様に見えた。
初めて夜の星々を畏れた。
この宇宙は異様だ。
薄い皮膜のなかに多数の次元を折り畳み、無言で
日のすきま セレクト集(2009年2月~2013年6月)
■ 祈り 2009.02.24
今年50になる。
ずいぶんアタマが悪くなった。
なのに「それ」はまだある。
日々の起き伏しを蝕んで、
虚空に投げ出された気になる。
仕事が暇なので毎日、薪割りをしている。
鉄斧で「それ」を真芯から叩き割る。
木喰い虫がこぼれて、鳥たちが啄みにくる。
鳥たちは必死だ。
「それ」を何と名付けようと、
私は「それ」の現れに過ぎぬのだ