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剣城かえで
2024年1月27日 22:07
もしも世界から奇跡が消えたら、最初に何がしたいだろうか。 肌寒い夜の下で、私は妹の顔を見ていた。 私がそう尋ねると、妹は私の肩に肩を寄せた。 妹が、奇跡の類いを信じてはいないことを、私はよく知っていた。 私は漠然と杳(とお)くにいる尊い何かを信じている。この子はそんな私に寛容なだけで、何かを信じてはいなかった。 私は奇跡なんて、信じていない。 でも、奇跡は、世界からなくならない、きっ
2023年9月28日 20:56
無心された慈しみという、動かないままの私がいた。 背中から羽と血が出ていた。家に帰りたいやさしい子の背中をした私の頬に、涙の線が渇いていた。 天使の羽を食べて醜い奇形に姿を変えた懸想男たちの死が、累々としていた。牙から逃れたばかりの私に、灼けつく悋気(りんき)を煙らせながら。私の骨と肌(かお)を食べた者たちは酷い有様。その地獄を天使の所為にする所業に、うんざりしていた。天使を不治の病の