見出し画像

新垣誇万の憂鬱

飲食店の朝は早い————————————————————

 

15時にお店に現れた新垣 誇万(にいがき ほこりマン)は、斬新な居酒屋「アザラシくん」の店長兼雑貨である。

画像1

突如新大久保の上空に現れた、フライパンの持ち手みたいな空間の西館5Fにあるアザラシくんは「大人の余裕」がテーマとなっている。

「やっぱりせかせかした大人って、それだけでスタイリッシュじゃなくなってしまっている。この店にいる時ぐらいはせめて、と思います」

と語る新垣。

メニューもそのテーマが前提として作られているため、中には共感できず腹を立てる人も少なくない。

 

例えば「大人の余裕パスタ(880円)」は基本的に明らかに食いかけのものが出される。

「余裕のある大人はこれを食べるのではなく、自分風にアレンジし、新たな一品として作り変えて、人に振る舞うだろう」という予想のもと作られたメニューなので、

席にはコンロや調味料、野菜などアレンジに使えそうなものが並べられている。

また、余裕のある大人はローストビーフを食いがちなので、当然ローストビーフも常備されている。

店員もいつでも振る舞いの対象になれるよう、白ワインを片手に待機している。

画像2

しかし今のところ店側が言う「余裕のある大人」にはまだ出会えていないようで、お客の100%が激怒し帰ってしまうのだとか。

その他にも「大人の余裕パフェ」は同じ内容の商品が100円と800円で売られているという斬新な商品。

「余裕のある大人は800円を買うだろう」という意味が込められているが、今のところ800円のものを選ぶものはいないという。原価が300円なので、売れれば売れるほど損してしまい、新垣は頭を抱えていた。


そんな中、救世主とも言える男が現れた。

鈍引瓦 平平(どんびきがわら ぺいぺい)である。

画像5

平平は業績不振に陥った飲食店を、どんな店でも普通の定食屋ぐらいの売り上げに改善する才能を持っている。

さらに平平は「諦めること」を知らない。

「諦める、を考える時間すら、無駄にしたくない」

これが平平の口癖である。

経済雑誌「小雨(こさめ)パンツ」の「今注目の経営者2008」でも堂々の8位にランクインしており、引っ張りシャコなのは言うまでもない。

画像4

そんな平平は店の外見を見た瞬間、核心を突く一言を発した。

 

「この店は、無理だ」

 

年内いっぱいである————————

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?