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千葉氏著書「肩関節障害の評価と理学療法」より

初めに


肩関節周囲への痛み・症状・障害を持つ患者は多く、その病態は様々である。

患者が持つ「病態」が的確に解ってなければ、それに対する治療やリハビリの組み立て方など、症状を改善していくことにつながらない。

ここでは、著者の千葉氏が肩関節疾患に対する治療方針の決定までの

評価→治療対象部位の決定までの流れを肩関節複合体の特徴を踏まえながら、まとめていく。


また、2024年9月21・22日に千葉先生をお招きして講演会を予定しています。まだお申込み可能なので、是非とも生の千葉先生のお話をお聞きください!!

DAY1【出版記念講演】肩複合体の評価〜運動連鎖を再考する〜
日時:9/21(土) 14:00 -18:00

場所:明治東洋医学院専門学校  吹田市西御旅町7−53
お申し込み:https://rusk-chiba20240921.peatix.com/view

DAY2【出版記念講演】肩複合体の運動療法〜運動学的アプローチ〜
日時:9/22(日) 10:00 -15:00(1時間休憩あり)

場所:明治東洋医学院専門学校  吹田市西御旅町7−53
https://rusk-chiba20240922.peatix.com/view


◆肩関節の運動に必要な全身の機能

肩関節の運動は、

「解剖学的関節」である肩甲上腕関節, 肩鎖関節, 胸鎖関節と、

「機能的関節」である肩甲胸郭関節、第2肩関節

などを含む「肩関節複合体」によって主に動かされ、さらに

体幹・胸郭・下肢などが共同して働き、遂行される。

そのため, 関節は複数の関節が代償・補償し合っているので、一部の関節に多少の機能障害が存在しても目的の運動を遂行することが可能である。(一般的にこれを代償運動と読んでいる)

しかし、代償や補償による運動集中が起こり、一部の関節に負担が集中し、障害を招いてしまうことがある。


◆肩関節運動のピラミッド構造

千葉氏は、肩関節の運動に関わる肩関節複合体・体幹・下肢の「機能的なつながり」について、「階層構造」になっていると唱えている。
つまり、 肩関節運動に関わる各関節は、各関節の下の層の関節の機能がしっかりしていなければ、その上に当たる関節は十分に肩関節の機能を発揮することができない。

例えば、 腱板の力を発揮するするためには、「肩甲骨が胸郭上に安定していること」が需要である。(腱板の4つの筋は肩甲骨から起始する)

機能な肩関節である、肩甲胸郭関節は可動性に富む代わりに、安定性にかけるため、「肩甲骨が胸郭上に安定している」という条件が崩れると、腱板の本来の機能が欠ける可能性が高くなる。

また、 肩甲骨周囲筋は全て胸郭や脊柱に起始部を持つため、体幹が安定していなければ肩甲骨を安定させることができず、起始を肩甲骨に持つ筋肉の力を発揮することができない、またはその力を発揮しにくい。

さらに、 体幹・胸郭は骨盤を介して下肢の上に存在するので、下肢機能がしっかりしていなければ、 体幹・胸郭もその機能を十分に発揮することができないと考えられる。 (これは立位に多い傾向)

総じて、肩関節を正常に動かすと言うことは、

“肩甲上腕<肩甲骨<脊柱<体幹<胸郭<骨盤<下肢”

などの「土台」がしっかりとしていて、その上に載っている関節が安定して機能を発揮すると言うことになる。

つまり、我々が普段「肩関節」を見る上で、メインとして診ている“肩甲上腕関節以外の機能障害”が肩関節疾患を引き起こしている「原因」となりうるってこと。

※肩の痛みの原因は、意外にも肩にないかも!って話!!!


◆肩の評価

肩に緊張を感じる場合がほとんどであるため、痛みや筋の影響も考慮しながら評価を進める必要がある。これらの可動域が十分獲得されていながら最終域までの挙上運動が遂行できない場合は、肩甲上腕関節以外の制限因子が考えられる


1)徒手抵抗による疼痛誘発テスト (腱板の機能評価)

肩関節ニュートラルポジションにて等尺性抵抗運動を行わせた時の「疼痛の有無・場所・筋力・肩甲骨の反応」を診る検査を行う。

① 痛み

運動は基本的に外転・内旋・外旋の3種類。腱板機能や肩甲胸郭関節機能を評価する。筋収縮を行わせた肢位を問わず、収縮させた筋に痛みを感じる場合は筋自体の収縮による痛み (腱板損傷) である。

しかし、肢位を変えることにより痛みが変化したり、収縮させた筋とは別の部位に痛みが現れる場合は、収縮した筋自体の痛みではなく機能的な痛み (腱板機能不全) と判断することができる。

(←これめちゃわかりやすい指標だよね!!)


② 肩甲骨の反応

外転・外旋・内旋の等尺性運動を行わせた際に肩甲骨の「下方回旋・winging」が確認された場合、体表から肩甲骨を徒手的に固定し、もう一度等尺性運動を行う。 肩甲骨を固定することにより、疼痛の軽減や、明らかな筋力の向上が認められた場合は、肩甲胸郭関節機能不全を疑う。(さっきのピラミッド構造理論に基づく)


◆検査方法

(※肩関節が痛くなるのは、ほぼこの4ヶ所)

① 肩鎖関節に対するストレステスト

肩関節に限局した痛みが誘発される.

② 第2肩関節に対するストレステスト (impingement sign)

肩峰下や前方に痛みが誘発される。

③ 関節包内に対するストレステスト (modified crank test)

肩の内側や後方に痛みが誘発される。

④ 結節間溝に対するストレステスト

前方に痛みが誘発される。

・肩鎖関節に対するストレステストと第2肩関節に対するストレステストは、テスト動作が同じなものがあるが、痛みが誘発される場所に明確な違いがある。

・患者さんは一様に「肩が痛い」となるが、 的確な治療のための評価を行うためには、痛みが「どの部分から発する痛み」なのかを「正しく評価」する必要がある。

・テストと同じ疼痛を、日常感じている症状である場合、テストで再現された状況と同じ状況が日常で繰り返されている可能性が高い。

・疼痛誘発テストは「痛みが誘発されたからそのテストが陽性」 と判断するのではなく、テスト動作により「痛みを感じる場所」を確実に突き止めることが重要である。

大事なので同じことを2回言います。

肩鎖関節に対するストレステストと第2肩関節に対するストレステストの一部では

「テスト動作は同じ」であるが、「痛みの誘発される場所」に違いがある。

↑↑※ここがポイント!!!!


◆機能評価

「なぜ患部に負担がかかり、そのような病態を作ってしまったのか?」。

その理由について考えることで、機能的な低下や不全を見ることができる。

肩関節の運動に関わる肩関節複合体およ体幹、下肢の機能的なつながりは、ピラミッド構造をなしている。 よって肩関節疾患の機能的な評価もピラミッド階層にわけて考える必要がある


◆肩甲上腕関節機能低下を招く要因に対する評価

肩甲上腕関節の可動域評価

肩甲上腕関節の可動域の制限因子は主に関節包であるといわれている。

関節包は肩甲骨面上、肩甲上腕関節 20~30°挙上、 内外旋中間位で全ての部位の緊張状態が均等になる。

この肢位を基準となる肢位とすると、この肢位から

“内転すると関節包の上方”、 “挙上すると下方”

“内旋および水平内転では後方”、“外旋および水平外転は前方”

が緊張し、可動域の制限因子となる。

このような特徴を考慮しながら、 基準となる肢位および下垂位・90°外転位・ 90°屈曲位での回旋角度の変化を比較することで 大まかに肩甲上腕関節のどの部分の柔軟性が低下しているかを探ることができる。

しかし、臨床では関節包の緊張を感じる前に筋の緊張を感じることがほとんどであるため、(みなさんは関節包の硬さはどう判断してはりますか??)筋肉の影響を考慮しながらの評価が必要である。
これらのROMが十分確保されていながら最終域までの挙上動作が遂行できない場合は肩甲上腕関節以外の制限因子が考えられる。


◆肩甲胸郭関節機能低下を招く要因に対する評価

 肩甲胸郭関節の可動域評価

信原1)は、 肩甲骨面上での挙上動作で、肩甲骨は前額面では上方回旋し、矢状面では後傾、水平面では挙上0~90°までは外転し、 90°以降は内転すると報告している。

また、三浦ら2)は, 屈曲と外転では肩甲骨の運動に違いが認められたことを報告している。

「屈曲」では屈曲120°までは肩甲棘内側端が脊柱から離れ、120°以降では脊柱に接近していたのに対し、

「外転」では肩甲棘内側端は初期から脊柱に接近する方向に移動し, 90°以降は徐々に脊柱から離れると報告している。

以上のことから考えると

肩関節屈曲の場合、 屈曲角度90°以下の肢位における肩甲骨の外転と上方回旋の可動性, 屈曲角度90°以上では挙上・上方回旋の可動性、最終域での下制・内転の可動性をそれぞれ確認することができる。
※千葉先生が大結節の前方路と言っているやつ

肩関節外転の場合、外転角度90°以下の肢位における肩甲骨内転の可動性、外転角度90°以上での肩甲骨の挙上・上方回旋の可動性、外転角度120°以上 (外転最終域) での肩甲骨の下制・内転の可動性を確認することができる
※千葉先生が大結節の後外側路と言っているやつ


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