「建築家とアッシリア皇帝」(2022年12月4日 シアタートラム)
先日部屋を片付けていたところ、大学の卒業論文が出て来ました。
今はファイルでの提出になるのではないかと思いますが、当時は原稿用紙に手書きして綴じた物を教授に見ていただき、卒業時には返却されるシステムでした。
正直昔の稚拙すぎる論文を見ることすら恐ろしかったのですが、捨ててしまうとどこにも無くなってしまうのでそれも出来ずにそのままにしてあります。
それからしばらくしてその卒論のテーマにしていたフランスの戯曲家フェルナンド・アラバールの「建築家とアッシリア皇帝」が上演されるということを知り、奇遇に感じて観に行くことにしました。
とは言え、かなりの人気公演のようであっという間に売り切れてしまい、一度は諦めかけたのですが、追加販売で行けることになりました。
学生時代は不条理劇的なものに興味があって掘り下げてみたいと思っていました。
また自分は考え方や能力に偏りがあって、そういった物事の方が理解できるのでは(というより他の人が興味を持たない分多少なりともアドバンテージが取れるのでは)、と思っていた時期もあります。
実際は全くそんなことはなくて、わからないものはわからないままで終わったし、逆に少しずつ確実に積み上げていくことや優しさとどちらかというと「わかりやすい」ものに魅力を感じるようになっていきました。
なので、今回観に行っても「ちゃんとついていけるかな?」と少し心配だったのですが、結論からいうととても楽しむことが出来ました。
シアタートラムには初めて行きました。
三軒茶屋の駅から直結のわかりやすい場所で、客席の傾斜が非常に急角度になっている私の大好きなタイプの劇場です。
開演前に普段よく行くお笑いの劇場みたいな感じで緞帳が降りていると思って写真を撮りかけたらご注意を受けました。
お芝居が始まった時に緞帳だと思っていたのは紗幕に舞台装置と同じようか絵が描かれていたことがわかり、これは確かに写真は撮れないはずだと思いました。
劇の内容は無人島に漂着した男(皇帝・岡本健一さん)ともともとその島にいる男(建築家・成河さん)の二人が繰り広げる会話劇(アクションあり)です。
さすが卒論にしただけあって事前に読み返さなくても大まかなところは覚えていましたが、舞台で観るのは初めてでした。
お二人の身体性の高さや現代に程よくアレンジした脚本、そして不条理感や「衝撃的」と言われているテーマを超えて二人の不思議な友情が随所に伝わってきたのがとても素敵でした。
途中休憩15分を挟んで約3時間、それぞれ一人だけの芝居が長時間続くシーンもあり、昼夜2回の公演の日もあることを知って驚きました。
カーテンコールの時の岡本さん、成河さんの笑顔と肩を組んで紗幕の後ろに去って行く後ろ姿を見て、本当に来て良かったと思いました。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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