ばばあもどきの日常と非日常 その18「仕事のこと③」

こんにちは。
“ばばあもどき”のルル山ルル子(ルル)です。
女の容れ物(身体)に男の魂が宿っています。
「トランスジェンダー」とか「FTM」とかの呼称がどうもしっくり来ず、
普段は「見た目は女 中身はおっさん」と自己紹介をしています。

楽しかった日々の終わり


前回、印刷関係の会社で働いていた時の話を書きました。
和気藹々とした職場でとても楽しくてやりがいのある仕事をしていましたが、そんな日々に終わりが訪れます。

親会社が本社ビルを新築したことに伴って、私たちの職場が「子会社」から「本社の一部門」として合併されたのです。
元の職場は小汚いビルの2階にある小さな作業場でしたが、新しい職場は大きくて綺麗なビルの高層階にありました。
床もふかふかの絨毯に変わりました。
勿論エレベーターも付いています。
だけど、合併が決まってから元の職場にいた私以外の6人の顔はずっと憂鬱そうでした。
「本社に合併されたら碌なことがない」「本社の奴らにいいように使われるだけだ」と。
新人の私だけが「本社の奴ら」がどんな人たちなのかを知らなかったのです。

私はまだ入って日が浅かったのでそのまま本社の人たちの補佐に付けられましたが、
元の部署で一緒だった人たちは
長年現場一筋だった人が営業に回されたり経理の補佐のような仕事に就かされたりして、
半年も経たないうちにみんな辞めていってしまいました。

「女扱い」

一方 私は、本社の人たちと働くようになって大きく変わったことがありました。
前にいた部署で男性6人と働いていた時は「野郎7人の和気藹々とした職場」みたいな雰囲気だったと前回書きましたが、
新しい部署では男性6人(前の部署の6人とは全く別の6人)と働く中で、私は完全に「女扱い」をされました。
正確に言うと、初めは男性5人と働いていて、あとからもう1人、別の部署から引っ張られて来て、私を含めて7人になったのです。

「女扱い」は人によって様々です。
あからさまに「月々〇〇万円で面倒見るから会社を辞めて俺の専属にならないか?」と言ってくるセクハラ部長、
「女だからって仕事は厳しくやるからな」と厳しい態度を取りつつ部長のセクハラから守ってくれる課長、
ご飯を食べに行くと「ルル山ちゃんは女の子だから」といくら私も払いますと言っても一銭も出させてくれない先輩、
彼女や奥さんのことについて相談してくる男の人たち……

仕事の内容も完全に部長や課長の作業の下準備や後処理のみになり、自分のセンスや裁量でやれることが減りました。
(モザイクを掛けることもなくなりました)

そんな折、先ほど書いたように、部長と課長の熱烈なオファーにより、別の部署からもう1人の男性が引き抜かれて来ました。
「Aさん」です。
私のAさんに対する第一印象は

「すげぇ苗字の人間がいるもんだ」

でした。
そして、Aさんと働き始めて半月ほどした時、私は何故か突然、好きでも何でもないAさんのことを「私はこの人と結婚するんだなぁ」と思いました。
何でそんなことを思ったのか未だに分かりません。
好きでも何でもなかったのに。
そして私は中身が男なのに。

ですがその後あれこれあって会社には内緒でAさんと付き合うようになり、
一方で部長のセクハラは激化し、
仕事のやり甲斐もイマイチ感じられなくなり、
本当に予感の通りAさんと結婚するために会社を辞めました。


そしてその8ヶ月後、私も「すげぇ苗字の人間」となりました。

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