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百田尚樹のすゝめ ~海賊とよばれた男~

前回の「百田尚樹のすゝめ」の記事では、「永遠のゼロ」について記載した。今回は「海賊とよばれた男」について。
小説と実写映画を両方見たうえでの見解を書いていく。

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・「海賊とよばれた男」について
簡単に言うと、石油会社の社長の話だ。モデルとなったのは出光佐三氏。現在の出光興産の創業者だ。ガソリンスタンドの「IDEMITSU」が有名。出光氏は国岡鐵造で、出光興産は国岡商店となっている。
ほとんど史実に忠実に書かれており、ノンフィクションに近い小説だ。

時代設定は明治後期~昭和後期までと長い。なぜなら、モデルの出光氏が96歳まで生きており長生きだったから。生涯が長く明治と昭和をまたがるため、日本史や世界史の復習にもなる。だが、問題点がある。少し内容が固く難しくもある。
小説ではあるが、伝記に近いので史実が淡々と書かれているだけと感じる人もいるだろう。だが、国岡や国岡商店の人間模様も描かれているので、小説らしさも感じられる。

もし「永遠のゼロ」を読んで難解だなぁと思うなら、この本を読破するのは難しい。たぶん挫折すると思う。というのも、「永遠のゼロ」は現代パートがあるので多少のクッションがある。それに対し、「海賊とよばれた男」は現代パートはない。どうしても読みたいなら、明治以降から昭和について日本史の教科書を読み直した方が賢明だし、楽しく読めると思う。
ただ、かく言う私も「日章丸事件」は知らなかったし、その他にも知らないことが多々あった。「小説の内容を楽しみながら、歴史を学ぶ」というスタンスで良いと思う。言い過ぎたが、そんなに固くならず楽しんで読んで欲しい。

ここからは映画版について。「永遠のゼロ」と同じで主演は岡田准一氏だ。国岡は96歳まで生きたので、岡田氏はかなり幅広い年齢を1人で演じた。
「さすが岡田准一だな」と感じた。終戦の時の鐵造は60歳であり、そこから映画は始まる。特殊メイクをしているせいもあるが、存在感が凄かった。声も年寄り特有の発声にしていて、普段の声とは変えていた。「役者魂」を非常に感じた。
時系列を追うと、「永遠のゼロ」が2013年12月に公開され、「海賊とよばれた男」は2016年12月に公開された。
その間に2014年の1年間は大河ドラマ「黒田官兵衛」で主演をしていた。黒田官兵衛も長生きだった。1人の人物の若い時からご年配になるまでを演じていたので、その経験が今作でも活かされたのだろう。

その他のキャストも非常に豪華だ。今や国民的女優の綾瀬はるか氏が1人目の妻役を演じた。また、部下には「北の国から」や「ALWAYS」シリーズの吉岡秀隆氏、さらに大河ドラマの「西郷どん」の主戦の鈴木亮平氏を起用した。
個人的に鈴木氏は「西郷どん」の熱演以来、好きな俳優の1人である。
役づくりのために減量や増量をすることで、ストイックな俳優としても知られている。今作では国岡商店の社員兼通訳を演じた。鈴木氏は語学が堪能としても有名だが、英語が非常に流暢で感心した。すごい役者さんだと改めて感じた。

役者陣のキャステイングや演技や演出はほぼパーフェクトだと感じた。
だが、「永遠のゼロ」を☆☆☆☆☆だとすると、「海賊とよばれた男」は☆☆☆☆とする。
☆が1つ欠けた点は何かと言うと、「小説のダイジェストになってしまっている点」だ。予算とか役者や関係者のスケジュールもあったとは思うが、前編と後編で分けても良かったと思う。小説の文庫本は、上下の2巻で各400ページ程度となっている。文量が多く話が長いだけでなく、時代背景も幅広い。悪く言うと、小説の良いとこを何か所か抜粋しただけ感が強い。

私は小説⇒実写映画 の順だったが、実写映画のみだと分かりづらいのかなとも感じる。映画を見る場合、原作を読んでから映画を見る人が大半ではないだろう。「永遠のゼロ」は原作を読まないでも、充分に楽しめる展開になっていたと思う。そこが「海賊とよばれた男」が大ヒットにならなかった要因かもしれない。

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2回に分けて、百田氏の小説について記載した。如何であっただろうか。
百田氏を嫌厭する人が多いと感じるので、今回は取り上げた。

世間の評判で、あまり良くない人、変わっている人というイメージが先行しており百田氏の書籍は読まないでいた。「食わず嫌い」ならぬ「読まず嫌い」であった。「永遠のゼロ」を読み非常に感心し、百田氏の他の小説作品や新書やビジネス書も読むようになった。
実際に自分の目で確かめないと分からないと感じた。世間の評判が必ずしもそうではないと感じた。

この記事を見て百田氏の書籍を読んだとして、「自分には向いてない」という方もいるだろう。それはそれで悪い事ではないし、人間好き嫌いがあって当然だ。ただ、私は百田氏の小説が良いなと思った。それだけだ。

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