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The Making of Rurouni Kenshin―るろうに剣心のすべて 第八章:VFX 小坂一順さん

“前作を超える”という強い信念の元、映画『るろうに剣心』シリーズを進化させ続けた日本を代表するプロフェッショナルたち。映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の撮影舞台裏に迫る、限界知らずのチーム「るろうに剣心」スタッフの皆さんのインタビュー連載企画!

第八章は、『るろうに剣心』シリーズ全作品に携わった、VFXスーパーバイザーの小坂一順さんにお話を伺いました。

さらに現在Podcastでは製作陣が撮影の裏側を語りつくす「映画 るろうに剣心最終章 レジェンドヒストリー」を配信中👏
大友啓史監督と、本日ご紹介する小坂一順さん、DIプロデュース/カラーグレーディングを担当した齋藤精二さんによるここでしか聞けない制作裏話も合わせてお楽しみください!
『るろうに剣心』におけるVFXスーパーバイザーの仕事についても教えていただいております。

■縁が乗ってきた船は、どこに映ってるでしょう?

ほとんどのスタッフが、1作目からかかわっています。
ただ、毎回思うことは「呼んでいただくに値する仕事をしなければいけない」ということ。

1作目で、忘れられない出来事がありました。あるシーンで、実際の風景より大きく見せるロングショットがありました。しかし、監督の求めるクオリティには達しておらず、そのシーン自体がなくなりました。これは、自分のVFX人生の中でも1、2を争うくらい悔しい想いです。なので正直、2、3作目ではもう呼んでもらえない、と思っていました。ところが監督に呼んでいただいた。
もちろん、どの作品も真剣に取り組んでいますが、このときは、とりわけ真剣になりました。そして、他の部署のスタッフのみなさんも全員、異常なテンションで挑んでいました。鬼気迫る、というか。真剣で当たり前、という状況でした。

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その結果、特に2作目の船(煉獄)は納得できるものになりましたし、3作目の炎のCGはうまく出来たと自分では思っています。ただ、1作目のトラウマなんでしょうか。引きの画は作れていませんでした。
だから、今回の『最終章』での大きなチャレンジのひとつが、町の引き画を作ることでした。

4作目『The Final』の冒頭、横浜港の引き画は力が入りました。CGでいちばん注力したのは、あのシーンと言っても過言ではありません。アクションに関するCGは、これまでの3作で培った技術を存分に活かしました。船といえば、3作目で、船が出港するシーンはかれこれ1年半くらいやっていましたね。今回の横浜港も、1年以上はやっています。
CGの制作は、まずは資料集めから始めます。当時の横浜港の写真を基に、リアルな横浜港の地図に建物を配置していきます。リアルなままやると、映画の冒頭場面としては殺風景になってしまいます。そこで操車場を作るなどして、横浜港から見える景色を、少し脚色します。海の向こうには、外国人が住む居留地を作ってもいます。
船も効果的に配置して、映画ならではのレイアウトにしています。実は、一隻停まっている大きな船は、中国からやってきた雪代縁が乗ってきた船のつもりです。船上の縁は描けなかったので、せめて、という想いです。僕の個人的な想い……誰か、気づいてくれるとよいのですが。

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大友組のいいところは、すごく自由にやらせてくださること。実は、この横浜港のあれやこれも、監督にまったく相談せずにやっています。ですのでこの話も、もし監督が知ったら、「え? そうなの??」と驚くかもしれません(笑)それくらい自由にできています。信頼関係があるからこその楽しさもあります。

きっと、監督はやろうと思えば、細かく指示も出せるはずです。でも、どこかで、専門のスタッフが「自分が考えていることを超えてほしい」と思っているのではないのかと。スタッフはみんな、「監督の想像を超えなきゃ」という気持ちでやっていると思います。

■崩れる瓦の数々も、CGで表現できるようになった

日本には、撮影に適した広いところがほとんどなく、狭い場所で、手を変え、品を変え、撮っているのが現状。VFXで、そこを打ち破りたいなと思っています。
たとえば、ひとつの道があったら、その向こう側にも道があるように、映像を作ります。そうすることで広がりが生まれます。
多くの時代劇は暗闇を利用しているというのもあり、スケール感をなかなか出すのが難しいというのが現状です。そんな中僕は、誤魔化さずに、通りも筋もあって、そこにあかりが灯って、人も通っている、そんなCGにすることを心がけました
爆発の場面では、街並みはもちろん、そこで逃げている人も実は一部CGです。モーションキャプチャーで作り出しています。これまでの爆発シーンは、爆発の素材を合成して終わり、でしたが、今回はもっと丁寧にやりたかった。爆発したら、屋根の瓦も飛ぶし、木も飛ぶ。それをCGで描けるようになったという進化はありますね。剣心が屋根の上で走り、ガトリングガンを避ける場面も、これまでのようにCGの煙を足して終わりにせず、瓦が崩れていく様もCGで表現することでスケール感を増しています。そこまで進化したのだなと。これも監督から言われたことではなく、自分たちで考えたことです。

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技術もアイデアも向上したのではないでしょうか。かつては、監督から出された注文に応えるのが精一杯だったのが、作品を重ねるごとに我々がこうしたらより良くなるんじゃないかと思うことを付け足す余裕が生まれるようになりました。たとえば、横浜駅のホーム。「縁が暴れてパニック状況になった後は、逃げた人のカバンが転がっていたほうがリアルなのでは?」CGのスタッフから、そのような声もあがり、カバンを付け足したりしています。

代表作はなんですか? と訊かれたら、『るろうに剣心』と答え続けてきました。それはこれからも変わりません。今回、10年前のトラウマが嘘のように、怖いくらいスムーズに、ひっかかりなく、すべてが進んでいきました。監督やアクション監督の谷垣さんが求めていることは独特なのですが、そこはもう細かく言われなくても判断できるようになりました。CGを完成させて見せると「そういうことですね」ということになりましたね。
スタッフ間の「あうん」の信頼。しかも、そこに甘えず、チャンレンジする。だから、常に進化している。それが『るろうに剣心』チームなんです。

                          聞き手:相田冬二

「The Final」は興行収入40億円を突破し、最終章2部作合計で動員400万人!日本映画史上初の快挙となる2部作ワンツーランクインで、週末ランキング独占!日本映画の歴史を変えたエンターテイメントの頂点として君臨するアクション感動大作『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』2部作ともに大ヒット上映中!キャスト&スタッフの『るろうに剣心』シリーズ10年間の集大成を是非劇場の大きなスクリーンでご堪能ください!
佐藤健さん、大友啓史監督、谷垣健治アクション監督による”究極”の裏トークを映画館でお楽しみいただける副音声上映も同時公開中!