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The Making of Rurouni Kenshin―るろうに剣心のすべて 第十一章:エグゼクティブプロデューサー 小岩井宏悦さん

“前作を超える”という強い信念の元、映画『るろうに剣心』シリーズを進化させ続けた日本を代表するプロフェッショナルたち。映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の撮影舞台裏に迫る、限界知らずのチーム「るろうに剣心」スタッフの皆さんのインタビュー連載企画!

第十一章は、『るろうに剣心』シリーズ全作を手掛けた、エグゼクティブプロデューサーの小岩井宏悦さんにお話を伺いました。

さらに現在Podcastでは製作陣が撮影の裏側を語りつくす「映画 るろうに剣心最終章 レジェンドヒストリー」を配信中👏

■公開順を決めたのは、撮影後だった

まず、ひとつ大きなことは、今回、なぜ前の2部作『京都大火編』と『伝説の最期編』のように前編、後編の2部作にしなかったかということです。和月先生の原作で描かれた様に、「人誅編」の中に「追憶編」を回想の形で入れ、それを2作に分けると言うやり方もあったかもしれません。しかし、僕の中には最初からそうするつもりはありませんでした。『京都大火編』と『伝説の最期編』の2部作が成功したあと、次は同じやり方はしたくなかったんです。まず、時代劇のプリークエル(前日譚)である『追憶編』を純粋に一本の映画として成立させることから始まり、全フランチャイズを終わらせるための「人誅編」も合わせて製作する、という順番で決めて行きました。成功したからと言って、前後編と言う同じやり方を繰り返したくなかったし、何より『追憶編』というドラマチックな作品と、アベンジャーズみたいな超エンタメの『人誅編』とは、別の作品として映画化したかったんです。

ただ、公開順はかなり悩みました。
撮影後までは、『The Beginning』→『The Final』の公開順で進んでいました。時系列順です。ところが、ラッシュ試写で『The Final』を観た瞬間、「すごくいい!きちんとこのフランチャイズを終わらせている」と思いました。これが正直な感想です。実は、ずっと心配していたのが、『The Final』は、主人公である剣心が復讐される側であること。これはひょっとしたら、カタルシスがないのではと。なにしろヒーローものとしては変則的です。前作の志々雄のように巨大な悪がいて、それを倒さないと日本が滅びる、剣心が日本を救うのだ、という勧善懲悪とは全然違う構図。自分の過去に犯したことのせいで、自分に襲いかかってくる相手に、もし勝ったとして、それは気持ちよいものになるだろうか?しかし、観たラッシュは贖罪の物語とし見事に着地していました。贖罪は、『るろうに剣心』シリーズにずっと流れ続けている最大のテーマ。『The Final』で剣心が自ら、縁の刃を受けることで縁の気持ちを昇華させるシーン、あそこはまさしく剣心なりの贖罪ですよね。また、神谷道場の看板を見ながら、剣心が回想する場面。シナリオでは薫の回想だけだったはずが、編集で入れられたあのシーンも最終回のあり方として満点です。で、あるならば、完璧なエンタメ作品であり、お客さんの期待する赤い着物を剣心が見られる『The Final』を先に公開するべきなのではないかと。

観終えて、その場で慌てて宣伝プロデューサーの許に駆けつけ、意見を訊きました。
「アリだと思います。みんながまず観たいのはこれだから」
彼はそう答えました。そこから、作品のプロデューサーとして各部署に根回しに行きました。

『The Final』での巴との回想も、お客さんが『The Beginning』を観た後、という前提で入れていたものです。だから、かなりたっぷり見せています。最初から、いまの順番を考えていたら、はたして、あれだけの回想シーンを入れられたかどうか。きっと躊躇していたと思います。
しかし、結果的には、剣心と巴の回想をたっぷり見せることで、『The Final』の物語も充分理解してもらえる。これは発見でした。

■佐藤健は、一流のプロデューサー

佐藤健くんの成長の著しさは尋常じゃありません。
この10年で、剣心というキャラクターは、彼の中に完全に入り誰よりも理解しています。
それだけではなく、彼は作り手の目線も持っています。自分が役者として立つ、立たないということより、作品として面白いか、面白くないか。多くの人に楽しんでもらえるかどうか、という目線です。

僕は迷ったら、彼に訊きました。
「こういうの大丈夫かな?」
「抜刀斎は、剣心と違って完成形ではないのでいいです」
「前作と同じになるけど、原作みたいに薫を殺すフェイクはだめ?」
「ありえないです」
きっぱりしているので、頼りになります。

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実は、瀬田宗次郎の再登場は彼のアイデア。なぜ再登場するかの理由と展開はこちらが考えましたが、宗次郎がもう一度出たほうがいい、と最初に聴いたときは驚きましたよ。結果はご覧の通りです。後、剣心が縁の刃を受けるのも彼から出ています。編集についても、公開順が替わったことで回想シーンの微調整が求められましたが、重要なカットで彼の言ったことがかなり反映されています。

一流のプロデューサーであり、観客の目線を持っている。自分に求められているものは何か。お客さんが作品に求めているものは、何か。それがわかっているのが、彼のすごいところだと思います。
「佐藤健が関わっているのだから、きっと面白い。」彼にはそんな定評がある。彼は相談相手どころじゃありません。僕なんかより、よっぽどプロデューサー然としていますよ。信頼しています。

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■これで終わる。ここから始まる。

2作品のタイトルはかなり考えました。前作『京都大火』『伝説の最期』がうまくハマったので余計に。『十字傷の誓い』とか『リデンプション(贖罪)』とか、いろいろ考えましたが、ピンとこなくて。作品の世界を狭めてしまうんです。『るろうに剣心』に興味がない人には、どうでもいいタイトルになってしまう。入口が狭くなるんです。そうならないように考えを重ねてシンプルに『The Final』と『The Beginning』です。実は、このタイトルに行き着いた後に、「あ、1作目のワンオクの主題歌だ!これしかない」と確信しました。

『The Beginning』のコピーは、「これで終わる。ここから始まる。」になりましたが、最終章はコインの表と裏になればいいなと思っていました。タイトルもですが、ビジネスの発想よりやりたいことをやったと言う感じがしています。それをさせてもらえたのは、やはり原作に力があったからです。原作の力に引っ張られて、気づいたら、こうなっていました。特に最後は、『追憶編』を本気でやりたがっているスタッフ、キャストがいた。原作の魅力のお陰で、最難関と言われた『最終章』2作は出来たんです。

                          聞き手 相田冬二

The Finalの観客動員数が300万人を突破!シリーズ累計観客動員数1400万人を突破!
7/22~『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』鑑賞の皆さまへ 佐藤健さん&大友啓史監督が選んだ、直筆メッセージ付き<オリジナルミニポスター>配布決定!!

日本映画の歴史を変えたエンターテイメントの頂点として君臨するアクション感動大作を是非劇場の大きなスクリーンでご堪能ください!