脳内セカンド・ラブ

秋の暮れ
横になりながら眺める
SNSのアプリ
メッセンジャーでの対話を経て
熟年ミュージシャンのあなたから
告げられたメッセージ

  セカンド・ラブ希望です

はて
かの有名なアイドルの歌を模したそれ
…という年齢でもお互いない
ああ
互いの夫と妻を守りつつ
…ということか

 距離が遠いし
 返信も遅いですよ

 だからこそ、セカンド・ラブ
 心の恋人ということで…

顔の見えないあなたに丸め込まれ
始まった
脳内ラブ

対話手段の次のステップ
LINEに送ってくれた
歌う姿を録音した動画
端末越しに知った顔と声は年相応

逢いに行きたいとシミュレーション
車と飛行機とバスを乗り継ぎ
二人を隔てる距離は500キロ

幼な児は連れていけない
配偶者と布団を並べながら膨らむ風船

 いつか逢えた時は
 抱いて下さい

昼夜逆転気味のあなたへ
今日という日の締めくくり
たとえ日付が変われども
タップを忘れぬ
送信ボタン

でも
新たな音楽を創造することを生業とするあなたは
連日のLINEというマンネリズムには耐えられなかったのだろうか

日課のようなリズムと速度など必要なく
待ちぼうけのような
セカンド・ラブに相応しい返信
あなたが望んだのはそんなリズムだった

年の暮れ
除夜の鐘の音と共に
今年の事は忘れようと
LINEで交わした
ビールのスタンプ

端末一つで完結した
脳内セカンド・ラブ

効能が切れた家庭の主婦は
その役割を全うすべく
新年へとかけて行く

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