見出し画像

質問に答えます「描いた着物、どこが変?」

過去に各所で尋ねられた質問への回答を、note掲載用にまとめます。

今回は、「描いた着物、どこか変?」というテーマです。

【質問内容の要約】
着物を描いたのですが、どこか変です。
でも、どこが変なのか分かりません。

これは、リア友からの依頼です。(掲載許可をいただいています)

友人が描いたイラスト


私が手直しするなら……という点をまとめてみました。

着物の女性の添削画像


まれに、男性と女性のあわせが反対になると教えているネットの情報もあるようなのですが、私が知る限り、男性も女性も「右前」です。
小文字の「y」と同じだと覚えると良いと思います。

体に先に触れる布が右の布だから、「右前」と言います。
着物姿を見ると、左襟が上に見えるから「左前じゃないの?」と思う方もいるみたいですが、「右前」なんですね~。

反対の左前になると、「死装束」となり、ご遺体に着せるときの着方になっていまいます。
(幽霊キャラや、訳があってそうやっているキャラなら良いと思いますが)

合わせがもともとのイラストと逆になったことで、下半身の合わせも手前側に来るようになりました。



もらったイラストでは、女性の袖が筒状に描かれているように見えました。
着物女性の袖は特徴的なので、ひらひら~とさせてあげましょう。
大きなバスタオルを腕に掛けているようなイメージです。


多くの着物女性にはおはしょりがあります。
実際に着る着物では、背の高い女性が着物を着る時はおはしょりを作らないこともありますが……
イラストでしたら、描き込んだ方がそれっぽく見えると思います。
(長身キャラの女性を表現したいなら、描かないというのもアリかと思いますが、男性っぽくなってちょっとややこしく見えるかもしれません)


女性にしては帯が細いように思いました。あまり細いと男性の帯と似てしまいます。
女性は胸の下~骨盤くらいにかけて、太い帯を締めます。太さがある方が可愛く見えたりしますよ。



これは必須ではないのですが、描き込んだ方がそれっぽく見えます!

着物はもともと一枚の布を切って、それを縫い合わせて作られています。
その際、着物の本体部分(身ごろ)と袖を縫い合わせた線が出来るのですが、それを「袖付(そでつけ)」と言います。
まあ名称は正直どうでもよいのですが笑、ここを描き込むと一気に着物っぽくなります。

書き込む位置なのですが、洋服のジャケットの肩の接続部の位置に書き込まないようにご注意ください。一気に洋服っぽくなってしまいます。



着物の男性の添削画像


襟が描かれていなかったので、描き足しました。


これは本当に難しい点で、着物を描く方でも気づいていない方もいらっしゃるくらいなので、別にこだわらなくてもいいのかな。。と思いつつの指摘になるのですが……
羽織は本体から袖の付け根が離れません。
もらったイラストだと、着物の袖のようにちょっとだけ離れていたのですが、この部分は本体(身ごろ)にくっつきます。
いわゆるヒラヒラした「振り」の部分が無いんですね。
ややこしい(笑)



これは本当に難しい点で…(以下、前項の前置きと同文)
羽織のエリは、着物のエリと違って、本体を折り返してできます。
なのでこのように、エリの裾部分は折り返した感じになります。



もらったイラストでは下半身がぶわっと広がった感じになっていました。
着物の下半身はあまりはだけません。
というか、着物の下半身がはだけているなら、ほぼ着崩れているような感じになるかと思います。

「風に吹かれているような表現がしたい」「立ち絵などで躍動感がほしい」という場合は、
・着物の袖のヒラヒラした部分をなびかせる
・羽織のすそをなびかせる
など。
下半身の布を動かしたい場合も、帯の近くの根元から動かすのではなく、先を少しめくる程度にする方がいいかなと思います。



もらったイラストでは、男性にしては帯の位置が高いかなと思いました。
男性の帯の位置は骨盤にかかるくらいになります。


今までの内容を踏まえて、加筆・修正してみました。

手直し画像1


着物っぽくなるように手直ししつつも、この絵のもともとのものを活かすならばこれで十分だと思います。

でも、私がもっとがっつり直すなら、こんな感じです。

手直し画像2


これはもう好みの問題になっちゃうのですが……
いただいたイラストでは、女性の着物のあわせが浅い感じでした。
(帯の真ん中にエリが入っていた&鎖骨がしっかり見えていた)
ちょっと男性っぽさが出てしまうので、ぐっと深く合わせました。

また、肩が少しとがって見えたので、なで肩になるよう加筆しました。
肩がとがると洋服っぽさが出てしまいます。
着物の肩は「ハンガーにかかったている布」をイメージすると良いかなと思います。



これも好みの問題かもしれないのですが……
いただいたイラストでは男性の着物の襟が、首ではなく肩に沿っていました。
男性の場合、首にそって、襟が立つように描いた方が、カッコよくなるように思います!

あ、でも、ゆるっとしたキャラクターで、胸板をざっくり開けて見せたい場合などはその限りではありません。
しかしその場合は、「意図的にやってるんですよ」と分かりやすくした方が良いかと思います。



もらったイラストでは、羽織のエリ部分が分かりにくかったのですが、、
着物のエリの半分くらいに掛かるような位置だといいかなと思います。

また、これは着物描きの人でもちゃんと表現していないことが多いので、こだわらなくても全然大丈夫だと思うのですが、
羽織のエリ部分は半分折り返されています。
なので、首周りの羽織のエリは少し細くなっているんですね。

でもこれをしっかり描いている人って、絵師の方でもあんまりいないように思います。だから、あまり気にしなくて良いかもしれません。



これは基本的な指摘の方でやった方が良いかなとも思ったのですが、添削時に指摘し忘れたのでここに追加します(笑)

いただいたイラストでは、男性の羽織の袖口が全開になっているように見えました。
羽織のそではひらひらと長いですが、実際に空いているのは半分くらいです。

よく、漫画やドラマで、男性着物キャラがそでに財布などの小物を入れたりするじゃないですか。
もし袖口が全開だと、全部滑り落ちて中から出てしまいます…!



前述のとおり、着物は一つの布を切って、縫い合わせて作られています。
体の前に来る布を縫い合わせた際にできた線があり、これを「おくみ線」と言います。
名前はなんでもよいのですが、とにかくこんな感じで体の真ん中くらいに縫い目のラインができるのです。

厳密には体の真ん中では無かったりもするのですが、ややこしくなるので割愛します。
普通に和服キャラのイラストを描くくらいでは、
「おくみ線は体の真ん中」
という理解で問題無いと思います。


長くなりましたが、添削は以上でした!
掲載許可をくれた友人、ありがとう!

ビフォーアフターです




↓和服の描き方などの資料を、マガジンにまとめました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?