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ご自身に優しくできていますか 対話するリーダーシップ #26

あるグローバル企業のアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムを担当することにあたって学んでいることをお伝えしてみたいと思います。学んでいること、そこに関する問いをここで共有することでビジネスパーソンの方々のご参考になったらと思っています。

心理学者であり、『セルフ・コンパッション』のパイオニアであるクリスティン・ネフさん(Kristin Neff)の2018年の講演を取り上げます。

クリスティンさんは、博士課程の時に、離婚、お子さんが自閉症と診断されるということを経験し、マインドフルネスの瞑想を実践されるようになり、そのことが「セルフ・コンパッション」を研究対象とされることにつながったそうです。とても個人的な経験から出発されていることがわかります。

セルフ・コンパッションという概念を考えるようになった背景には、心理学の分野では、長きにわたって自尊心(Self-esteem)をポジティブに捉えてきたために、その反動としての悪い面も出てきたからと言われています。それは、常に他と比べる(平均よりは優れている)、ナルシストになる、完璧主義者になる、自分の評価が他者との相対評価になっていることにあります。これに対して、セルフ・コンパッションは、自らの心身の状態に気がついて(マインドフルネス)、自分の置かれた状況は起こりうること(人には起こること)と認め、自分に優しくできる(家族や友人に接するように)ことです。

クリスティンさんが「セルフ・コンパッション」について初めてニューヨーク・タイムズ誌に寄稿した時には、感謝する声と、非難する声とが半々、寄せられたのだそうです。この考え方に救われたという方がいる一方、そんなに弱いことでどうするのか、自分に甘くなってしまうだけという方がいたそうです。そんな中で、特に女性の声として、自分に優しくすることに罪悪感を感じるという方が多かったそうです。お母さんであれば、自分の子供がまず優先と言うことなのかもしれません。(社会の中でいつの間にか期待されている役割でもあると思います)

これに対して、クリスティンさんは、人間の脳にはミラーニューロンがあることを挙げられています。ミラーという言葉が示す通り、他社の感覚や感情を感知できる、共感の能力を司る神経回路です。ご自身に優しくできていなければ、周りはそのことを察知します。つまり、ご自身の状況が周りにも波及してしまうということです。

私自身、組織のリーダーだった頃には、顧客、自分のチーム、他の組織から求められていることを優先して、自分が後回しだったこと、しっかりと考えること、クリエイティブになれるために余裕を持つことができていなかったと・・・クリスティンさんの言葉にとても胸が痛いと思いました。当時の自分には気がつけていなかったこと、今となってはよくわかります。本当に忙しい時ほど、自分に優しくすることー何と言葉をかけるのか、何をすることができるのか(あるいはしない方がよいのか)ということを大切にしたいと思います。

今回の問い
ご自身の状態をマインドフルネスに、置かれた状況を把握できているでしょうか
ご自身に優しくできているでしょうか

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