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対話するリーダーシップ #14 思考の鍛錬

あるグローバル企業のアジア太平洋地域のリーダーシッププログラムを担当することにあたって学んでいることをお伝えしてみたいと思います。学んでいること、そこに関する問いをここで共有することでビジネスパーソンの方々のご参考になったらと思っています。

今回のテーマは「思考の鍛錬」です。

以前も取り上げたNancy Klineさんの「考える環境(Thinking Environment©︎ )」は、リーダーシップとは、考える環境を作ることから始まるというものです。

考える環境を創るということは、リーダーシップの最初の責任である。(渡部訳)
Creating a Thinking Environment therefore, is the first responsibility of leadership.
Nancy Kline
考える環境を作る10の要素

注意を傾ける Attention
公平に Equality
焦らずに       Ease
感謝を伝える Appreciation
励ましを伝える Encouragement
多様性/違いの受容 Diversity/Difference
適切な情報 Information
掘り下げる質問 Incisive question
場の安心感 Place
感情への配慮 Feelings
Nancy Kline, Thinking Environment©︎

こういった要素があれば、確かに考える環境が整うと思う方は多いと思います。特に意見もないかもしれません。大切なのは、こういった要素に配慮して、実践することです。

実践方法として、考えるペア(Thinking Pair)というワークがあります。毎週一定時間、話す側と聴く側を決め、同じ時間で交代するというものです。全体の時間が15分の場合、5分ずつの2セットをして、お互いに感謝をして振り返ります。テーマは「何について考えたいですか。これまでに何を考え、感じてきましたか。何を言いたいですか。」と聴く側がまず尋ね、そこから話す側が話し始めます。

実際にワークをしてみると、5分という時間は、それなりに長さもあります。私が聴く側になった時には、なかなか大変な同僚にどのように接したらよいのかについて、相手の方は思うことを率直に話してくれました。ついつい、こちらから共感する言葉や、アイディアを出したりしたくなるのですが、それを抑えながら、ひたすら聴きます。

5分間が終わってみると、必ずしも解決策が出た訳ではありませんでしたが、話す側の方はすっきりした表情をされていました。聴くということで、その方がこれまでに持ってきた感情、試みてきたことが表現されたからだと思います。悩んでいることほど、つい抱えてしまいがちであったり、単に愚痴になってしまったりするのかもしれませんが、ただただ聴いてくれる相手がいると、まず表現することで、自分を鏡で見るような効果もあるのかもしれません。

確かに、問題解決というのは、そんなに簡単なものではないと思います。特に人との関係性においては、すぐに解決するような事があるわけではないと思います。いままで何を思い、考え、行動してきたのかを整理すること自体で、また何とかやってみようと思うことができるのだと思いました。

このワークをする際に、ファシリテーターの方から、こんなアドバイスがありました。

1)考えながら話すこと:寄せては返す波のように
2)感情には知性がある

この15分間の実践は、毎週1回だけでも、本当に大きな効果があるそうです。聴くこと、話すことの訓練というだけではなく、結果として、考えることの精度も高まるそうです。長い時間をかける必要もないのです。長らく一人で困っている・・・そんな時に、どなたか考えるペアになってくれる人をお願いして、お互いに考えることを磨いてみてはどうでしょうか。

本日の問い
ご自身の職場で・・・
何かずっと抱えている困りごとはないでしょうか。
その困りごとについて、何を考えて、何を感じてきたでしょうか。

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