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ショート・ショート&掌編小説ほか

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私が書いたショート・ショート&掌編小説などのマガジンです。 小説以外のシノプシスなどもこちらにまとめていきます。
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#フォロバ100

さくら [掌編小説]

「私の寿命を半分あげますから、お婆ちゃんを助けてください」  祖母が亡くなる数日前、見舞…

瑠璃
1年前
78

誰も知らない [掌編小説]

 お爺さんは、いつも公園の片隅で煙草をくゆらせていた。ちょうど木漏れ日が降り注ぐ花壇の近…

瑠璃
1年前
48

桜梅桃李 [SS]

 ひどく陰鬱な夢の終わりに、うなされながら目が覚めた。身体が芯から冷え切っている。起き上…

瑠璃
1年前
38

初恋桜 [SS]

 もうじき八十九歳の春が来る。君江は桜が仰げるように置かれた古びたベンチに腰をおろし、薄…

瑠璃
1年前
50

金木犀 [詩]

懐かしい   老爺がつぶやいた 金木犀の香り  深い皺に覆われた彼の手の甲が  一瞬……瞬…

瑠璃
1年前
85

祭のあと [掌編小説]

 「トリック・オア・トリート」。急に玄関の外から子どもの声が聞こえて目が覚めた。部屋にひ…

瑠璃
1年前
46

ハロウィンと怖い夢 [SS]

 日曜日の朝、真美さんが急に家まで来て、紙袋を置いていった。 「中身は見ないで。お願いよ」  すごく真剣な顔つきだったので、気圧されるように頷いていた。半ば押し付けられる形で渡された紙袋はずっしりと重い。袋の底を手のひらで支えると、少しだけ柔らかな感触が伝わってきた。何だろう。中身を想像しかけたら、遠くから急に真美さんの声がした。 「絶対に見たらダメだからね」  アパートの前の道。もう50メートルぐらい離れているのに、真美さんが振り返って私を見ている。「見ないよ」と大声で返事