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短編小説の森

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私が書いた短編小説たちの倉庫です。カテゴライズしたマガジンにある作品も、全てここに集めています。   ※五十音順に掲載
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2022年11月の記事一覧

開幕ベルを聞きながら [短編小説]

 二十代の最後を機に、友人たちの結婚ラッシュが起きていた。春先から六月にかけてが一度目の…

瑠璃
2年前
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残心 [短編小説]

 開け放たれた出入り口から、小さな中庭が見えていた。朝だというのに、もう夏の陽射しがぎら…

瑠璃
2年前
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七度目の恋、二番目の人 [短編小説]

 猫みたいな女だと言われた。人のタイプを猫や犬に分類するのも、ありきたりすぎる例えで面白…

瑠璃
2年前
50

風呂上がりのアポロン [短編小説]

 あんな人間にだけはなりたくない。子どもの頃から詩穂の身辺には、そんな風に思う大人が多か…

瑠璃
2年前
89

ヘップバーンによろしく [短編小説]

 夕方から降っていた雨が、明け方には本格的な雪になった。雪には哀しい思い出がある。その思…

瑠璃
2年前
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保健室のオノマトペ [短編小説]

「もう何なの、あいつ。ねちねちして、マジムカつくんですけどぉ」  二台置かれているベッド…

瑠璃
2年前
58

別れても好きな人? [短編小説]

 またLINEの着信音が鳴った。注文したランチがテーブルに届いたタイミングでだ。送ってきた相手が誰かはわかっている。丸顔で、見るからに人がよさそうな平山輝夫の顔が頭に浮かんだ。こういう勘ははずれたことがない。だから茉優はスマートフォンを見ないで、まずはしっかり昼食を食べることにした。 (昼の休憩時間を狙っているなら、いっそ電話してくればいいのに)  そう思いながらタルタルソースをたっぷりからめた鶏南蛮を頬張る。なぜか夏の終わり頃になると、無性に鶏南蛮が食べたくなった。食欲の秋