第31回 草刈り人材の育成〜「畔師」グループをつくりませんか?〜

2020.02.20
木原奈穂子
神戸大学大学院農学研究科


概要
人口が減少していく中で,雑草の管理が大きな地域課題となっている。今日では,官民による様々なサービスも存在しているが,雑草が繁茂している畔やため池も多く存在する。また,草刈りをおこなうことが,個人・地域にとって大きな負担となっている。今後人が減っていくなかで,雑草を管理していくために必要な仕組み・取り組みとはどのようなものなのであろうか。

 話題提供者である木原先生は,主に丹波篠山市をフィールドとして,雑草管理の新たな仕組みを構築していくための研究を蓄積されている。そこでは,地域の草刈りを有償で担うグループが結成されるといった事例もみられる。このような「畔師」グループを作っていくためには,どのようにすればいいのであろうか。また,その他の仕組み・取り組みとしては,どのようなものが考えられるだろうか。参加者のみなさんと話し合い実践していくためにセミナーを開催した。


 木原先生からは,畔の構造や管理の内容,管理者の意識など畔管理の概要を話していただいた。また,丹波篠山市でみられる先進事例についても紹介していいただいた。それは,個人や営農組織でおこなう草刈りと,シルバー人材センターなどにみられるような広域的なサービスの穴埋めをするような形で,草刈りを担うコミュニティ(以下,草刈りコミュニティ)が生まれているということであった。

また, 草刈りコミュニティを作っていくにあたっての要点として,関係者を把握しておくことや,委託費用の調整と設定の仕方,漸次的に活動を進めることなどが挙げられた。

 中塚先生からは,そういった草刈りコミュニティを形成していく必要性が説かれ,まずは,最初の一歩を作っていくために,畔師として活動しても良いと思う人,畔師グループに作業を一度委託しても良いと思う人,畔師グループの事務局(バックオフィス)を担っても良いと思う人に分かれて話し合った。

 当日の参加者には,明石市,加古川市,稲美町,神戸市,加西市,丹波篠山市,岡山県美作市など様々な地域からの参加がみられた。

草刈りといっても,地域・人ごとで状況・やり方は大きく異なる。
例えば,畔の形状,刈る頻度や高さ,人数,使う機械など。
そのため,地域ごとの草刈り事情を共有し合うだけでも,新たな気づきがあったのではないだろうか。

 会場からの質問や意見も多く飛び交った。具体的には
「本当に仕事になるのか」,
「草刈りコミュニティはどうやって作っていけば良いのか」,
「若い子で草刈りに興味がある子なんているのか」,
「畔師グループの活動エリアはどう設定したら良いのか」,
「怪我が心配やなあ」,
「草刈りだけでなく,農産物の生産も一緒に考えていけたらいいなあ。貴重な作物を栽培しているから草を刈るとか」,
「草刈りとレジャー・娯楽を組み合わせてみるのはどうか」
などの声があがった。

 草刈りを仕事としておこなっていくための望ましいモデルを設定することは簡単ではない。そのため,ただ草刈りをするだけでなく,+αが重要になってくると考える。例えば,生物多様性の学習の場としての草刈り,地域とつながるツールとしての草刈り,工学分野の学習の場としての草刈りなど。

そういった+αを畔師グループごとで作っていければと考えてる。
今後,まずは「ちゃんと草刈りができる」ように,草刈り研修を開催してこうと思う。

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