私に魔法をかけてくれる冬の定番
「キャラメルスチーマーください」
すこし肌寒い季節になると、いつになくスターバックスに行きたくなる。春夏秋冬いつなんどきだって、スターバックスは美味しくて好きだけれど、冬になると「行きたい/あれが飲みたい」のレベルゲージがぐんと上昇するのだ。
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「ホットミルクみたいで美味しいよ。どうしようもなく不安になるときは、甘くてあたたかいものを飲むといいよ。魔法みたいに安心するから。」
めそめそ泣いている私にそう言いながらあの人が差し出してくれたキャラメルスチーマー。
恐る恐る口に含むと、ミルクとキャラメルのとろりとした甘さが流し込まれていくたびに、すこしずつこころがじんわりほろほろと溶かされていくようで、ああ、たしかに。魔法みたいだと涙が止まったのをよく覚えている。
その人にとっては何気ない行動と何気ない言葉だったに違いないけれど、とてつもなく嬉しかったことをよく覚えている。だからきっとわたしは、冬が近づいてくるとメニュー表からこっそりキャラメルスチーマーを選ぶんだと思う。
これからも、きっと。
少し落ち込んだ日に、寒さが厳しくなった日に、ちょっぴり嬉しいことがあった日に。自分にとびきりの魔法をかけるように、甘くてやさしいキャラメルスチーマーを。
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