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観劇コラム:ミュージカル『パレード』
ミュージカル『パレード』を観劇してきました!
予期せぬ結末に終演後は拍手を忘れる衝撃。そして、ふーっと深い息をはきたくなるような重厚なテーマ。
そんな本作品の魅力をお伝えしていきます。
『パレード』
2021年1月東京芸術劇場プレイホールにてホリプロ主催にて上演。日本では2017年に初演され、今年菜園。演出:森新太郎。主演:石丸幹二、堀内敬子。実際に米国南部ジョージア州で起きた冤罪事件をミュージカル化した作品。
あらすじ
南北戦争から約50年後、1914年の米国南部ジョージア州アトランタ。民衆は南北戦争戦没者慰霊のパレードに熱狂している。
それを横目に仕事へ急ぐのは、レオ・フランク(石丸幹二)。彼は北部ニューヨーク州出身のユダヤ系アメリカ人で、アトランタで工場長している。
レオの妻ルシール・フランク(堀内敬子)は南部出身のユダヤ人。白部出身のレオと何かと意見が合わずすれ違っている。
戦没者慰霊パレードのその夜、レオの工場で13歳の女工が1人殺された。レオはその容疑者と疑われ、ついには無実の罪を着せられ絞首刑を言い渡されてしまう。
レオを追い詰めるのは、町の有力者か、正義に熱狂する民衆か、根強く残る差別心や北部への敵対心、それら南部のイデオロギーか。レオの運命はー。
キャスト
*以下ネタバレを含みます。
主人公レオを演じた石丸幹二の芝居が見事。北部→南部への偏見、それによってこじれてしまった妻への愛情、彼女との関係。事件を通して、それが変化していくのを、目線や言葉のかけ方で秀逸に表現した。
堀内敬子も、ほんわかした南部の婦人から、夫の無罪を信じ行動を続ける強い女性へとくっきり変化してみせる演技力が素晴らしかった。最後まで夫を信じる勇敢な姿に救われる。
他キャスト陣も、役の人種、背景に敬意を持って取り組み、彼らの行動に現実味を持たせた。全キャスト歌唱力は抜群で、コーラスもすごい迫力。この作品の描く群衆の恐ろしさによりすごみを持たせる。
Midokoro①
見所の一つはやはり演出。特に、上演中幾度も降り注ぐ紙吹雪。
ある時は草原に咲く花々のように見えるし、ある時は清掃員の掃くごみのようにも見える。
しかし、それが降り注ぐのは、民衆が熱狂し暴走した時のみ。
民衆が熱狂する戦没者慰霊のパレード。レオの有罪判決に民衆が沸き立つその時。レオがリンチによって殺されても、変わらず続けられる戦没者慰霊のパレードにて。
上演中片付けられることなく降り積もっていく紙吹雪が表すのは、北部への敵対心か、ユダヤ人に対する差別心か、熱狂した民衆が暴徒と化す恐ろしさか。
最後まで降り止まない紙吹雪は私たちに問いかける。紙吹雪は、民衆が一心不乱に熱狂する、その結果時には人を極限に追い詰める、その"パレード”は今も、世界中で、形を変えて続いている。それが止む日は来るのか、と。
Midokoro②
もう一つ、見ていただきたいのは人種問題の描き方。
今作でまず目にとまるのは、レオに代表されるユダヤ人への差別だろう。容疑者となったレオに投げかけられる罵詈雑言には、ユダヤ人差別と取れるものが少なくない。
そしてそれと並行されて描かれているのが黒人への差別。南北戦争が終結し奴隷解放がなされて50年たっても、黒人の方々はブルーカラーの仕事についていることがほとんど、検事が事件発生時に言う「くろんぼを吊るしただけでは収まらない」などの差別発言も見られる。
特に二幕冒頭の場面で、北部を中心に全米からレオの無罪放免の嘆願が寄せられる際に、彼はユダヤ人(白人)だから見捨てられないと黒人(衣装から見てそう判断)の2人が歌うシーンがある。WASP以外の人種の中にも、序列があると言う課題をしっかり描いているところに感心する。
終演後まで疑問が残った、実際に真犯人は誰だったの?という点に、作品中では言及しないのも、黒人差別意識が助長されないよう配慮したものだったのではないだろうか。
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ミュージカル『パレード』は1月31日まで、東京池袋の東京芸術劇場プレイホールにて上演。その後、2月には大阪、愛知、富山でも上演される予定だ。
(引用元:ミュージカル『パレード』公式HPより)
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