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名作映画を見直す【3】紳士は金髪がお好き

1953年公開のマリリンモンロー主演映画。ハワード・ホークス監督。ブロードウェイミュージカルの映画化。20世紀フォックス製作ということで、MGMのそれとは、テイスト的には少し異なる。ミュージカル部分が中盤少ないのと、徹底的にダンスシーンで見せてくるという感じでもないからだ。

ファーストシーンは、モンローとジェーン・ラッセル、二人のダンスシーンから。彼女は、いわゆる高級キャバレーの踊り子というところ。そこにモンローに恋した男(トミー・ヌーナン)がいて、彼女との結婚話と、パリに向かう二人の話になる。

その後、1時間くらいはパリに向かう船の中の話。豪華客船の中には、オリンピックの選手団が一緒。彼らを使うミュージカルシーンは、なかなか見応えもある。モンローは、男はあくまでもお金が勝負だとばかりに、金持ち探し。その中には、おじいちゃんや少年もいて、なかなか娯楽映画の体をしっかり成している。

そう、全体的に、東宝がミュージカルを含めて作った、恋愛コメディー的なものに似ている。もちろん、似せたのは日本側なのだが…。そういう意味でも、安心して見ていられるアメリカンコメディであり、その中で、マリリン・モンローという可愛い女優の魅力は十分に堪能できる一作である。黒髪のジェーンとの対比もわかりやすい。

そして、モンローを追ってきた私立探偵(エリオット・リード)との駆け引きや、モンローがダイアモンドのティアラを手中にする話も、なかなか「お洒落泥棒」というテイストがキュート。

ラストで裁判沙汰になり、モンローの替え玉をジェーンが行うのは、私的にはいまいちの展開だが、いわゆるダブル・ウェディングでハッピーエンドになるまで、軽く楽しめる一作である。映画の作り方の基本的なものがいっぱい詰まっている。

そして、この映画がうまいのは、モンローとジェーンという2人の美女の後ろに常に男性陣が取り巻きを作り、彼女たちをリードするように背景として十分な感じになっていることだ。そんな中で、彼女たちが繰り広げるミュージカルシーンは今見ても参考になる。

スタンダードなサイズの画面が十分にはち切れて見せられるさまは、まさにハリウッドの力なのかもしれない。とは言え、パリに行くシーンでは、パリの風景は別撮りで、彼女たちはスタジオの中で撮られたのがわかるし、上映時間が1時間半の小作だから、結構、小予算映画なのだろう。そう、日本で言う添え物映画みたいなものでも、これだけ作っていたハリウッドはやはり世界の映画の中心であったわけだ。

そして、モンローは、今見てもそのスタイルもその笑顔のチャーミングさも、絶品である。とは言っても、もうこの時27歳である。当時、頭の悪い金髪女優と言うイメージだったようだが、この映画の中の彼女は、お金好きなのはともかく、頭は切れる感じの可愛い美女に見える。とにかくも、セックスシンボルという一面が彼女のランクを下げた感じになっていたのだろう。

モンロー的な女優は、その後も多く作られても、皆、モンローよりも存在感が示せなかったというのは事実だろうし、今、この世にいて、こんな外人が日本の繁華街を歩いていたら、多くの人が振り向くだろう。そう、彼女のそんな魅力が今も観られて、それが有機的に私の目にも入ってくることがすごいのである。マリリン・モンローはこれからも永遠であるのだろう。

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