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「雪女と蟹を食う」シンプルなロードムービーが現実の陰鬱にシンクロしてくる

Gino0808原作のコミックのドラマ化。至ってシンプルな話だ。こういう深夜ドラマを作れるのがテレビ東京の良きところでもある。話的には、ロマンポルノ的な、ちょっと社会からずれた男と女の逃避行。目的は、北海道で蟹を食うことというのもなかなか素敵。そして、主役はジャニーズの重岡大毅。最近のジャニーズは、かなり、場所を選ばずに出てくる。ある意味、このままいくと、昔以上にテレビの中はジャニーズに占領されていくのかもしれない。ドラマにしても、安価の部分まで巣食ってくる感じ。重岡などは、ゴールデンでも主役をはれるわけで結構贅沢。そして、監督は「ミッドナイトスワン」の内田英治。ということで、初回、目新しさはそれほど感じなかったが、面白かったし、この先が気になる作りにはなっている。

重岡は、痴漢冤罪で捕まり、結婚するはずだった彼女にも逃げられる。そして、首を吊ることもできず、テレビで蟹を食う番組を見て、自分が蟹も食ったことがないのに気づく。そのシンプルな事象から、図書館で出会った女の家に強盗に入る。その女、入山法子は、重岡の「金をくれ」という申し出を受け入れる。身体もくれる。そして、話しているうちに、彼女の車で一緒に北海道まで蟹を食いにいくことになるという話。

まず、この人生、詰んでる主人公に、重岡の重苦しい顔がなかなか似合っている。ある意味、自意識より、他人の印象で流されてしまいそうな役だからピッタリではある。そして、いわゆる題名にある「雪女」役の入山法子。スレンダーなのは良いと思うが、もう少し、いかがわしい耽美的な雰囲気があったら尚良い。だから、脱いだりするシーンがもう一つという感じはある。

とはいえ、こういう退廃的な人間模様を映像化するのは、内田監督の真骨頂だろう。軽い感じで、どこか、重苦しい異次元に二人の男女を飛ばそうという感じには仕上がっている。

たまたまだが、この2日間、世の中が、なんか陰鬱な中にあり、いろんな集中力が弱っている感じがする。こういう時だからこそ、男女がまぐわる中にも、少し廃退的な享楽的な空気感が高まるような感じもする。まあ、このドラマの放送は深夜なわけで、このドラマを見てさまざまに心乱れる人もいただろう。そう、題材的には、出口無用に人間の性や欲望を吐露しながら、エキセントリックな空間に堕ちていくという感じなところが見どころだ。

二人が北海道に向けて走るBMWの赤のドギツさみたいなものもドラマが理不尽に弾けていくような感じが見える。それは、蟹の赤も同じか。そう、赤い車に乗った雪女が、最後に溶けるのかどうか?ミステリアスに物語が始まった感じは好きであった。

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