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手塚治虫AI「ぱいどん」を読んで思うこと

このプロジェクトが発表されたときにも書いたが、作品ができるのが楽しみだった。そこは未来への入り口と言えるだろう。2月27日、その現物が雑誌「モーニング」に発表され、読んだ。

予想以上に、そこに手塚治虫的なものが存在し、話の先も実に楽しみな感じをそそるものができていた。そういう意味で、この話の結末はわからないが、AIを使った漫画制作は、良い船出をした感じである。

2030年東京。今から十年後、町は自動運転車が走り、顔認証システムで世の中は動いている。そんなシステムの外にいる男が主人公ということか?仕事は探偵らしい。そして、秘密の眼をつけるといろいろできるらしい。「三つ目がとおる」がヒントかね?(と考えさせてしまうのではAIは少し甘い)いわゆる人は常に追跡されていて、そのデータが消えている人を探す話。主人公の正体がいろいろわからないのは手塚治虫らしいか?

とはいえ、これを手塚が死ぬ前に描いていたものだと言われても、信じる人は多いだろう。様々な世の中の技術が、当時と今は格段の差があることを考えれば、そこから「おかしい」と感じる人もそこそこいるはず。だいたい、携帯電話を描けなかった手塚が自動運転を考えられたか?自動運転があればトビオはしなずアトムも生まれない。そこは、手塚が今生きていたらという前提なのだろう。そういう意味では「手塚治虫AI」という新しい作家の作品として提示されているのがこの作品だ。

「モーニング」に書いてあることを読めば、AIが作ったのは、話のプロットとキャラクター設定らしい。細かいコマ割りや、作画は人間がやっているということだろう。ある意味、原作ありきのアニメ作りに似ている?先に書いた、現代だから描ける技術が出てきてしまうような部分は今の人間の思考なのだと思う。そう考えると、様々にチグハグ感もあるのだが、そんな部分が興味深いとも言えると思う。

そして、昨日、発表された話はまだ1話目の前編で、後編は来月発表とのことだ。そして、連載も考えていると予告されている。ということは、今は、多くのプロットをAIに書かせているというところか?いろいろ、まだ評価の段階にない最初のものだとは思うが、次が読みたくなる流れは成功だろう。

そう、映画ビジネスのことを書いたところでも、今の日本のエンターテインメントの中で、ストーリーテラーが足りないという話をした。そういう意味では、映画の脚本などもAIに読み込ませれば、新しい話の糸口を掴める気もしますね。「男はつらいよ」の脚本なんか全部読み込ませたら、いくらでも金太郎飴的なエピソードは作れる気がしますよね。別に私は観たくありませんがね…。アニメなら結構ウケるかもしれません。

多分、血の通った人間の頭脳で書いたものと、AIとの協力で作られるものが共存する世界はそんなに遠くないというのが、この「ぱいどん」をみての感想であります。まずは、その先にどんな未来があるのか、そのファーストシーンが書かれたということだと思ってみると、この作品はすごく重要な一作だということですが…。


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