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「ようこそ映画音響の世界へ」映画とは何か?ということを再確認させるバックステージ。

何故に映画館に行くか?という問いに、私は映画館で観ることで、映画というコンテンツの完全な姿が理解できるからと答える。映画は映画館の環境で観るためにデザインされているのだ。

このドキュメント映画は、映画に音がついた時から、今のデジタル時代に至るまでの映画の音響について、わかりやすく解説してくれる。そして、インターネットで誰でも映像を投稿できる時代に、音響を造りこまないで、他人にウケようなど考えてはいけないとさえ言われているように感じた。出てくる音響のプロたちはただものではないし、彼らがいて今のハリウッド映画のビジネスが成立していることが理解できる。

映画がサイレントからトーキーと呼ばれるものになったのは、一つの革命だった。だが、そこで音響にお金をかけて作り込むとなるまでには、かなりの時間がかかったことがわかる。ここで、それなりの音が作り込まれている「ゴッドファーザー」もモノラルの音声だったと紹介される。そう、映画がステレオになるには時間がかかった。日本映画でドルビーステレオが導入されるにはさらに後だったと思う。

やはり「スターウォーズ」「地獄の黙示録」というあたりが音の革命の鳥羽口だったようだ。ルーカス、スピルバーグ、コッポラなどが映画を本当の意味での総合芸術に高めていったことがよくわかった。

話を「何故映画館にいくか?」というところに戻せば、私もそこで体験できる音の臨場感や没入感が心地よいからだという部分は大きい。それは、家庭では同じ体験ができない世界だからだ。もちろん、画面の大きさや映像のキレの良さはあるが、音は映像体感を大きく左右する。そういう意味では、今の映画館は、私が学生の時に通っていたそれとは大きく違う場所だということが、この映画を見てよく理解できた。今の映画の音作りって凄い!

勿論、映画って脚本があって、演出があって、役者がいてのものなのだけど、今のビジネスとしての映像作りっていうのは、音響を作り込むことで大きく変わるということだ。だから、そのデザインが大事!ハリウッドの音響のリーダーたちは、自分の仕事に誇りを持って楽しんでやっていることもよくわかった。

この辺は、日本映画、かなり負けているのだろうと思う。映像の音響デザイナーってどのくらいいるの?私が知らないだけかもしれないが、日本映画の音の構造がまだまだ浅いのは事実だと思うのである。

そして、インターネットで、誰でも映像が発表できる時代、音にまでこだわって映像を上げている人は、まだまだ少ないと思う。自分も仕事で映像を作る上で映像の個性と共に音をちゃんと作るということにこだわらないと、これから生きていけないなと思わされた映画であった。

ある意味この映画、映像の音響に関する初心者向けの教科書のようではあるが、とにかく、映像を職にしている人、そして映像の音に興味がある人は、必見!そして、この映画を見た後は、全ての映像に付いている音が気になって仕方がないのではないかと思うのですよ。

そして、映画は映画館で観るものだと再確認した次第です。ディズニーさん、お願いだから「ムーラン」劇場公開してください!


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