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「ファヒム パリが見た奇跡」こういう難民の映画を作れるフランスは人権の国か?

世界的に広がる難民問題。フランスに来たバングラデシュの父子の実話を元に描かれた映画である。話はチェスでフランスの王者になる息子を中心に描かれるが、そのバックグラウンドにある難民問題が強烈に観客に意見されてくる。様々な意見がある中で、人権の国と呼ばれるフランスとは如何に?という作品。

正直、日本に難民で来て、この映画に出てくるようにホームレスのような生活をするものはあまりいない。それは、入国のところから厳しく扱うからだろう。いい悪いはともかく、いまの世界は距離に関係なく、逃げる人々がいて、ユートピアを目指すものもいる。そこには、様々な国の事情があるわけだが、日本人はよく理解していないということがまずわかる。

フランスの国の中で、それは普通に存在していることで、子供たちも事情はわかっている。だから、主人公のファヒムを最初からそれほどのヘイトもせずに仲間として容認する。だからこそ、最後の周囲の応援は熱い。

ただ、ファヒムが優秀な子供だから、うまくいったということはあるだろう。フランス語も早く覚え、父の助けになるようにもなる。そういう意味で、ここに提示される話は奇跡ではない。ファヒムの実力がフランスを動かして、滞在できるようになったということだ。彼が、公の通訳の嘘を見抜くところは圧巻だ。通訳が自国の難民を有利にするために嘘をつくなどという事情もまた、世界の難民の苦難を表している。

父の生き方に目を向けた方が、その辛さはわかる。言葉ができなければ仕事もない。お土産を闇で売るようなことしかできない彼に幾ばくかの報酬があるのか?それでいて、乞食のように恵んでもらうことは嫌う潔癖さ。結局は、死ぬか帰るか?帰っても暮らしはうまくいかない…。そしてチェスの強い子供に賭けた!そこのところが今ひとつ映画から伝わってこない気はした。

とはいえ、子供の演技でこの映画は保たれている。コーチと傍にいる彼女が優しく彼らに対峙することで道は開ける。ある意味、出来過ぎな話だが、才能のあるところには、そういう偶然が集まると考えればわかりやすいのかもしれない。チェスの内容は観ている方にはよく伝わらないものの、子供たち通しの友好と大人の不器用な愛情が映画を包む。

ラスト、ファヒムは一つ大人になったのか?その結果が、彼と父をパリに滞在することを許し、家族を呼び寄せることもできる。日本の題名にもあるように、これは一つの奇跡だ。多くの難民は世界の中から弾き飛ばされる。それを知らしめるには十分な映画なのだろう。

結果、実在の彼ら親子はまだ国籍をとるまでには遠く長い道を歩いているらしい。人間が、地球の上で自由に生きることの実に難しいことよ!技術革新も、経済のグローバル化も、多くのただ幸せに生きていたい人々のためにはなかなか寄与しないのが現実である。


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