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「八月は夜のバッティングセンターで(3回)」1000本ノックは1000本では足りない!

最後に、1000本ノックをしてグラウンドに座り込む川崎宗則が、「何故そんなことをするのか?」という武田玲奈の問いに「野球が上手くなりたいから」と答える。そう、ただただ、自分の仕事が好きであることだけがその技量を上げる術なのだ。自分で自分の自己承認に満足することがあってはいけないと言うこともいっているように感じた。

今回のヒロインは、武田玲奈。和食の料理人というなかなか古臭いものが残っている場所にいる。そして、まだまだそこは男社会である。和食は特に、観て覚える文化が残っているところだし、修行の年月で認められる場所だったりもする。そんなところで、料理学校で優秀だった新人の武田がまともに料理をさせてもらえないとイライラしてバッティングセンターにやってくる話。

そして、彼女は実際に球を打つ前に、関水にバッティングの動画を紹介してもらい、それをじっくり観てから、バッティングを始めるが、全く球がバットに当たらない。経験せずにマニュアルを見て形が同じならできると思っているということなのだろう。まあ、今回は百里の道も一歩からと言うところなのか?何事も短時間で習得するのは難しいと言う話だ。そして、それなりに見栄えは装えても、本物になるのは難しいと言う話?

結果的に、川崎宗則が、1000本ノックをいくらやっても納得しないというところが言いたいところなのである。そう、「プロとはなにか」と言う質問があるが、それは突き詰めれば突き詰めるほど、底の深さを知っているものということなのだと思う。料理人は、世の中にごまんといる訳で、その中で、どこの領域で満足しているかということだ。大体、どんな世界でも、自分の技や知識を引き散らかす人ほどプロではないということを私は体現している。自信とは、自分が進むべき先が理解できている人から発せられるものだ。歳を取れば取るほど、そこが面白かったりもするのだ。

そういう観点から見れば、若いポット出の料理人が、そんなに輝くものでもない。料理も味の中に人生の深みが出てこそ一人前だ。30分の番組の中では、その辺り、少し中途半端な語りだとは思ったが、川崎がいまだ現役で追い続ける姿が、その辺をカバーしたか?というところ。

とにかくも、毎回、野球人のレジェンドに人生を重ね合わせていく趣向。面白くはあるが、それを哲学まで昇華させるのはなかなか難しいなと今回のテーマは思わせた。

そう、「プロとは何か?」という質問をプロ野球選手に訊けば、それぞれの回答が帰ってくるだろう。それがドラマの答えになっていればそれも面白いとは思うが、そんな単純ではない。まあ、深夜ドラマとして、程よいテイストで色々考えさせることで良しとしよう。

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