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「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」10日で興行収入100億円突破の意味。そして、今後の映画興行。

先週末3日で45億円突破というニュースにも驚いたが、10日で100億円の壁を突破したとのニュースが今日流れた。「鬼滅の刃」である。

このコロナ禍で、緊急事態宣言が明けてから、ずーっとほぼ毎週映画館通いしているものにとって、この10日間の映画館の賑わいは嘘のような状況だった。エンタメが様々に停止されている中、やはり溜まっているものがあるのだろう。子供も、学生も、大人もこの映画を観に来ている。多分、正月まで、いや春ごろまでこの映画はロングランを続け、日本の興行新記録を変えることも夢ではないだろう。

とにかくブームは昨年から続いているもので、本当なら漫画誌連載が終わった時点で一つの終焉を迎えるはずだったのかもしれない。だが、コロナ禍がそのブームをさらに高めたというところだろう。原作の面白さもあるが、それが映画の画面で動くことを観た若者たちはさらにギアがかかった感じもあり、大人を中心に新たにブームに組みする人も多い気がする。

映画館は、いまだかつてない上映体制。土日は早朝から深夜まで興行。そして、シネコン1館で20回以上の上映も当たり前の状態。この体制を上映前に観た時は、「こんなに人がくるのかよ?」と思ったが、映画館のマーケティングを舐めていた。前売り状況からそれは予想できたのであろう。そして、シネコンは組み分けがどうにでも変更できるわけで、この賭けは勝ちが決まっていたということだ。

そして、映画館は、コロナ禍前以上の人手になったということだ。映画館に通い続けている私自身がびっくりしているのだから、映画館自体も同じだろう。ただ、他の公開作品にはとてもアウェイな雰囲気が漂う。一般的な映画は一日5回程度の上映を2週間は続けたいはずだが、それができる映画がほとんどない状態。一週目で観てもらえないと、上映回数や時間の制限ができ、もっとコアなファンにしか観てもらえなくなる。この辺りの対策は全くできていない。あくまでも、ヒット作を前に出すのが今の映画興行だ。

秋に公開される映画の中には、春公開予定だったのが伸びたものも多い。結局撃沈という状況は観ていて辛いものがある。映画館が楽しかったなら、他の映画も観に来てほしいというのが本音だろう。

とはいえ、映画館は今年の売り上げを取り戻さねばならない。このヒットをきっかけになんとかしたいと必死であろう。そして、このヒットが、他のエンタメにも刺激を与えていただきたいと思うのは私だけではないはず。

こういうブームの中で、昔と違うのは、小さめのスクリーンで観た人が大きなスクリーンで見直したりすることもある。多分、この一週間の間でもかなりの数のリピーターがいるはずだ。私でももう一回観てもいいと思う作品なのだから。まだまだ、全く興味を持っていない層を取り込むことも可能な気がするし、ハリウッドの大作が全く上映されない今は、二ヶ月くらいは一人勝ちの気がする。ライバルが出てくる気配はない。

いろんな要因が重なってできた記録だが、これが正月やお盆や春休みでもないのは興味深いことだ。芸術の秋に封切ってこれだけの興行を成し遂げた作品はないだろう。パンデミックが起こした奇跡だとは思うが、映画興行の新しい転換点になるのかもしれない。どうやってブームを作り、どうコンテンツを作って、大きな波にしていくのか?そこに多くの人を全集中させられるか?映画作りの新しい呼吸法を身に付ける時なのだろうとは思う今日である。

まだまだ、この興行の行末、楽しみである。

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