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「メイキング・オブ・モータウン」熱きヒット曲生産の日々を語る創始者の姿に私をも背中を押される。

世界的に知られる歌手たちの若き姿が躍動する。洋楽には疎い私ものめり込んで観入ってしまった。スティービー・ワンダーやマイケル・ジャクソンの若き日のすがたにその天才性を見せつけられる。テンプテーションズやシュープリームスの華麗さに魅せられる。現代の世界中のポップスシーンの原点な感じのものが散りばめられている。音楽エンターテイメントも、今ひとつと感じる今日この頃だが、この映画の主人公でもある、モータウンの創始者、ベリー・ゴーディのような熱い感情が高まる感じの人がいないからなのだろうか?

このドキュメントの監督、ベンジャミン・ターナーとゲイブ・ターナーは、創っていて、何を捨てるか?に困ったのではないか?112分間のつながれたフィルムは、これでもかという程の多くのカットでつながれている。ヒット曲をもっと聴いていたいと感じる観客など、ほっておくといった感じに、我々はモータウンの歴史の輝きにまみれる感じである。

この話の主役となるモータウンという音楽工場の形を私はよく知らなかった。デトロイトという自動車で有名な街の小さな二階の家から始まったということ。それは、アメリカの音楽シーンに黒人を押し出し、彼らを世界に飛躍することになる。映画では、南部アトランタでかなりきつい差別を受けたことや、キング牧師との交流など、今に続く差別の中で音楽で闘ってきたことも描かれる。そして、それはあくまでも、彼らの曲作りが武器であったことがすごいのだと思う。

ベリー・ゴーディは人を集め育てる天才であり、優れた起業家でもあったことは、映画が始まって30分もしないうちに誰でも理解できる。私的にはその才能の開花が、彼が自動車工場で働いたことが源泉となっていることに興味を持った。そう、私も同じことを思うのだ「ものつくりを成功させる鍵は全て同じなのではないか?」と。車という生きる上での夢の道具を作るように、彼は誰もが好きになる音楽を作るために独立した。そして、その方法は自動車企業がやっていた方法論の中で進められた現実は、ヒット曲の量産工場を当たり前のように完成させた。曲作りを工程に分けて分業化したり、「ヒット曲の勝負は最初の10秒」とか、この映画はビジネス書的な要素を多く含んでいる。その辺りの書店に平積みされる古いビジネス書より、この映画を観ることは起業しようと考える人には刺激的だ。

最後の方は、ベリー・ゴーディと彼の片腕のスモーキー・ロビンソンの昔話の雑談が何回も差し込まれる。年齢を感じさせず、ただただ自分が関わってきた音楽に対して愛情を持って携わってきた二人の笑顔が印象的だ。その傍にいた社員や歌手たちも、彼らとともに、キラキラした音楽シーンを作ってきたことに対し悔いはないという感じ。こんな、音楽だけで繋がる仲間たちっていいですよね(もちろん、ビジネスだからお金が稼げたことが大きいのだが…。)

創業者は今年90歳だそうだ。彼が、彼の夢を叶えた過程を、関係者と古い記録フィルムを交えて作られたこのフィルム。彼がやったことの結果だからこそ、有機的で、とても意味のあるドキュメントになっている。最近は伝記映画が一つの流行だが、こういう形の映画化も歓迎である。

観終わった後、創業者ベリー・ゴーディという人が、私のこれからの新時代にエンタメに関わる上での一つの目標になった感じではあった。だから、若い人には、尚更、観ていただきたい。こんなに心地よいドキュメントも珍しい!


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