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「生きるとか死ぬとか父親とか」ドラマにできるエッセイを書けるジェーン・スーの凄み

このドラマの原作者、いや原作エッセイの作者、ジェーン・スー女史を私が知ったのは、彼女が最初のラジオのレギュラーを持った「TOP5」という番組だった。ラジオから流れる、興味深い話と、その語るリズムで、習慣的に聴くようになった。その後、このドラマにあるような「相談は踊る」という土曜の夜の番組、そして今も続くTBSラジオの昼帯番組「生活は踊る」に至るまで、聴き続けている。そう、ヘビーリスナーというやつである。そうさせるのは、彼女の引き出しの広さと、人間性を明確に感じさせる話かたからだろう。そんな彼女のエッセイがドラマになったのがこの作品。

いわゆるドラマの原作としては、小説や漫画というコンテンツがほとんどである。エッセイというものは、なかなか日常の一コマを綴っているのが多く、膨らまして、ドラマとして膨らますのが難しい。ただ、スーさんのエッセイは、文章から情景が見えるものが多く、この原作も小説にしても成立するものだろうと思ってはいた。

そして、初回、スタッフの原作への愛情が感じられる良いドラマになっていた。そして、観ているうちに吉田羊さん扮するトッキーがスーさんとダブってくるのは見事。國村隼さんの父親もなかなか味がある。とても深い味わいのあるものだった。

最初と最後に、ラジオの相談コーナーを置いたのもなかなか味がある。田中みな実さんはやはり、アナウンサー姿が似合いますね。都会の夜とラジオの親和性みたいなものが画になっているのもグッドジョブ。

そして、亡くなったお母さんを富田靖子さん。吉田さんの若い頃を松岡茉優さんという配役は贅沢すぎるが、これがすごくいい感じ。さまざまな顔が頭の中で実際の人物とシンクロし出す楽しさもあり、これからどんな素敵な話を紡いでいくのかとても楽しみである。

そして、ドラマの中で話される花の話などがドラマを華やかにし、物語の中で話されるたわいない情景が自分の親子関係にシンクロしてくる。喜怒哀楽が彷徨う人生の中で、結果的には世の中を楽しく生きてるから、こういう話を綴れるのだろうなと思うのだが、ジェーン・スーさん、今に生きる感じが良い。

そう、世の中はパンデミック。このなんかギスギスした世情の中で、スーさんのラジオからの声は、さまざまな日常の辛いことを洗い流すように、私たちのゴタゴタに、時には厳しくかつ優しく責め、時には寄り添ってくれる。そんな彼女と彼女の父親のドラマ化は大成功だったようだ。とにかくも、最後まで楽しませていただきます。


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