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「ハケンアニメ!」の動員再稼働に見る、映画興行のあり方と、現状の映画広報について

ちょうど1ヶ月間に「ハケンアニメ!」を見たときに、これは傑作!と思ったが、一週目の興行で、平日とはいえ、観客の少ないことに寂しさを感じた。そして、予想通りに上映回数もすぐに減らされ、東映直営館のみの配信となってから、客が入り出しているというニュース。そして、新規での上映館も出てきた。たぶん、ネット等の口コミによるものだと思うが、一日、上映一回にしろ、それが満席に近い状況とは、この映画のファンとしては嬉しい限りだし、やはり、映画興行というのは先が読めないものと今更ながら感じた次第。

ここで、大きく言えることは、口コミの速度というものは、伝わるまでに2週間以上かかるということだ。そして、それを聴いた人が行動を起こすまでにまた、それなりの時間がかかる。今回は、その上で観た方がまた、声を上げてくれているのだろう。まさに、この映画のアニメが覇権を取るために逆転劇を演じるような流れ。そんな、ものなのかな?と今更のように感心する。

とはいえ、この映画、私が見たくなったのは、予告編を見ていたからだ。それでないと、このタイトルは意味がわからない。一般的に、最近は映画の宣伝がテレビCMで流されることも少ないし、映画館、いわゆるシネコンの周辺を歩いても、絵看板などないし、ポスターもよく見なければ見つけられないようなところが少なくない。つまり、映画館のロビーまで行かないと、今やってる映画の情報は得られないのだ。まあ、ネット内にはSNSをはじめ情報を流しているのは確かだが、そこを見ているのは、映画というメディアに興味がある人だけである。一般の人は、一年に一度か二度しか映画館に出向かない人がほとんど。一回も行かない人が一番多いのだとは思う。それならば、そういう人たちに映画館に向かわせるような広報をしないといけないのに、まあ、最近はそういうものが少ないのである。

大体、映画館が自らが宣伝するという気がない。もちろん、ミニシアターなどは、ロビーに映画のセット的なものを再現したり、ファンの声などを飾って宣伝をすることは多いが、そういうものがシネコンで見られることはなかなかない。まずは、こういう本屋のポップみたいなものは増やしていくべきだろう。シネコンに、感想を書くような掲示板があれば、見るだろうし、それで面白い映画を選ぶということもできる。まずは、そういう努力を映画館自体にして欲しいと思う今日この頃だ。

そして、考えるに、街中で映画の宣伝に出会わなくなったのがある。以前、新宿の東口の線路側には、映画の宣伝看板があった。そういうのを見て、映画を見ていた人も多いはずだ。その昔は、地元の映画館が番組を紹介するようなポスターを貼るところもあった。そういうものがほぼ皆無。まあ、映画の広報費自体が少なくなっているのだろうが、それにしても、この業界、諦めすぎである。

そうはいっても、映画のチラシというものはそれなりに作られている。だが、それを映画に興味がない人が見ることはほとんどない。それが、映画館にしか置いてないからだ。つまり、新しい映画ファンを掴むのは本当に難しいというか、やる気のない状況になっている。

そんな中で、今回の「ハケンアニメ!」の集客状況はかなり新しいのだ。まあ、良い映画なら、その口コミの仕方で客は集まるということなのだと思う。大体、明日からSIDE Bと呼ばれる2本目が公開されるオリンピック映画だって、税金使って作って、集客さえしていないわけで、割を食っているのは、映画館自身だ。今週、映画館に行ったら、予告編が流れ、SIDE A大ヒット上映中!というキャッチが入っていた。詐欺である。まず、大ヒットさせようという気がなければ、客も入らんのだよ。

まあ、パンデミックでやられて以降、映画館は、客が入ることが確実な映画にスクリーンをこれでもかというふうに解放して収益を上げようとするのだが、これは、映画の多様性を無視するものであり、良くても小さな作品に対し、映画館が敬意を示していないということなのだと思う。

とにかくも、今回の「ハケンアニメ!」の現象は新しく、こういう状況がこれから度々起こって欲しいと思う。いい映画を多くの人に見てもらわなくては、映画の未来はないのだから。


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