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「あの頃、文芸坐で」【90】「ビルマの竪琴」「拝啓天皇陛下様」こういう戦争映画は、もう作られないと言っていいだろう

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文芸坐.001

前回の「戦争と人間」三部作を観た次の日、1982年8月14日に「ビルマの竪琴」と「拝啓天皇陛下様」を観る。そして、その後に「マキノ雅弘監督と山中貞雄監督のオールナイト」を観ているのだが、その話は次回に譲る。まあ、4日連続で文芸地下に来て、締めに文芸坐でオールナイトを観るという、なんでしょうか、夏休みだったとはいえ、体力ありましたね。今では、そんな機会もないですが、無理ですね。で、四日間の費用総額2000円ですものね。

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まずは、コラム。レーガン政権の核対応について語るとともに、映画「未知への飛行」との比較の話。この時代は、まだ冷戦状態、ソ連という国名も出てきますしね、古い話ですが、日本は、今よりも幸せ度は高かった気がしますよね。政治家も今よりも頭使ってた気はしますしね。

そして、プログラム。文芸坐は「メリー・ポピンズ」と「マイ・フェア・レディ」の二本立てが追加。これは、観に行ってるので後日。文芸地下は「反戦反核映画特集」の後、「ダイヤモンドは傷つかない」と「化石の荒野」の二本立て。「化石の荒野」って長谷部安春監督作品としても、角川映画としても観る機会がなくなった作品ですね。しばたはつみの主題歌は好きですけどね。そして、その後が、大林宣彦監督三本立て。大林信者みたいなのが、この当時から増殖していきましたよね。私は、この辺りで卒業でしたけど。

オールナイトの追加は「松尾昭典、山崎徳次郎、吉田憲二」監督のまとめての登場だが、監督特集というよりも、赤木圭一郎特集である。これも、観に行っているので後日語る。

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そして、この日観た二本について。

「ビルマの竪琴」(市川崑監督)

この映画、市川崑の傑作であるが、この日観た三年後1985年に本人がリメイクしている。リメイク版はカラーだし、ビルマロケもできて市川監督的には、こちらが完全版的な意味合いもあるのだろうが、もはや、今も上映が続くのはこの最初のバージョンだ。今見られるこの映画は「総集編」という肩書きがある。今、観ることができるのは、この116分版である。ビルマロケができなかったり、カラー映画の予定が白黒になったり、市川監督の思いが通らないで、監督が結果として日活を去るということになった、色々面倒な作品なのである。だから、中井貴一主演でリメイクしたのだが、このオリジナル版の空気感は出せなかったと言っていい。

私自身、この原作は中学生の時に読んでいて、映画のスチルも見ていたし、とても見たい作品だった。この日が初見だったが、この時の評価は中の上というところ。色々と物足りなかったのだろうが、現地の老婆役の北林谷栄がすごく印象的だったのを覚えている。

「拝啓天皇陛下様」(野村芳太郎監督)

この映画はテレビで一度見ていた。天皇大好きな初年兵の話。渥美清主演であり、後の寅さんのイメージがここでできたという話もある。最後に渥美は死んでしまうのだが、好評だったようで続編も作られている。野村芳太郎監督は、晩年は、特に「砂の器」以降はサスペンス監督の雰囲気が強かったが、この当時のコメディ作品はなかなか面白い。最近は観る機会がないものも多いが、もう一度スポットライトが当たってもいいのではないかと思ったりするのですよね。そう、日本映画に映画館が笑いで溢れる作品が少ないのですよ。古臭く感じるかもしれないが、多くのヒントが隠れてる作品群であると思うのだ。戦争コメディものというのも、今後作られることが考えにくい世界ですものね。

ということで、次回は、続けて見たオールナイトのお話です。



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